ColdCard攻撃前後、取引所BTC残高が約10億ドル増──ドミナンス、60日で最大低下【価格分析】

・暗号資産ウォレット「コールドカード」を狙った攻撃が3回にわたって発生し、約1367ビットコイン(BTC、8860万ドル相当)が盗まれた。同時期に、BTCは8月1日に約6万2200~6万2500ドルまで下落し、20日ぶりの安値をつけた。
・CryptoQuantのオンチェーンデータによると、中央集権型取引所のBTC残高は7月28日から8月2日にかけて1万4807BTC増加した。
・イーサリアム(ETH)がBTCを相対的に上回る中、ビットコイン・ドミナンスは日次で過去60日間最大の低下を記録した。予測市場では、BTCが今月中に6万7500ドルを回復する確率よりも、6万ドルを下回る確率の方が高いとみられている。

ColdCard脆弱性の悪用、被害額は8860万ドルに拡大──BTCは20日ぶりの安値

Coinkiteが提供するハードウェアウォレット「ColdCard」の脆弱性悪用が注目された週末、BTCは8月1日に約6万2200~6万2500ドルまで下落し、20日ぶりの安値をつけた。その後、2日(日)には6万3700ドルまで反発した。

Galaxy Researchの報告によると、調査関係者は、ウォレットから資金が流出した攻撃を3つの異なる波に分類している。4585件のアドレスから推定1367.05BTCが盗まれ、確認された被害額は当時の価格で約8860万ドルに達した。

ただし、研究者らは、3つの攻撃波すべてが同一の攻撃者によるものだと断定すべきではないと注意を促した。

最初の大規模な資金流出は7月30日に始まった。Galaxyによると、第1波と第2波の攻撃には複数の共通点が確認された。少数の集約用ウォレットへ資金を集める構造が同一だったほか、送金先として共通のP2WPKHアドレスが使われ、類似する派生パスを利用した攻撃が27時間の間隔を置いて発生していた。

一方、手数料の設定方法や、手数料を上乗せして未承認取引を置き換える「Replace-by-Fee(RBF)」の挙動には違いがあり、調査関係者は両者を同一の攻撃者によるものだと断定できていない。

第3波では、これまでとはまったく異なる手口が確認された。攻撃者は被害者ごとに異なる送金先を使用し、P2WSHアドレスで資産を保管していた。また、1回のスイープ取引で平均6.37件の被害ウォレットの資金をまとめて移動させ、デフォルトの派生パスだけを探索していた。

Galaxyは、こうした変化について、最初の攻撃者がブロックチェーン上のアドレスを関連付けるクラスタリング分析を回避するため、ツールを改良した可能性があると指摘した。一方で、まったく別の攻撃者が、同じ脆弱性のある鍵空間を独自に悪用した可能性もあるという。

「ブロックチェーン上では両者を区別できず、われわれにも区別できない」──Galaxy ResearchのX投稿(8月1日)

ブロックチェーン分析企業Chainalysisによると、被害額が最大だった2つのウォレットの損失額は合計400万ドルに達した。個別では、約180万ドルを失ったウォレットもあった。

この状況は、攻撃者が脆弱性の影響を受けるウォレット群を調査した上で、多額の資産を保有するアドレスを意図的に狙った可能性を示している。

直近数週間では、ETHがBTCを継続的に上回るパフォーマンスを示していた。7月の上昇率は、BTCが7.6%だったのに対し、ETHは19%に達した。

同時期には、BTCの暗号資産市場に占める割合も低下した。

BTCは7月31日(金)に約3%下落し、時価総額は約370億ドル減少した。同時に、ビットコイン・ドミナンス(BTC.D)は0.61パーセントポイント低下し、1日としては過去60日間で最大の低下幅を記録した。

Candlestick chart of Bitcoin dominance (BTC.D) over time with green/red candles and volume bars below on a TradingView chart.
<ビットコイン・ドミナンス(BTC.D)は7月31日に0.61パーセントポイント低下し、1日としては過去60日間で最大の低下を記録した|TradingView>

ビットコイン・ドミナンスとは、暗号資産市場全体の時価総額に占めるBTCの割合を示す指標である。ドミナンスの低下は、暗号資産市場全体に対してBTCの時価総額が相対的に縮小していることを示し、一般には資金がBTC以外の暗号資産へ移っている可能性を示唆する。

BTC.Dの低下からは、売り圧力がアルトコイン市場全体へ広がらず、主にBTCへ集中していたことが読み取れる。過去の注目度の高いセキュリティ事件では、売り圧力がアルトコイン市場にも波及するケースがしばしば見られた。

3日(月)の中央ヨーロッパ夏時間(CEST)午前0時30分までに、BTCは前日比1.4%上昇して6万3000ドルを回復し、ETHは24時間で約3%上昇して1900ドルに迫った。CoinMarketCapのデータによる。

7月28日から8月2日、取引所のBTC残高が約10億ドル相当増加

バイナンス創業者のチャンポン・ジャオ氏(CZ)も週末、コールドカードへの攻撃をめぐる議論に加わった。同氏は、実績のあるハードウェアウォレットであっても、ソフトウェア上の不具合にさらされる可能性があると警告した。

オンチェーンデータでは、ColdCard脆弱性の悪用が確認された時期とほぼ重なる形で、中央集権型取引所のBTC残高が増加した。

「ハードウェアウォレットにもバグはあり得る。長い歴史を持つ古いウォレットであっても同じだ。資金を複数のウォレットに分けるのも一案かもしれない。100%安全なものはない。常に情報を確認し、SAFUでいよう!」─CZ氏、8月1日

CZ氏の発言を受け、単一のハードウェアウォレット事業者だけに依存するのではなく、資産の管理方法を分散すべきだとの議論が広がった。

記事執筆時点のCryptoQuantの取引所準備金データによると、同社が追跡する中央集権型取引所のBTC残高は、7月28日の270万1555BTCから、8月2日には271万6362BTCへ増加した。

Informational chart showing Bitcoin: Exchange Reserve (blue) and Price USD (white) over July 8–Aug 2, 2026; tooltip on Aug 2 shows Price ~,336 and Reserve ~2,716,363 BTC; left axis ~2.705–2.718M, right axis ~–K.
<取引所が保有するBTC残高は、7月28日から8月2日にかけて1万4807BTC増加した|CryptoQuant、2026年8月3日>

これは、7月28日から8月2日にかけて、取引所のBTC残高が差し引き1万4807BTC増加したことを意味する。現在の市場価格では約10億ドルに相当する。

取引所の準備金が増加する場合、投資家が取引に備えて資産を移動させているか、一時的な保管先として取引所を利用している可能性がある。

今回の増加時期は、コールドカードを狙った複数回の攻撃とほぼ一致している。増加の理由としては、一時保管や取引、売却に備えた移動などが考えられる。

一方、ウォレットの脆弱性をめぐる不透明感が強まる中、一部の投資家が売却に備えてBTCを取引所へ移動させた可能性もある。

今後の見通し:予測市場、6万7500ドル回復より6万ドル割れを高く織り込む──米雇用統計に注目

BTCは2日(日)までに6万4000ドルを回復したものの、デリバティブ市場や予測市場では、投資家が8月中のさらなる下落に備えたヘッジを続けていることが示されている。

記事執筆時点のPolymarketの契約価格によると、市場参加者は、BTCが8月中に6万ドルを下回る確率を約56%と見積もっている。

これに対し、6万7500ドルを回復する確率は約50%、7万ドルに到達する確率は約27%にとどまっている。

こうした確率は、週末にBTCが反発した後も、市場参加者が防御的なポジションを維持していることを示している。

Dashboard showing Bitcoin price indicators with multiple rows of percentage changes and Buy options for different prices and volumes and a countdown timer in the top-right.
<予測市場では、米雇用統計の発表を控え、6万7500ドルへの回復よりも6万ドル割れを見込む動きが優勢となっている|Polymarket、2026年8月3日>

ColdCardへの攻撃によって自己保管への信頼が一時的に揺らぐ中、BTCは6万4000ドル付近での安定を試みている。市場参加者は、セキュリティ上の懸念とマクロ経済の不透明感が交錯する市場に直面している。

Bar chart showing target rate probabilities: 26.4% for 350–375 bps and 73.6% for 375–400 bps; current target 350–375.
<CME FedWatchでは、9月会合後に政策金利が3.75~4.00%となる確率が73.6%と示されている|CME Group、2026年8月3日>

市場では現在、8月7日(金)に発表される米国の非農業部門雇用者数(NFP)と失業率に注目が集まっている。

Trading Economicsが調査したアナリストの予想では、7月の非農業部門雇用者数は前月比9万1000人増となり、6月の5万7000人増を上回る見通しだ。

CMEのFedWatchツールでは、記事執筆時点で、9月のFOMC会合後に政策金利の誘導目標が3.75~4.00%となる確率が73.6%、3.50~3.75%に据え置かれる確率が26.4%と示されている。労働市場が予想を上回る強さを示した場合、利上げ観測が一段と強まり、暗号資産を含むリスク資産に下押し圧力がかかる可能性がある。

投資家は、企業決算が相次ぐ今週の動向にも注目する。半導体メーカーのアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は4日(火)に第2四半期決算を発表する予定だ。同日には、イーロン・マスク氏率いるSpaceXの第2四半期決算・事業アップデートにも注目が集まっている。

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