今週が勝負の週となるCLARITY法案、アメリカ暗号資産市場の未来は決まるのか【サンフランシスコ レポート】

エックスウィン アメリカマーケットリサーチアナリストのデリア・ロホです。

サンフランシスコから、現在アメリカの暗号資産業界で最も重要なテーマとなっているCLARITY法案についてお伝えします。私はここ数週間、ワシントンで進む議論を追い続けていますが、多くの関係者が共通して語る言葉があります。

それは、「もし今夏を逃せば、次の本格的な機会はかなり先になるかもしれない」ということです。

実際、市場では「8月までに方向性が固まらなければ、CLARITY法案は2030年頃まで本格的な成立機会を失う可能性がある」ということを言う人もいます。もちろん法律上そう決まっているわけではありません。しかし政治の現実を考えると、決して大げさな話ではありません。

2026年後半からは中間選挙モードが強まり、2028年には大統領選挙が控えています。選挙が近づくほど、議会は大型法案よりも政治的な争点へ時間を割くようになります。だからこそ、今の数週間は非常に重要なのです。

CLARITY法案とは何か

CLARITY法案は、アメリカにおける包括的な暗号資産市場構造法案です。これまで曖昧だったSEC(証券取引委員会)とCFTC(商品先物取引委員会)の管轄を整理し、暗号資産市場のルールを明文化することを目的としています。

法案では、

・デジタル商品の定義
・トークンの分類方法
・取引所やブローカーの登録制度
・開示義務
・顧客資産保護
・AML(マネーロンダリング対策)
・破産時の顧客資産保護

まで含めて包括的に整理されています。

私はこの法案を「暗号資産版の金融インフラ憲法」と表現しています。なぜなら、単にビットコインやイーサリアムを規制する話ではなく、今後10年以上にわたるアメリカのデジタル金融の土台を作ろうとしているからです。

トークンをどう分類するのか

今回の法案で特に重要なのが、「Ancillary Asset(補助的資産)」という新しい概念です。

これはネットワーク上で利用されるトークンでありながら、発行初期には開発チームや運営主体の努力に価値が依存している資産を指します。

従来であれば、そのようなトークンはSECによって証券と判断される可能性がありました。

しかしCLARITY法案では、

「当初は起業家の努力に依存していたとしても、十分に分散化されたネットワークへ成長すれば扱いを変えることができる」

という考え方が導入されています。

これは非常に重要な変化です。なぜなら、アメリカが初めて「ネットワークの成熟度」や「分散化の度合い」を法制度の中で評価しようとしているからです。

DeFiに対する考え方も大きく変わった

私が最も注目しているのは、DeFiに対する扱いです。

下院版では既に、

・ノード運営者
・バリデーター
・オラクル提供者
・ウォレット開発者
・プロトコル開発者
・流動性提供者

などについて、金融仲介業者として扱わない方向性が示されていました。

さらに上院版では、

「Non-Decentralized Finance Trading Protocol」

という新しい概念が導入されています。

簡単に言えば、

「DeFiと名乗っていても、実際に誰かが支配しているなら規制対象になる」という考え方です。

逆に、本当に分散化されているのであれば、規制主体そのものが存在しないという整理です。これはアメリカが、「DeFiを規制する」から、「本物のDeFiとそうでないものを区別する」方向へ移行していることを意味します。

開発者保護と自己保管権

今回の上院版で私が特に評価しているのが、

・Protecting Software Developers
・Blockchain Regulatory Certainty Act
・Keep Your Coins Act

が追加されたことです。これらは、「開発者保護」「自己保管(Self-Custody)保護」を強化する内容です。

つまりアメリカ政府は、「コードを書いたから規制する」のではなく、「本当に金融サービスを提供しているのか」を重視しようとしています。

また、利用者が自分自身でウォレットを管理する権利についても保護が明文化されています。これはビットコインが誕生した当初からの理念に近い考え方だと私は感じています。

最大の障害は政治である

法案の内容だけを見ると、かなり前進しています。House版は2025年7月に294対134という大差で可決されました。

また上院銀行委員会でも超党派の支持を得ています。しかし、成立までにはまだ複数の障害があります。

民主党の一部議員は、

・消費者保護不足
・AML対策
・国家安全保障
・政治家との利益相反

などを理由に強く反対しています。

特にエリザベス・ウォーレン議員らは、現在も厳しい姿勢を維持しています。また、上院本会議の日程確保、農業委員会関連法案との調整、上下院の条文一本化なども必要です。

つまり現在の問題は、「法案が良いか悪いか」ではなく、「政治的に成立まで持っていけるか」なのです。

私が考える3つのシナリオ

現時点で私自身は、

成立シナリオ 45%

遅延シナリオ 35%

停滞シナリオ 20%

程度で見ています。

法案そのものへの支持は以前より広がっています。SECもPaul Atkins体制になって以降、「規制による執行」より「ルールの明確化」へ姿勢を変えています。しかし一方で、選挙政治や利益相反問題など、内容以外の要因が依然として大きなリスクです。

今週が勝負になる理由

私が今最も注目しているのは、上院本会議への正式な日程掲載です。ここが動けば、法案成立への道筋が一気に現実味を帯びてきます。

逆にここで大きく遅れれば、年末、そして選挙サイクルへと議論が流れ込み、成立時期は大きく後ろへずれ込む可能性があります。

だからこそ市場関係者は今、「成立するか」ではなく、「いつ成立するのか」を見ています。

私は、CLARITY法案は単なる暗号資産法案ではないと思っています。

これはアメリカがビットコイン、ステーブルコイン、DeFi、そしてオンチェーン金融を正式な金融インフラとして受け入れるのかを決める歴史的な法案です。

今週は、その運命を左右する重要な週です。

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