ビットコイン上昇余地を示す3指標──金先物、BTC.D、Coinbaseプレミアム【価格分析】

・ビットコイン(BTC)は先週約20%上昇した後、月曜日に7万7400ドル付近で取引を開始した。一方、金先物は右肩上がりのカーブを形成している。
・暗号資産(仮想通貨)市場全体で資金が循環するなか、ビットコイン・ドミナンスは低下している。一方、依然としてマイナス圏にあるCoinbase Premium Indexは、米国の需要がまだ出遅れていることを示唆している。
・8月28日に期限を迎えるBTCオプションの想定元本は60億6000万ドルに達する。6万7000ドルの最大ペインが、強気シナリオに対する大きな下押し要因となっている。

米財務省の国債買い戻し拡大を背景にBTCが20%上昇、デベースメント・トレードが継続

ビットコイン(BTC)は8月24日(月)、7万7400ドル付近で取引を開始した。前週は約20%上昇し、週間上昇率として約2年ぶりの高水準を記録した。8月21日(金)には一時7万9500ドル付近まで上昇したものの、その後は勢いが鈍化した。この上昇は、米財務省が長期国債の買い戻し規模を拡大すると発表した後に起きた。

米財務省は、残存期間10~20年および20~30年の名目利付国債を対象とする買い戻しについて、1回当たりの上限を20億ドルから少なくとも40億ドルへ引き上げると発表した。拡大後の買い戻しは9月9日に始まり、11月4日まで実施される。

今回の買い戻し拡大は、米30年国債利回りが2007年以来の高水準に達し、米国の公的債務が40兆ドルを突破するなかで行われた。これにより長期債利回りは一時低下し、ドルも下落したことで、市場では流動性を下支えする政策対応との見方が強まった。

「財務省は国債を買い戻すことはできるが、ドルを買い戻すことはできない……米国債への流動性支援を強めれば、その代償はほぼ必然的にドルが払うことになる」─ Shoki Omori(ショウキ・オオモリ)氏、Deutsche Bank AG(ドイツ銀行)の日本担当債券ストラテジスト

こうした力学は、BTCの直近の上昇を支えるデベースメントのシナリオを一段と強めている。米財務省による買い戻し拡大は、長期金利を抑えようとしているとの受け止めを通じて、米国の政策運営やFRBのインフレ抑制姿勢に対する市場の懸念を強める可能性がある。国際市場が、米政府は借入コストを抑える代償としてドル安を容認すると考えれば、ドルへの信認は低下する。

こうした信認の喪失は恒久的な「デベースメント・トレード」を引き起こし、金や暗号資産のように供給量に限りのある代替資産へ資金を向かわせることになる。

「何らかの代償を払わなければならない。利回り上昇という形になるか、ドルが譲歩する形になるかだ……こうした懸念による負担を利回りだけで完全に吸収できないのであれば、ドルが負担することになる。ドルのデベースメント・トレードが再び戻ってきている」─ Shaun Osborne(ショーン・オズボーン)氏(ScotiabankチーフFXストラテジスト)、Eric Theoret(エリック・テオレ)氏(同FXストラテジスト)

こうした見方を裏付けるように、金先物は先週大幅に上昇した。8月21日(金)には12月限が前日比2.39%上昇し、4680.60ドルで取引を終えた。

先物カーブからは、市場がドルの価値低下が長期化するシナリオを織り込んでいる可能性がうかがえる。MarketWatch(マーケットウォッチ)によると、金先物は9月限が4630.50ドル、10月限が4646.80ドル、11月限が4662.10ドルとなっている。12月限は4681.70ドルに達し、2027年初頭までの限月も上昇を続けている。

Table of recent gold contracts with prices: Last, CHG (red/green), Open, High, Low, and date/time for each contract month.
<金先物は2026年8月から2027年4月にかけて右肩上がりのカーブを形成|MarketWatch>

もっとも、右肩上がりの先物カーブだけで現物価格の上昇を予測することはできない。先物価格には資金調達コストや保有コストも反映されるためだ。

そこで重要になるのが、BTCと金の値動きの関係だ。分析で引用されたTradingView(トレーディングビュー)のデータによると、BTCと金の相関係数は8月18日の0.18から、8月24日には0.90まで上昇した。

金先物が引き続き高い価格を織り込み、この関係が維持されるのであれば、BTCは今後数カ月にわたり、デベースメントのシナリオを背景とするマクロ面の追い風を受け続ける可能性がある。

ビットコイン・ドミナンス(BTC.D)の低下、「確信度の高い取引」の始まりを示唆

暗号資産市場全体への上昇の広がりは、BTCの上昇余地がまだ残されている可能性を示す2つ目の材料だ。

BTCが上昇するなか、暗号資産市場全体の時価総額は約2兆1000億ドルから約2兆6300億ドルへ拡大した。

ビットコイン・ドミナンスは一時60%を上回ったものの、週末には59.46%まで低下した。この低下は、最初のブレイクアウトを経て、資金がビットコイン以外の暗号資産にも広がり始めていることを示唆する。

ドミナンスの低下自体がBTCにとって直接的な強気材料となるわけではない。ただ、歴史的にはこうしたアルトコインへの資金移動は、長期的な強気サイクルの初期に現れることがある。投資家のリスク選好が強まり、トレーダーが確信度の高いアルトコインへの注文を入れ始める局面だ。

BTC/USD price chart showing a sharp rally after a prolonged decline, with a green highlighted area marking the six-bar gain and volume of 68.94K
<BTCと金の相関係数は8月18日の0.18から8月24日に0.90へ上昇|TradingView>

こうした動きは、すでに複数の大型アルトコインで確認されている。

ハイパーリキッド(Hyperliquid:HYPE)は82.43ドルの過去最高値を更新した。一方、ジーキャッシュ(Zcash:ZEC)は857.00ドルまで急騰し、8年ぶりかつ現在の複数年サイクルにおける最高値を記録した。

いずれも、週末の活発な取引でBTCが7万9500ドルから7万7400ドル付近まで反落するなか、2026年8月24日にかけて記録された。

年初来最大の週間19億2000万ドル流入も、米国の需要はまだピークに達していない

米国の機関投資家需要の動向も、BTCへの需要がまだピークに達していないとの見方を裏付けている。

8月21日までの1週間で、米国のビットコインおよびイーサリアム現物ETFには合計約26億2000万ドルが流入した。ビットコイン関連商品への流入額は19億2000万ドル、イーサリアムETFは約6億9700万ドルで、両者を合わせた週間流入額としては2025年10月以来の高水準となった。

Line chart comparing Bitcoin price in USD (white line) with Coinbase Premium Index (blue line) over time from March to August; axes show dates and USD values with fluctuating premiums and price.
<Coinbase Premium Indexは原文のデータ取得時点でマイナス圏(-0.005)|CryptoQuant>

それでも、米国の需要が明確な過熱状態に達したわけではない。

CryptoQuant(クリプトクオント)のCoinbase Premium Indexは、Coinbase(コインベース)とBinance(バイナンス)のBTC価格差を示す指標だ。同指数は約-0.14から約-0.005まで大きく回復した。

ただ、原文のデータ取得時点ではわずかにマイナス圏にあり、米国の需要は改善しているものの、世界市場に対して明確なプレミアムが生じるほどには強まっていないことが示唆される。同指数がプラス圏へ転じれば、新たな需要の波が生じる余地が残されている。

BTC価格見通し:弱気派がトレンドを反転させれば6万7000ドルの最大ペインに注目

一方、オプション市場は強気シナリオに対する最大の対抗要因となっている。

8月28日に期限を迎えるBTCオプションの未決済建玉は現在7万8539BTCで、想定元本は約60億6000万ドルに達する。

内訳はコールが4万4858BTC、プットが3万3681BTCで、プット/コール比率は0.75となっている。

コール優勢の建玉構成は、表面的には強気寄りに見える。ただ、最大ペイン価格が6万7000ドルと、現在のBTC価格である約7万7200ドルを大きく下回っている点には注意が必要だ。

最大ペイン価格が必ずしも実際の価格目標になるわけではない。ただし、最大ペインが現在価格を大きく下回っていること自体は、相場への下押し圧力や大きな下方向へのエクスポージャーを直接意味するものではない。

Dark trading dashboard showing Open Interest By Strike Price bar chart (yellow calls, blue puts) with a red max-pain line and summary metrics below.
<8月28日満期のBTCオプション、最大ペイン価格は6万7000ドル|Deribit>

Deribit(デリビット)では、プットのポジションが約5万~6万5000ドルの価格帯に集中している。一方、コールの未決済建玉は6万9000~8万ドルで特に目立つ。なかでも7万~7万5000ドル付近には大規模なコールの建玉が集中しており、当面の注目水準となる可能性がある。

BTCが8万ドルを明確に上抜け、その水準を維持すれば、追加のヘッジやモメンタムを追う買いが誘発される可能性がある。特に先週は、暗号資産市場全体で30億ドルを超えるショートポジションが清算され、BTCを約6万3000ドルから7万9500ドルまで押し上げる一因となった。

反対に、今週の取引で7万4000ドル付近を維持できなければ、7万ドルに向けてより深い調整が進む可能性があり、8月28日の満期が近づくにつれて、6万7000ドルの最大ペインも視野に入ってくる。

現時点では、右肩上がりの金先物カーブ、ビットコイン・ドミナンスの低下、機関投資家からの資金流入の回復、そして依然としてマイナス圏にあるCoinbaseプレミアムという組み合わせが、デベースメント・ラリーにはなお上昇余地が残されているとの見方を支えている。

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