・7月28日から8月16日までのColdcard(コールドカード)の脆弱性悪用以降、ビットコイン(BTC)の取引所残高は約3万4400BTC増加した。金額にして約21億ドルに相当する。
・SafePal(セーフパル)は、注文追跡機能の不具合により約3万9798人の顧客情報が不正アクセスを受けたと発表した。数日前にはTrezor(トレザー)も、第三者事業者に関連する別の情報流出を公表している。
・BTCは、オプション市場のマックスペイン価格である6万3000ドルを下回って推移している。RSIも弱含んでおり、6万3500〜6万4300ドルを回復できなければ、6万ドルに向けた下落リスクが意識される。
旧Binance Labs(現YZi Labs)出資のセーフパル、トレザーに続き情報流出を公表
BTCは8月16日(日)、6万2900ドルを下回って取引された。暗号資産のセルフカストディを巡る懸念が続くなか、旧Binance Labs(現YZi Labs)の出資を受けたハードウェアウォレット事業者のセーフパルでも、新たなセキュリティ問題が明らかになった。
セーフパルによると、注文追跡用プラグインの不具合により、2025年3月2日から2026年4月11日までに商品を注文した約3万9798人の顧客の個人情報が不正アクセスを受けた。
一方、同社はウォレットの認証情報や秘密鍵は侵害されていないと強調した。
セーフパルによると、対象となった情報には氏名、メールアドレス、配送先住所、電話番号、購入内容などが含まれていた。同社は問題を修正し、追加のセキュリティ対策を導入したとしている。
バイナンス共同創業者のChangpeng Zhao(チャンポン・ジャオ)氏もこれを受け、暗号資産コミュニティに対し、フィッシング詐欺への警戒を呼びかけた。
今回の問題に先立ち、トレザーは、物流事業者で発生したデータ侵害による顧客情報の流出を公表している。影響を受けた顧客は1万3689人だった。
トレザーによると、情報流出には物流事業者ShipMonk(シップモンク)が関係していたが、自社のシステムやデバイスは侵害されていないという。
7月28日からBTCの取引所残高は約3万4400BTC増加
これらの問題に先立ち、7月下旬には、より深刻なコールドカードを巡る不正利用が明らかになっていた。
Galaxy Research(ギャラクシー・リサーチ)は、初期に確認した攻撃で1,196アドレスから1,082.65BTCが流出し、被害額は約7020万ドル(約112億円、1ドル=160円換算)に上ったと分析している。
コールドカード、トレザー、セーフパルと著名なハードウェアウォレットを巡る問題が相次ぐなか、中央集権型取引所に保管されるBTC残高も増加した。

CryptoQuant(クリプトクアント)のデータによると、BTCの取引所準備高は7月28日の270万1555BTCから、8月16日には約273万5910BTCへ増加した。
これは約3万4400BTCの増加で、1BTC=6万3000ドルで換算すると約21億ドル(約3360億円、1ドル=160円換算)に相当する。
取引所残高の増加は、取引所内で売買可能なBTCが増えていることを示す。そのため、市場にショックが生じた場合には、投げ売り(キャピチュレーション)のリスクを高める可能性がある。
また、ギャラクシー・リサーチによると、コールドカードのウォレットアドレスから盗まれたBTCの大半は8月14日(金)時点でもほぼ移動しておらず、市場参加者は今後の相場変動にも警戒している。
ギャラクシーの全社リサーチ責任者Alex Thorn(アレックス・ソーン)氏によると、少なくとも1,778BTCが盗まれ、そのうち1,531BTCは8月14日時点でも攻撃者が管理するアドレスから移動していない。
クジラの取引所流入は低水準、含み損拡大もヴァンエックの「売り手疲弊」見解を裏付け
取引所残高の増加は、売買可能なBTCが増えていることを示している。一方、クジラによる取引所への流入が低水準にとどまり、BTCの未実現損失が拡大していることは、パニック的な売りへの懸念を和らげる材料となっている。
提供されたデータによると、取引所への流入に占める大口取引の割合を示す「Bitcoin Exchange Whale Ratio(ビットコイン取引所クジラ比率)」は、7月25日に記録した0.63から0.23まで低下した。
これは、最近の取引所残高増加に対する大口保有者の関与が依然として限定的であることを示唆する。

売り加速への懸念を和らげるもう一つの指標が、Net Unrealized Loss(NUL:純未実現損失)だ。NULは、現在取得価格を下回っているBTCのUTXOが抱える未実現損失の総量を示す。
BTCが8月8日に6万5000ドルを割り込んで以降、価格が約5%下落して6万2800ドルとなった一方、NULは0.17から8月16日時点で0.18へ上昇した。

NULの上昇は、含み損を抱えるUTXO全体の未実現損失の規模が拡大していることを示す。
同時に、BTC価格が下落しているにもかかわらず、取引所残高の増加が同程度の売却加速にはまだつながっていないことも示している。
こうした状況は、BTC市場で売り手が疲弊しつつある可能性を指摘したVanEck(ヴァンエック)のMatthew Sigel(マシュー・シーゲル)氏の従来の見方を裏付ける。
シーゲル氏は7月5日、番組『The Wolf Of All Streets』のインタビューで、清算やプットとコールのプレミアムを見る限り、これまでのような明確なキャピチュレーションの兆候はまだ確認されていないとの見方を示した。
また、プットは過去の水準と比べてコールに対し依然として非常に割高で、80パーセンタイルに位置するほか、実現損失は歴史的に見て90パーセンタイルの水準にあると指摘。2年以上保有している長期保有者層も売却ペースを落としており、売り手の疲弊を示す兆候が出始めている可能性があるとした。
短期的には価格が停滞しているものの、シーゲル氏は長期的な見通しについては引き続き前向きだ。
同氏は、明確な市場シグナルを待つのではなく段階的に買い増し、10月までに予定するポジションをすべて構築しておくべきだとの考えを顧客に伝えているという。
BTC価格予測:RSIは45日ぶり低水準、オプション市場は6万3000ドル付近での持ち合いを想定
8月21日(金)に満期を迎えるDeribit(デリビット)のBTCオプションでは、建玉総量が1万8067BTCに達している。想定元本は約11億3000万ドル(約1808億円、1ドル=160円換算)となる。
市場のマックスペイン価格は6万3000ドルで、BTCの現物価格約6万2773ドルをやや上回る。
マックスペインとは、満期時にオプション保有者全体の損失が最大となる権利行使価格を指す。
今後1週間でディーラーの取引によって価格が必ずこの水準へ向かうわけではないが、特に相場が持ち合い局面にある場合、市場参加者のポジショニングを見るうえで参考となる水準だ。

建玉全体ではコールが優勢で、コールの建玉が1万2737BTCなのに対し、プットは5,330.5BTCとなっている。プット・コール・レシオは0.42だ。
一方、24時間の出来高ベースでは同レシオが0.82と高く、足元の取引は建玉全体の構成ほど強気ではないことを示している。
オプションの分布からは、明確な価格帯も浮かび上がる。
プットの建玉は6万〜6万2000ドル付近に多く集中しており、6万2000ドルが最初の重要な下値の試金石となる。6万ドルには、より大規模な下落ヘッジのポジションが集中している。
一方、上値では6万6000〜6万8000ドル付近にコールの建玉が集中し、7万ドルと7万5000ドルにも相当量のポジションが積み上がっている。

テクニカル面でもモメンタムは弱い。
BTCのChande Kroll Stopでは、下側のストップ水準が約6万3476ドル、上側が約6万4316ドルとなっている。
BTCは現在、いずれの水準も下回っており、同指標は短期的な弱気トレンドを示している。
6万3476ドルを回復すれば最初の改善シグナルとなり、6万4316ドルを継続的に上回れば、下落モメンタムが打ち消されたことを示す、より強い確認材料となる。
RSIは41.57まで低下し、平均値の48.52を下回った。7月初旬以来の低水準に近づいている。
RSIは0〜100で相場のモメンタムを測る指標で、一般的に50を下回ると上昇の勢いが弱まっていることを示す。
そのため、この下向きのクロスも、オプション市場が示すさらなる下落リスクへの警戒を補強している。
現時点では、取引所残高の増加、RSIの弱さ、BTCがChande Kroll Stopを下回っていることから、短期的には慎重な見方が優勢となっている。
強気シナリオに転じるには、まずBTCが6万3000ドルを回復し、その後Chande Kroll Stopの6万3476ドルを上抜く必要がある。
さらに6万4316ドルを突破すれば、回復シナリオの確度が高まり、コールのポジションが大幅に厚くなる6万5000〜6万6000ドルが次の上値として意識される。
ただし、クジラによる取引所への流入が低水準にとどまっていることや、含み損の実現が限定的であることから、最近の取引所供給量の増加が全面的なキャピチュレーション局面に発展したとはまだ言えない。
6万3000ドルを回復できなければ、BTCはまず6万2000ドルまで下押しされる可能性があり、その後はプットの建玉がより集中する6万ドルが意識される。
6万ドルを明確に割り込んだ場合、現在の持ち合いシナリオは崩れ、さらに深い調整局面へ移行する可能性がある。


