夏相場をどう読む?③:オンチェーン分析で読み解くレバレッジ市場──先物市場から相場転換のサインを探る【エックスウィン】

● 現物市場だけでなく、現在のビットコイン相場では先物市場(デリバティブ市場)の動向が価格形成に大きな影響を与えている。
● 今回は「Funding Rate」「Open Interest」「Estimated Leverage Ratio」「Liquidation」の4つの指標を用いて、市場参加者のレバレッジ状況や相場転換のサインを読み解く。
● エックスウィンでは、現在の先物市場は2025年の過熱局面と比較するとレバレッジは縮小しているものの、依然として短期的な価格変動には清算(Liquidation)が大きく影響する市場構造が続いていると考えている。

これまで2回にわたり、市場サイクルや資金フローを分析するオンチェーン指標をご紹介してきました。しかし、現在のビットコイン市場を理解するうえで、もう一つ欠かせない市場があります。

それが「先物市場(デリバティブ市場)」です。

近年は現物取引だけでなく、レバレッジを利用した先物取引が急速に拡大し、短期的な価格変動の多くは先物市場で発生しています。価格が急騰・急落する背景には、レバレッジポジションの偏りや強制ロスカットが大きく関係しているケースも少なくありません。

今回は、先物市場を分析する4つの代表的な指標をご紹介します。

① Funding Rate:市場参加者は上昇と下落、どちらを予想しているのか

Informational chart: Bitcoin funding rates (green) and price (black) across all exchanges from 2024 to 2026.

Funding Rateは、パーペチュアル先物市場でロングとショートのどちらが優勢なのかを示す指標です。

Funding Rateがプラスであれば、ロングポジションが多く、ロング側がショート側へ資金を支払っています。反対にマイナスであれば、ショートポジションが優勢であり、市場参加者が下落を予想していることになります。

この指標は、市場参加者の「期待」を映し出す温度計とも言えます。

チャートを見ると、2025年の強気相場ではFunding Rateが高止まりする場面が多く見られました。現在はゼロ付近で推移しており、市場は強気にも弱気にも大きく傾いていません。

投資家は方向感を探る慎重な姿勢を続けていることが分かります。

② Open Interest市場にはどれだけのレバレッジが積み上がっているのか

Line chart of Bitcoin: price in USD (black) and open interest (purple) over time from 2024 to 2026, with a legend indicating each line.

Open Interest(建玉)は、未決済の先物ポジション総額を表します。

これは市場全体にどれだけのレバレッジが積み上がっているのかを示す代表的な指標です。

Open Interestが増加するということは、新たな資金が先物市場へ流入し、ポジションが積み上がっている状態です。

一方で急減する場合は、利益確定やロスカットによってポジションが解消されていることを意味します。

チャートでは、2025年後半に建玉が大きく積み上がった後、その後は大きく減少しています。現在も一定の建玉は残っていますが、2025年ほど過熱した状態ではありません。

③ Estimated Leverage Ratio市場はどれほど危険なレバレッジ状態なのか

Line chart of Bitcoin: price in USD (black) and estimated leverage ratio (purple) from 2024 to 2026 across all exchanges, showing fluctuations and correlations over time.

Estimated Leverage Ratioは、取引所に預けられているビットコインに対し、どれだけ先物ポジションが積み上がっているかを示す指標です。

Open Interestが「建玉の総量」を見る指標だとすれば、この指標は「市場がどれほどレバレッジ依存になっているか」を測るものです。
数値が高いほど、少ない現物を担保に大きなポジションが構築されていることを意味します。

このような局面では、小さな価格変動でもロスカットが連鎖しやすく、相場が急変するリスクが高まります。

現在のEstimated Leverage Ratioは高めの水準を維持しており、市場には依然としてレバレッジ取引が多く存在していることが分かります。そのため、短期的には急激な値動きが発生する可能性には引き続き注意が必要です。

④ Liquidationなぜ価格は一気に動くのか

Line chart of Bitcoin price with green bars showing long liquidations across all exchanges, covering 2024–2026.

最後に紹介するのがLiquidation(強制ロスカット)です。

レバレッジ取引では、一定以上の損失が発生すると、ポジションは自動的に決済されます。下落時にはロングポジションの清算が発生し、強制売却によってさらに価格が下落することがあります。

一方で上昇時にはショートポジションの清算が起こり、強制買い戻しによって価格が急騰することがあります。これが「ショートスクイーズ」と呼ばれる現象です。

チャートを見ると、価格が大きく動いた局面では、ロング・ショートともに清算が急増していることが分かります。

つまり、市場が急変する局面では、新しい資金だけではなく、強制ロスカットが価格変動をさらに加速させているのです。

まとめ

今回紹介した4つの指標は、価格そのものではなく、「価格がなぜ動くのか」という背景を分析するための指標です。

Funding Rateは市場参加者が強気なのか弱気なのかという投資家心理を映し出し、Open Interestは市場にどれだけのポジションが積み上がっているのかを示します。Estimated Leverage Ratioは、そのポジションがどの程度レバレッジに依存しているのかを分析し、Liquidationは、そのレバレッジが崩れたときに価格がどのように動くのかを教えてくれます。

重要なのは、これら4つの指標を単独で見るのではなく、組み合わせて市場全体を判断することです。

例えば、

・Funding Rateが高く、多くの投資家が強気になっている。
・Open Interestも増加し、市場全体でポジションが積み上がっている。
・Estimated Leverage Ratioも高く、市場全体のレバレッジ依存度が上昇している。

このような局面では、一見すると上昇相場が続いているように見えても、わずかな下落をきっかけにロングポジションの清算が連鎖し、大きな急落へ発展する可能性があります。

一方で、

・Funding Rateがマイナス圏まで低下し、市場全体が弱気になっている。
・Open Interestが高水準のままショートポジションが積み上がっている。
・価格がわずかに反発するとショートポジションの清算が始まり、ショートスクイーズによって想定以上の急騰が発生することもあります。

つまり、価格だけでは見えない「市場内部のエネルギー」を可視化できるのが、この4つの指標なのです。

現在の4つの指標を総合すると、市場参加者のセンチメントは中立に近づき、Open Interestも2025年のピーク時と比較すると縮小しています。一方でEstimated Leverage Ratioは依然として比較的高い水準を維持しており、レバレッジ市場の存在感は依然として大きい状況です。

そのため、市場全体としては2025年のような過熱相場ではないものの、重要な経済指標やETF資金フロー、政策発表などをきっかけに、一方向へ価格が動けばロスカットが連鎖し、短期間で大きな値動きになる可能性は十分に考えられます。

オンチェーン分析とは、単に価格を予想するためのツールではありません。市場内部で何が起きているのかを理解し、その背景を読み解くための分析手法なのです。

シリーズ総括

今回のシリーズでは、CryptoQuantを活用したオンチェーン分析の代表的な12の指標をご紹介しました。

第1回では、「MVRV Ratio」「Realized Price」「NUPL」「Puell Multiple」を用いて、市場全体が現在どのサイクルに位置しているのかを分析しました。価格が割高なのか割安なのか、投資家全体がどれだけ利益や損失を抱えているのか、さらにはマイナーの売却圧力まで含めて、市場の大きな流れを把握することができます。

第2回では、「SOPR」「Exchange Netflow」「Exchange Reserve」「Exchange Whale Ratio」を通じて、実際に市場参加者がどのような行動を取っているのかを分析しました。利益確定が進んでいるのか、売却準備は増えているのか、取引所の供給量はどう変化しているのか、そして価格形成に大きな影響を与えるクジラはどのように動いているのかを確認しました。

そして今回の第3回では、「Funding Rate」「Open Interest」「Estimated Leverage Ratio」「Liquidation」を用いて、先物市場のレバレッジ構造を分析しました。近年のビットコイン市場では、現物市場だけではなく先物市場が価格形成に与える影響が非常に大きくなっており、急騰や急落の背景にはレバレッジ取引やロスカットの連鎖が存在しています。

これら12の指標は、それぞれ異なる視点から市場を分析しています。

・市場全体は過熱しているのか、それとも割安なのか。
・投資家は利益確定を進めているのか、それとも長期保有を続けているのか。
・クジラは売却しているのか、それとも買い集めているのか。
・市場にはどれだけのレバレッジが積み上がっているのか。
・相場が動いたとき、ロスカットがどれほど価格変動を拡大させる可能性があるのか。

こうした情報を一つひとつ組み合わせることで、「なぜ価格が動いているのか」「これから何が起こる可能性があるのか」を、価格チャートだけでは分からないレベルまで深く分析できるようになります。

暗号資産市場は、ETFの普及や機関投資家の参入によって急速に成熟しつつあります。その中で重要になるのは、価格だけを追いかける投資ではなく、市場構造や資金の流れを理解することです。

エックスウィンでは、今回ご紹介したオンチェーン分析に加え、ETF資金フロー、ステーブルコインの供給量、マクロ経済、金融政策、さらには各国の規制動向まで組み合わせ、多角的な視点から市場を分析しています。

これからの暗号資産市場では、「価格を見る投資家」よりも、「市場構造を理解する投資家」が優位に立つ時代になっていくでしょう。

オンチェーン分析は、その変化を読み解くための最も強力なツールの一つであり、今後ますます重要性を増していくと、エックスウィンでは考えています。

ショート動画

【オンチェーン分析③】相場転換のサインを読む!レバレッジ市場4つの重要指標
https://youtube.com/shorts/Zvtq-fhivXU

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