OpenAI(オープンAI)のCEOを務めるSam Altman(サム・アルトマン)氏らが共同創設したプロジェクト「World(ワールド)」向けの技術を開発するTools for Humanity(ツールズ・フォー・ヒューマニティ)は7月28日、都内で日本事業の新代表就任に関するメディア向けラウンドテーブルを開き、髙橋正巳氏の日本ゼネラルマネージャー就任を発表した。
Worldは日本での展開開始から3年を迎えた。新たに日本事業を率いる髙橋氏は、Uber Japan(ウーバー・ジャパン)の執行役員社長やWeWork Japan(ウィーワーク・ジャパン)のゼネラルマネージャー、Scrum Ventures(スクラムベンチャーズ)のCOOなどを歴任。
就任の理由として、ベンチャーキャピタルでAI関連のスタートアップを間近に見てきたなかで、画像や映像、音声の生成が容易になり、インターネット上の信頼が揺らぎ始めていると感じたと説明。AIの進化が想像以上の速さで進んでいるとの危機感から、Worldへの参画について「これをやるしかないと思った」と振り返った。
Worldは、AIの普及によってオンライン上で人間とAIの区別が難しくなるなか、プライバシーを守りながら、実在する人間であることを証明するデジタルID「World ID」の普及を進めている。
World IDは、専用デバイス「Orb(オーブ)」での認証などを通じて、利用者がAIやボットではない実在する一人の人間であることを証明する仕組みだ。氏名などの個人情報をサービス側へ開示せずに利用できるよう設計されている。
会見では、AIエージェントが利用者に代わって取引する時代に、人間の承認をどの段階で求めるべきかについて見解を示した。また、ステーブルコインが暗号資産を幅広い利用者にとって身近なものにする可能性についても語った。
AIエージェントの代理購入、最終判断は人に

髙橋氏は、AIエージェントが利用者に代わって商品を購入する機会が増える一方、そのエージェントが利用者本人から権限を与えられているのか、どの段階で人間が確認するのかが課題になると語った。
「本当に大きな買い物をするときには、どこかの段階で人間が承認するプロセスがあった方がいい」と述べ、AIだけで取引を完結させるのではなく、高額な購入など重要な場面では、人間の意思を確認する仕組みが必要になるとの見方を示した。
髙橋氏は、AIエージェントが商品検索から購入、決済までを代行する「エージェントコマース」が今後一般化するとみている。そのうえで、エージェントが人間に代わって行動できる範囲や、人間による確認の在り方を、パートナー企業とともに仕組みとして整備していきたいと述べた。
エージェントコマースで高まるステーブルコインの重要性

NADA NEWSが、エージェントコマースにおけるステーブルコインの可能性を尋ねると、髙橋氏はまず暗号資産(仮想通貨)について、世界的に普及が進んできたものの、利用者はなお一部にとどまるとの認識を示した。
そのうえで、法定通貨などと価値が連動するステーブルコインが普及することで、ブロックチェーンを基盤とする決済や取引を一般利用者がより馴染みのある形で利用できる時代が来るとの見方を示した。
また、日本でも幅広い層がステーブルコインを利用するようになるとの見方を示し、関連分野に取り組む企業と対話を進めたいと述べた。

なお、Worldをめぐっては、World Protocol(ワールド・プロトコル)を管理する独立した非営利団体World Foundation(ワールド財団)が7月24日、初回クローズで5250万ドル(約86億円)を調達したと発表した。
資金調達はPantera Capital(パンテラ・キャピタル)が主導し、Bain Capital Crypto(ベイン・キャピタル・クリプト)、Eightco Holdings(エイトコ・ホールディングス)、Selini Capital(セリーニ・キャピタル)、Susquehanna Crypto(サスケハナ・クリプト)などが参加した。
調達資金は、企業や一般利用者、AIエージェントを対象としたWorld IDの世界展開に充てるとしている。
|取材・文・写真:平木 昌宏


