消費者庁が8月24日、Webサイトやアプリの画面デザインなどで消費者を巧妙に誘導する「ダークパターン」の包括的な規制に向け、中間取りまとめ案を公表した。
特定商取引法(特商法)の改正を視野に、来年の通常国会への法案提出を目指している。
ダークパターンとは、画面表示や操作性を工夫し、消費者に意図しない契約を結ばせたり、解約をあきらめさせたりする不当な誘導手法のことだ。
この規制強化によって、暗号資産やステーブルコインを扱う暗号資産交換業者はどのような影響を受けるのだろうか。
消費者庁取引対策課の山本氏に話を聞いたところ、現時点で暗号資産業界が同庁から直接規制される可能性は低いものの、今後の法改正の進み方によっては影響が広がる余地もあることが見えてきた。
山本氏によると、今回検討されている規制は通販などの一般的なインターネット取引を主な対象としている。
仮に特商法の改正で対応する場合、金融商品取引法(金商法)や資金決済法が適用される暗号資産取引は特商法の対象外となるため、直接のルールが適用されることはない。
一方で同氏は、特商法以外の法律で規制された場合の可能性にも触れ、「仮に特商法以外の枠組みとなれば、金商法などとの関係が出てくる可能性はある。その場合は金融庁との連携やルールの整合性を議論する必要がある」と語った。
ただし、過去に金融庁への在籍経験もある同氏は「業法がしっかりと定められている分野に、消費者庁の法律を重ねて被せるような形は、通常あまり想定されない」とも指摘。現段階で金商法や資金決済法まで踏み込んだ具体的な議論が進んでいるわけではないとした。
行政の枠組みとしてはこのように切り分けられているものの、暗号資産取引における画面デザインへの問題意識は、すでに国の議論の場で投げかけられている。
そもそも暗号資産の取引には、ユーザー同士が板で注文を出し合う「取引所」と、事業者が提示する価格で直接売買する「販売所」の2種類がある。
一般的に販売所は取引所に比べてスプレッド(買値と売値の差額)が広く設定されており、事業者側の収益になりやすい反面、ユーザーにとっては実質的な取引コストが高くなる仕組みだ。
昨年10月に開催された金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」(第4回)では、オブザーバーとして参加した消費者庁の存在を踏まえ、松尾真一郎委員(ジョージタウン大学教授)からアプリの画面設計による誘導について次のような指摘がなされていた。
「今回口頭で指摘するのはダークパターンに関するものです。暗号資産交換業のビジネス拠点の中には、取引所と販売所という異なる形態があります。販売所のほうがスプレッドが大きいケースが多いと思います。その上で、販売所と取引所の両方のビジネス、両方のビジネスを交換業のアプリで、取引所のアクセスより販売所へのアクセスが容易になっている。言わば、利用者が無意識に誘導されやすくなっているケースがあると指摘されています」(金融庁議事録より)
その上で松尾委員は、今後暗号資産取引が金商法の適用対象へと移行した際には、適合性の原則や利益相反防止、不当表示の禁止といった投資家保護のルールに基づき、こうした誘導画面に対しても金商法上の厳しい規制が適用されるべきだと強調した。
こうした業界ならではの問題が消費者庁へ相談として届いているかという問いに対し、山本氏は「暗号資産は専門性が高いため、被害を受けた消費者が一般的な相談窓口である『188(消費者ホットライン)』にいきなり相談する流れにはなりにくいのではないか」との見解を示した。
|文:栃山直樹
|画像:消費者庁 中間取りまとめ(案)参考資料集から


