「10年前、機関投資家に出資を頼むと、断られる理由はいくらでもあった。だが今は違う」。
暗号資産XRP(エックス・アール・ピー)の保有と利回り運用を手掛けるトレジャリー企業、米エバーノース (Evernorth)の最高経営責任者(CEO)、アシーシュ・ビルラ(Asheesh Birla)氏は7月14日、NADA NEWSの単独取材にこう語った。同氏によれば、暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンを取り巻く環境に対する機関投資家の姿勢は大きく変化してきたという。
6月に日本でも流通が始まったドル建てステーブルコイン「RLUSD」の意義や米ナスダック上場の進捗、日本市場への見方などを都内で聞いた。
RLUSD日本流通が意味するもの
ビルラ氏は2013年、リップル(Ripple)に初期メンバーとして参画。その後10年間にわたり同社の執行役員や取締役を務めた。現在はエバーノースで、「トークン化の未来を加速させ、人々の保有資産を収益を生む(productive)状態にすること」を目指している。
その運用基盤にXRPレジャー(XRPL)を選んだ理由については、「ビットコインは金の代替にとどまる。イーサリアムは何でもできる分、一つのことに特化していない」とする一方、XRPLは決済やトークン化など金融用途に特化して設計されていると説明。「金融アプリケーションに最も適したブロックチェーンだ」と述べた。
国内では6月24日、SBI VCトレードを通じてドル建てステーブルコイン「RLUSD」の流通が始まっている。ビルラ氏は、XRPLにはRLUSDなどを取引できるDEX(分散型取引所)が標準機能として備わっていることに触れ、「RLUSDによって日本のユーザーはオンチェーン金融のエコシステムに参加しやすくなる」と述べた。
背景には外国為替や金、株式などの決済で米ドルが基軸通貨として利用されている現状がある。ビルラ氏は、オンチェーン金融でも米ドル建てステーブルコインが決済の基盤になるとみており、RLUSDの国内流通が日本からエコシステムへアクセスする環境を整えるとの考えを示した。

日本市場については「2017年ごろに日本を訪れ、その年のリップルとSBIの協業にも関わった」と振り返り、「日本市場に参入するには強力なパートナーが必要で、SBIがその役割を果たしてくれた」と評価。今後の日本展開については、まだロードマップはないとしたうえで、SBIなどパートナーとの連携を軸に検討していく考えを示した。
ナスダック上場は最終局面
エバーノースは、特別買収目的会社(SPAC)のArmada Acquisition Corp. IIとの合併を通じ、ティッカー「XRPN」でナスダック上場を目指している。
当初は4〜6月ごろの完了が見込まれていたが、スケジュールは後ろ倒しとなっている。
この点についてビルラ氏は「申請の最中に、米政府機関の閉鎖(ガバメントシャットダウン)が起きた」と説明。プロセス自体は着実に最終局面に近づいているとし、「実は前日(7月13日)にも、米証券取引委員会(SEC)へS-4(合併に伴う証券登録届出書)の修正版を提出したばかりだ」と明かし、進展を強調した。最終承認の獲得に向けて、引き続き手続きを進めていくという。
取材中、ビルラ氏は業界を取り巻く機関投資家の変化についても言及した。今は「多くの金融機関がブロックチェーン専門チームを立ち上げている」と話し、先週もニューヨークで複数の大手機関投資家と面談したと紹介。現在の資金流入は「業界の成熟」と「エバーノースというチームへの信頼」の両方を示す証だと語った。
一方で同社にとって、個人投資家(リテール)も重要な対象だという。
同社がナスダックへ上場すれば、投資家は暗号資産取引所でXRPを購入・保管したり、自ら利回り運用を行ったりすることなく、証券口座から同社株を購入するだけで、同社のデジタル資産運用戦略に投資できるようになると説明した。
リップル社とは補完関係
リップル社との関係については「両社ともXRPエコシステムに新しい金融アプリケーションを生み出すというゴールを共有している」と説明。そのうえで、「リップルが新しいトークン化資産をXRPLにもたらし、エバーノースがそれらの資産の利回り創出を担う」と役割を整理。受動的に資産を保有する会社ではなく、アクティブに運用することが同社の特徴だとした。
この考え方は4月、同社COOの中村メグ氏がNADA NEWSの取材に答えた方針と一致する。ビルラ氏も、XRPを保有するだけでなく、レンディングや流動性提供を通じて利回りを生み出す「アクティブな運用」が同社の特徴だと強調した。
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インタビューの最後、ビルラ氏はブロックチェーンの将来像についても展望を語った。現在、ブロックチェーン上でトークン化されている現実資産(RWA)は約340億ドルにとどまるが、世界全体の実資産は約500兆ドル規模に上るとし、全体を見ればごく一部にすぎないという。
「今後5〜10年で、金融市場の大部分がブロックチェーン上で取引されるようになる」と予測し、「米ドルだけでなく、株式や金(ゴールド)のオンチェーン化も加速するだろう」と述べた。

実際、XRPL上でトークン化されたRWAは、この12カ月で24倍となる36億ドル相当に急増しているという。「まだ始まったばかりだが、非常に速いペースで成長している」とビルラ氏は説明した。
さらに、AIとブロックチェーンの融合によって、一人ひとりに最適化された資産運用が自動化され、保有資産をより効率的に「働かせる」時代が加速していくとの展望を示した。
|取材・文・撮影:橋本祐樹
|トップ写真:米エバーノース(Evernorth)CEOのアシーシュ・ビルラ氏


