今週の市場は、「短期投資家の弱気が強まる一方、8万ドル近辺では大口投資家が売りを吸収し始めた一週間」だった。
ビットコインは週前半、8万3,000〜8万4,000ドル前後、円建てではおおむね1,330万〜1,350万円台で推移した。しかし米CPIの上振れをきっかけに売りが強まり、15日には8万1,500ドル前後まで下落。その後も清算が重なり、一時7万9,750ドル付近、円建てでは1,280万円前後まで8万ドルを割り込んだ。ところが安値では買いが入り、16日には8万2,000ドル台へ急速に回復した。
重要なのは、価格が戻ったことそのものではない。短期トレーダーは弱気になっているのに、大口はむしろ8万ドル近辺で買っている。 今週は、投資家の立場によって市場の見え方が大きく分かれた。
今週最も大きかったのは、レバレッジの整理である。
暗号資産市場では大規模な清算が発生し、BTC先物のOpen Interestも大きく減少。Funding Rateはマイナスへ転じ、短期投資家のポジションは明確に弱気方向へ傾いた。
一方で、80,000ドル付近では大口の買い注文が約定した後、再び注文が補充されたとの分析がある。大口投資家数も過去最高水準まで増え、Bitfinexでは8月末以降、約6万BTCを8万〜8万6,000ドル付近で蓄積したとの報告もある。
つまり今週は、「弱い参加者がレバレッジを落とし、強い参加者が現物を拾う」という入れ替わりが起きた可能性がある。
ただし、ETFからの資金流出やCoinbase Premiumの弱さは残っている。売り手が減ったからといって、新しい買い手が十分戻ったとはまだ言えない。
投資家心理は二層化している。
先物市場ではFundingがマイナスとなり、短期トレーダーは明確に防御的になった。一方、大口投資家は増加し、安値では買いが確認されている。
行動ファイナンスの観点では、急落後には「さらに下がるのではないか」という損失回避心理が強まりやすい。反対に、大口投資家は、短期的な恐怖によって価格が下がった場面を利用することがある。
ただし、悲観が強まった=底打ちではない。
今回の反発にもショートカバーが含まれている。現物買いが数日続き、ETFやCoinbaseの資金フローまで改善するかを確認する必要がある。
今週は、米CPIとPPIというインフレ指標が市場心理を大きく揺らした。
CPI上振れ後、BTCは急落。原油高やドル高、金利への警戒も重なり、リスク資産全体に売りが広がった。一方、その後は景気減速への警戒から米長期金利とドルが低下する場面もあり、BTCの反発を支えた。
これは現在の市場が単純ではないことを示している。
インフレが強ければ金利上昇が逆風になる。一方、景気が急速に悪化すればRisk-offも起こる。
BTCは依然として完全な安全資産ではなく、「インフレ」と「景気後退」の両方を意識しなければならない局面にある。
来週確認したいのは三点である。
第一に、80,000〜80,400ドル付近で確認された買い支えが維持されるか。
第二に、ETFフローとCoinbase Premiumが改善し、大口以外の新しい現物資金が戻るか。
第三に、84,700ドル付近を、ショートカバーではなく現物需要を伴って回復できるかである。
今、期待しすぎるべきではないのは、「8万ドルを守ったから底が確認された」という考え方だ。
同時に、8万ドルを一時割ったからといって、中長期の需給構造まで崩れたと判断するのも早い。
現在の市場は、「売り手が減っている市場」から「新しい買い手が戻る市場」へ移れるかを試している段階だと考えている。
次の焦点は価格ではない。
短期投資家が弱気な中で、誰が買い続けるのか。
そこを確認することが、次の市場フェーズを判断するうえで重要になる。
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