【取材】ビットコインマイナーのAI転換は危険なのか──Babylon CTOが語るBTCステーキングの現在

2014年1月、米フロリダ州マイアミで開催されたNorth American Bitcoin Conferenceで、ヴィタリック・ブテリン氏がイーサリアムとスマートコントラクトの構想を正式に発表した際、多くの人々は、分散型金融の台頭によって、イーサリアムのネイティブ通貨であるETHがビットコイン(BTC)の優位性を侵食すると予想した。なかには、イーサリアムの柔軟性や、分散型アプリケーション、スマートコントラクトを支えられる能力を根拠に、ETHの時価総額がBTCを上回るとの見方を「フリップニング」と呼ぶ人もいた。Coinbaseはこれを、ETHがBTCの時価総額を上回るとの予測として説明している。

それから12年が経過した。イーサリアムは、アクティブ取引量の合計、開発者エコシステムの規模、手数料収入総額といった二次的な利用指標ではビットコインを上回ることに成功した。一方で、ETHの時価総額がBTCを上回るフリップニングはいまだ起きていない。

Line chart of Bitcoin market dominance (BTC.D) over time, rising from ~58.5% to ~60.8%, latest value 60.73% at 04:26, shown on TradingView.
<ビットコイン・ドミナンス(BTC.D)、2026年5月|出所:TradingView>

BTCは約7万7000ドルで取引され、時価総額は1.6兆ドルに達している。TradingViewのビットコイン・ドミナンス指数(BTC.D)は、2026年5月20日時点で61%を示している。BTCは、時価総額、暗号資産ETFを通じた機関投資家の採用、国家準備資産として保有されるというマクロ面での重要性において、依然として暗号資産市場を代表する資産である。地政学的緊張とマクロ経済の不確実性が続くなか、低時価総額のアルトコインへの投資意欲は弱まり、ビットコインの市場シェアは4月初めから4%拡大した。

しかし、デジタル資産経済の中心にあるビットコインの立場は、またしても新たな技術サイクルによって試されている。

Dashboard with top metrics for asset values and holders, followed by a stacked-area chart titled Total RWA Value showing growth from 9/2023 to 5/2026.
<RWAセクターの成長指標、2026年5月20日|出所:RWA.xyz

2026年5月時点で、300億ドル規模の資産トークン化市場と、台頭しつつあるエージェント型AI経済は、暗号資産業界の次の成長段階をけん引する有力分野として最も広く注目されている。米国と英国の政策当局がトークン化された金融市場に向けた規制の枠組みを準備し、AI企業が逼迫する計算インフラのサプライチェーン確保を急ぐなか、投資家が拡張性とプログラム可能性を備えたブロックチェーンネットワークを優先すれば、ビットコインは再び後れを取るリスクに直面する。

AIとRWAは2026年、ビットコイン・ドミナンスに新たな「フリップニング」の脅威をもたらす

現在最大のトークン化ファンドであるBUIDLの発行体、BlackRockのCEOであるラリー・フィンク氏は、Ethereumをトークン化の「有料道路」と表現した。一方、SolanaはOpenClawを通じて、暗号資産領域における主流のAIエージェント実験の第一波における試験場として浮上した。それでも、ビットコインエコシステムの貢献者たちは、業界が新興の市場テーマを取り込むなかでも、先駆的な暗号資産ネットワークであるビットコインは優位性を維持すると見ている。

Babylonは、電気工学の専門家であり、スタンフォード大学教授でもあるデビッド・ツェ氏が創設した、ビットコインに特化したステーキングプロトコルである。独自のマージステーキングとマージマイニングにより、BTC保有者が利回りを得られる仕組みを提供している。

本インタビューでは、Babylonの共同創業者兼CTOであるフィッシャー・ユー氏に、2026年第1四半期におけるビットコインマイナーのAIインフラへの資金・設備シフト、量子コンピューティングのリスク、エージェント型経済におけるビットコインの役割、そしてBTC保有者に利回りをもたらす同プロトコルの仕組みなど、現在の市場潮流にビットコインエコシステムがどのように対応しているのかを聞いた。

Male conference speaker wearing a lanyard and badge, gesturing while presenting on a blue gradient stage backdrop
<フィッシャー・ユー氏はBabylonの共同創業者兼CTO>

──Babylonにおけるビットコインステーキングの仕組みと、それが現在の市場参加者にもたらす機会やリスクについて説明してほしい。

マージマイニングは、ビットコインマイナーが他のプルーフ・オブ・ワーク型ブロックチェーンの安全性を確保できるよう、ナカモトによって考案された。Babylonはビットコインステーキングを考案した。これは、ビットコイン保有者がBTCをステーキングし、プルーフ・オブ・ステーク型チェーンの安全性を支えられるようにする仕組みである。

現在、エコシステム全体では約40億ドル相当のBTCがステーキングされており、参加者はBTCへのエクスポージャーを維持しながらステーキング報酬を得られる。

Orange infographic titled 'Trustless Infrastructure for Native Bitcoin Collateral' with staking steps (Stake, Secure, Receive) and a prominent 'Staking Interface' button.
<Babylonlabs.io>

利点は明確だ。BTC保有者はこれまで、ネイティブな利回り創出手段が限られた遊休資産を保有していた。ビットコインステーキングは、BTCへのエクスポージャーを完全に手放すことなく報酬を得る方法を導入するものだ。

リスクは主に実装設計に左右される。セキュリティ上の前提、スラッシング条件、スマートコントラクトの設計、カストディモデルのすべてが重要になる。業界は、信頼前提を最小化したビットコインステーキングシステムを構築するうえで、まだ初期段階にある。

──ビットコインマイナーが計算能力をAIデータセンター向けに転用する動きが増えている。AIインフラのハイパースケール化は、ビットコインの長期的なネットワーク安全性やハッシュレートの安定性にリスクをもたらすのか。

私はハッシュパワーとデータセンターインフラを分けて考えている。AIがビットコインマイニング用ハードウェアをそのまま再利用することは通常ない。ただし、電力、土地、冷却設備、運用能力といった同じリソースをめぐって競合する可能性はある。

それがビットコインの安全性に差し迫った脅威になるとは見ていない。ハッシュレートは一般的にマイニングの採算性に従う。AIがマイナーに別の収益源をもたらすのであれば、一部の事業者はむしろより強靭になり、BTC価格サイクルの変動に左右されにくくなる可能性がある。

長期的には、AIインフラとマイニングの関係は競合よりも補完的なものになるかもしれない。特に、エネルギーと計算資源の利用効率を最適化しようとする企業にとってはそうだ。

──複数の業界レポートによると、ビットコインマイナーは2026年第1四半期に、2025年通年を上回るBTCを売却した。米連邦準備制度理事会が金利をより長く高水準に維持すると見込まれるなか、マイナーは売却を続ける可能性が高いのか。

マイナーが売却を続けるかどうかについて、直接的な予想はしない。

マイナーは流動性が必要なときに売却する。主な要因は通常、ハッシュプライス、電力コスト、資金調達コスト、設備投資の必要性である。高金利とビットコイン価格の弱さが重なれば、当然そうした圧力は強まる。

多くの事業者、特に上場企業にとって、財務管理は純粋にビットコイン固有の要因だけでなく、より広いマクロ環境とますます結びつくようになっている。

──エージェント型経済におけるビットコインの役割について聞きたい。Litecoinの創設者であるチャーリー・リー氏は最近、LitecoinのLitVM構想は自律型エージェントやマシン・ツー・マシン決済を支えるために設計されていると語った。ビットコインがエージェント型DeFiの取引フレームワークに組み込まれる現実的な道筋はあると見ているか。

ビットコインにも道筋はあると思う。

ビットコインには、強力な最終決済の保証と、所有権が非常に明確であるという特性がある。難しいのは、ラッピングやブリッジの仕組みに大きく依存せずに、BTCがスマートコントラクトアプリケーションと相互作用できるようにすることだ。

そこでトラストレス・ビットコイン・ボールトが重要になる。BTC自体はビットコインネットワーク上にとどまり、暗号学的証明によって外部アプリケーションの状態と接続される。

採用はおそらくゆっくりと段階的に進むだろう。ビットコインユーザーは、プロトコル変更や新しいインフラ層に対して保守的な傾向があるからだ。

それでも、エージェント型システムが中立的で検閲耐性のある決済資産をますます必要とするようになれば、BTCは将来的にマシン・ツー・マシンの金融連携において役割を果たす可能性がある。

──量子コンピューティングとビットコインの安全性について聞きたい。コンセンサスシステムと情報理論の研究者として、現時点で量子コンピューティングの脅威はビットコインにとってどれほど重要なのか。エコシステムはどのような時間軸と緩和策を現実的に考えるべきなのか。

私は量子暗号の専門家ではないので、時間軸については慎重に答えたい。

量子コンピューティングは、ビットコインにとって長期的に真剣に検討すべき課題である。ただし、それは暗号資産に限らず、多くの業界が直面するより広範な課題でもある。

ビットコインエコシステムでは、緩和策や将来的な暗号技術のアップグレードに関する研究が活発に進められている。歴史的に見れば、ビットコインは長期にわたる技術変化のなかで強靭性と適応力を示してきた。

現時点では、この脅威は差し迫ったものというより理論的なものに見える。ただし、量子技術の能力が実質的に進展する前に、エコシステムが準備を続けることは重要だ。

──ドル建てステーブルコインは現在、市場シェアの99%超を占めている。日本では、SBI新生信託銀行の円建てステーブルコインJPYSCのような自国通貨建ての代替手段を関係者が模索している。非ドル建てステーブルコインの将来をどう見ているか。

ドル建てステーブルコインは現在、オンチェーン活動を支配している。しかし、地域経済には依然として地域の決済資産が必要だ。

非ドル建てステーブルコインにとって重要な論点は、準備資産の質、償還の仕組み、透明性、そして他の金融システムとの相互運用性である。

地域の商取引、規制、決済システムが自国通貨へのエクスポージャーを必要とする場所では、地域通貨建てステーブルコインへの需要は今後も続くだろう。

──米国でDigital Asset Market Clarity Actが進展するなか、ステーブルコインの利回りをめぐる米国の銀行と暗号資産企業の対立から、アジアの関係者はどのような教訓を得るべきか。預金流出への懸念は世界的にも当てはまるのか。

預金流出への懸念は現実のものだ。ただし、その度合いは金融システムによって大きく異なる。

米国の銀行システムは、アジア各国の多くの銀行システムとは大きく異なる。そのため、政策当局は米国の議論をそのまま自国の法域に持ち込むことは避けるべきだ。

銀行とWeb3企業の双方が、こうした議論に参加する必要がある。そうでなければ、結果としてできあがる規制枠組みは不均衡なものになるリスクがある。

より広い教訓は、ステーブルコインがもはや暗号資産業界だけの問題ではないということだ。ステーブルコインは、金融政策、銀行の資金調達構造、そして国家レベルの決済インフラ戦略とますます結びつくようになっている。

フィッシャー・ユー氏について

フィッシャー・ユー氏はBabylonの共同創業者兼CTOであり、市場で最大規模のセルフカストディ型ビットコインステーキングプロトコルの1つの開発を率いている。

分散化を長年支持してきたユー氏は、資産の所有権や安全性を損なうことなく、ビットコイン保有者にステーキング報酬をもたらすBabylonのアーキテクチャ設計において中心的な役割を果たしてきた。

Babylonを共同創業する前、ユー氏はDolby Laboratoriesで研究開発プロジェクトを率い、PolyshardやCoded Merkle Treeを含むブロックチェーンのスケーリング技術革新にも貢献した。

オーストラリア国立大学と西北工業大学で電気工学の学位を取得しており、研究への貢献により複数の学術的栄誉を受けている。

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