●8月は短期的な弱さと中長期的な底堅さが併存しており、上昇・下落の両方に備える設計が重要となる。
●BTCを中核候補としつつ、ETHの価格変動とステーブルコインの固有リスクを踏まえ、待機資金を確保する考え方がある。
●単一の指標や市場予測に依存せず、オンチェーンデータ、ETF資金フロー、現物需要、金利環境を総合的に確認する必要がある。
7月の暗号資産市場は、月初の弱気局面から持ち直し、下旬にかけて上昇の勢いを強めた。しかし、月末から8月初めにかけて市場のモメンタムは再び低下している。
ETFへの資金流入が続いてもビットコイン価格が十分に反応しない場面が見られ、現物需要の強さには慎重な評価が必要だ。米国株が上昇する一方でビットコインが弱含むなど、リスク資産全体の動きから乖離する場面も確認された。
では、不透明感が残る8月の暗号資産ポートフォリオを、どのように設計すべきだろうか。
8月は「強気か弱気か」ではなく、両方に備える
現在の市場には、短期的な弱さと中長期的な底堅さが同時に存在している。
短期的には、ETFへの資金流入と価格上昇が結び付いていないこと、現物取引の勢いが十分に回復していないこと、米国の長期金利や金融政策を巡る不透明感などが警戒材料となる。規制整備への期待は残るものの、法案の審議状況も市場の変動要因になり得る。
一方、長期保有者によるビットコインの蓄積や、取引所が保有するBTC残高の減少など、中長期的な供給構造は大きく崩れていない。先物市場の未決済建玉が減少していることも、過度なレバレッジが整理され、市場の過熱感が後退していると捉えることができる。
このような局面で重要なのは、相場の方向を一つに決めつけることではない。上昇した場合の機会を残しながら、下落した場合にも対応できる構成を考える必要がある。
BTCを中核に置く理由
8月のポートフォリオを考えるうえで、BTCは引き続き中核資産として検討しやすい。
短期的な価格の弱さは見られるものの、長期保有者の動向や取引所残高の減少を踏まえると、供給面の基盤まで大きく悪化したとは判断しにくい。また、ETFを通じた機関投資家の資金動向を把握しやすい点もBTCの特徴である。
ただし、中長期的な供給構造が維持されていることと、短期的に価格が下落しないことは別の問題だ。BTCを中核に置く場合でも、特定の方向に過度に依存しない配分設計が求められる。
ETHは将来性と価格変動の両方を見る
ETHには、ステーキングやオンチェーン活動などを背景とした構造的な強みがある。一方、現在の市場では、BTCを継続的に上回る相対的な強さが明確になっているとは言いにくい。
市場全体が下落する局面では、ETHの値動きがBTCより大きくなる可能性もある。そのため、将来性を評価しながらも、短期的な価格変動を考慮して組入比率を考える必要がある。
ETHを保有するか、保有しないかという二者択一ではなく、現在の市場環境と自身のリスク許容度を踏まえ、「どの程度まで組み入れるか」を考えることが重要になる。
USDCは防御だけでなく、次の一手のための待機資金
不透明な市場環境では、USDCなどのステーブルコインを一定割合保有する考え方もある。
これは単に価格変動を抑えるためだけではない。市場環境が改善した際に、BTCやETHへ段階的に再配分するための待機資金として活用できるからだ。
暗号資産だけでポートフォリオを構成すると、下落時に新たな買い付けを行う余力が不足しやすい。あらかじめ待機資金を確保しておくことで、相場の変化に対応する選択肢を残すことができる。
ただし、ステーブルコインにも発行体、準備資産、流動性、規制、価格連動の維持などに関する固有のリスクがある。法定通貨そのものと同じではない点には注意が必要だ。
注視すべきオンチェーン指標

8月に注視したいのは、取引所へのBTC純流入量と取引所準備金、長期保有者の保有残高、クジラによる送金動向、実現損益、SOPR、MVRV、ステーブルコインの供給量および取引所流入である。取引所への大口入金や実現利益の増加は売却圧力の高まりを示す可能性がある一方、取引所残高の減少と長期保有者による蓄積の継続は供給面の下支えとなり得る。

また、ステーブルコインの供給拡大や取引所への流入増加は、新たな買い付け余力の回復を判断する材料になる。ただし、単一の指標だけで方向を決めず、価格、出来高、ETF資金フロー、デリバティブ市場の動向と併せて確認する必要がある。
ポートフォリオ設計に正解はない
適切な資産配分は、投資期間、許容できる損失、保有資産、収入、年齢、投資目的などによって異なる。したがって、すべての人に共通する正解は存在しない。
上昇への期待が強い人と、追加下落を警戒する人では、リスク資産と待機資金の適切な比率も異なる。重要なのは、市場予測にすべてを委ねるのではなく、想定と異なる方向へ動いた場合にも対応できる状態をつくることだ。
また、一度決めた配分を固定するのではなく、ETF資金フロー、現物需要、オンチェーンデータ、先物市場のレバレッジ、米国金利や金融政策などを確認しながら、定期的に設計を見直す必要がある。
8月は、積極的に上昇を追うことだけを考えるのではなく、市場への参加を継続しながら、次の機会に備える視点が重要になる。相場を正確に当てることではなく、複数のシナリオに対応できる状態をつくることが、不透明な市場におけるポートフォリオ設計の役割ではないだろうか。
※本記事は、市場環境を踏まえたポートフォリオ設計の考え方を解説するものであり、特定の暗号資産の購入・売却を推奨する投資アドバイスではありません。将来の価格や運用成果を保証するものでもありません。暗号資産には大きな価格変動を含むさまざまなリスクがあります。最終的な投資判断は、ご自身の状況と責任に基づいて行ってください。
ショート動画
8月の暗号資産、どう設計する?上昇と下落の両方に備える
https://youtube.com/shorts/sMD4KS47-wI


