QRコード決済ゲートウェイを手がけるネットスターズは6月4日、東京都内で「StarPay-X Web3 Payment Innovators Meetup Vol.1」を開催した。
イベントには、日本円ステーブルコイン「JPYC」を手がけるJPYC社の代表取締役である岡部典孝氏、Bitget WalletのRegional Growth Managerである諸田優大氏らが登壇。ステーブルコインを実店舗で使える決済手段にするため、発行体、ウォレット、決済ゲートウェイがそれぞれ担う役割について語った。
国内では、ステーブルコインやトークン化預金を活用した決済の実装に向けた動きが相次いでいる。
例えば6月5日にJPYCとトレーダムは、海外の買い手がステーブルコインで支払い、JPYC EXを通じて円貨精算まで完了するクロスボーダー決済の実施を発表した。
また、6月16日には北陸銀行とディーカレットDCPも、デジタル通貨「DCJPY」を活用した決済事業の商用化に向け、基本合意書の締結を発表している。
こうした動きが進む一方、ステーブルコインを日常決済に広げるには課題も残る。ユーザーがウォレットを持っていても、店舗側が新たな端末や運用、会計処理を求められれば、導入は進みにくい。実店舗で使われるには、既存の決済インフラにどう接続するかが焦点となる。
今回のイベントでは、既存の加盟店網や決済端末を生かしながら、ステーブルコイン決済を「Web2の実店舗」に導入するための論点が示された。
70万規模の加盟店網にステーブルコイン決済をどう接続するか

ネットスターズは、店舗と多様な決済サービスをつなぐゲートウェイを展開している。同社によると、既存の決済プラットフォームは約70万規模の加盟店・アカウントで利用され、年間取扱高は約1兆円に上るという。
イベントで同社のエグゼクティブプロデューサーを務める張也氏は、ネットスターズが進める「StarPay-X」について、既存の決済インフラにブロックチェーンやステーブルコインを組み込むためのゲートウェイだと説明した。
同社はこれまで、羽田空港第3ターミナルなどでステーブルコイン決済の実証を行ってきた。その中で、実店舗での利用可能性については一定の手応えを得た一方、一般ユーザーや加盟店にとっては、使いやすさの面で課題が残ったという。
張氏は「ステーブルコインをもう少し日本で実用的なものにしていきたい」と述べ、Web3事業者や金融・決済事業者との連携を広げる考えを示した。
StarPay-Xでは、空港、ショッピングモール、スーパーなどの実店舗で、ユーザーがQRコード決済と同じような感覚でステーブルコインを使える環境の整備を目指すという。
JPYCが目指すのは「経済圏の中で循環する決済手段」

では、日本円ステーブルコインを実店舗で使われる決済手段にするには、何が必要になるのか。JPYC社の岡部氏は、普及には既存の加盟店網や決済サービスとの接続が重要になるとの考えを示した。
JPYC社は、日本円とJPYCを交換する発行体としての役割を担う。一方で、ブロックチェーン、ウォレット、店舗側の決済システムは外部事業者が開発・提供できる。
岡部氏は、発行体が独自の決済網を閉じて構築するのではなく、さまざまな事業者がJPYCを組み込める環境を整えることが普及につながると説明した。

講演では、暗号資産取引所での流通開始、DeFi用途の拡大、ウォレット間決済、POSと連動したB2C決済などを進めるロードマップも示された。
将来的には、複数の用途が相互に補完し、JPYCが経済圏の中で循環する状態を目指すという。
その延長線上にある用途の一つが、AIエージェントによる決済だ。岡部氏は、ユーザーがAIエージェントに商品購入を依頼し、ウォレット内のJPYCを使って注文や支払いまで完了するような将来像を示した。
AIエージェントが予約や購買を代行するようになれば、従来のクレジットカード決済や銀行振込だけでなく、プログラムから扱いやすいデジタルな決済手段の重要性も高まる。
例えば岡部氏は以前、AIエージェントにホテル予約を依頼すると、予約から支払いまで自動で完了するような世界を例に挙げていた。ステーブルコインは、こうした自動処理と相性のよい決済手段の一つとして位置づけられる。
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岡部氏は、日本円ステーブルコインを日常的な決済手段として広げる展望について、「『現金ですか?』ではなく、『ステーブルコインですか?』という時代にしたい」と述べた。
Bitget WalletはStarPay-Xで決済をどう変えるのか

ネットスターズはこの日、ノンカストディアル型暗号資産ウォレットを提供するBitget Walletと、Web3型決済の普及に向けた基本合意書を締結したと発表している。両社は、StarPay-Xのマルチウォレット化に向け、Bitget Walletを通じたステーブルコイン決済の導入可能性を検討するという。
Bitget Walletの諸田氏は、StarPay-X構想においてウォレットが担う役割を説明した。
Bitget Walletは、世界で9000万人以上のユーザーを抱える自己管理型ウォレット。3億ドル規模のユーザー保護基金も設けているという。
イベントで諸田氏は、ステーブルコイン決済を広げるには、利用者側のハードルを下げる必要があると指摘した。
暗号資産ウォレットでは、シードフレーズの管理やガス代、チェーンの違い、英語表記などが初心者にとって負担になりやすい。
そこでBitget Walletでは、ソーシャルログイン、危険サイトのブロック、リスクの事前アラート、アプリ内やコミュニティでの相談窓口、ガス代の負担を軽減する仕組みなどを提供しているという。
StarPay-Xとの連携構想では、ユーザーが従来の決済アプリの代わりにBitget Walletを開き、QRコードを提示。店舗側は既存のPOS端末や読み取り端末でQRコードを読み取り、ネットスターズの決済サーバーを通じて処理する想定だという。

諸田氏は、ユーザーは普段店舗側に見せているQRコードをBitget Walletアプリに置き換えるだけでよく、店舗側も既存の読み取り端末で対応できると説明した。加盟店側については「何も変わらない」と述べ、新たな機材を導入する必要がない点を強調した。
Bitget Walletは、ブラジルの「Pix」、タイの「Thai QR」、フィリピンの「QR Ph」など、海外のQRコード決済との接続実績を持つ。諸田氏は、日本でもこうした知見を生かし、StarPay-X構想への対応を進めたい考えを示した。
|文・撮影:平木昌宏



