●10月の最初の10日間で、ビットコイン(BTC)は約1.1%下落した一方、イーサリアム(ETH)は7.4%下落した。両者の相対的な強さに大きな変化が生じている。
●BTC現物ETFへの資金流入とは対照的に、ETH現物ETFでは9営業日連続で資金が純流出した。これが、時価総額上位2つの暗号資産(仮想通貨)の差をさらに広げている。
●イーサリアムの取引所残高の増加と、量子技術に関連する新たなセキュリティ警告が懸念を強めている。一方、ビットコインの取引所残高は減少しており、保有を続けようとする動きが強まっている可能性がある。
10月に売り圧力が強まるなか、BTCがETHを上回る
2026年10月の最初の10日間で、BTCの価格パフォーマンスはETHを上回った。7月、8月、9月はETHがBTCを上回っていたが、その後、市場の勢いはBTCへと移っている。
両暗号資産は、マクロ経済の先行き不透明感や中東の地政学的緊張を背景に、売り圧力にさらされている。ただし、ETHの下落幅はBTCよりも大幅に大きい。

10月10日時点で、BTCは10月1日の始値である約8万3550ドルから1.1%下落した。一方、ETHは同期間に2680ドルから約7.4%下落した。
この差は、直近の相場下落局面で、投資家がETHよりもBTCを選好していたことを示唆している。その背景として考えられるのが、ETFの資金動向、取引所残高、そして暗号技術の安全性をめぐる懸念の再燃という3つの要因だ。
BTCがETHを上回る3つの理由
1. BTC現物ETFでは流入日もある一方、ETH現物ETFは9営業日連続の純流出
記事で示されたFarside Investors(ファーサイド・インベスターズ)のデータによると、BTCとETHの現物上場投資信託(ETF)では、投資家の需要に差が生じている。
10月9日(金)に5610万ドルが流出したことで、ETH現物ETFからの資金流出は、9月28日以降の9日連続で累計6億9700万ドルに達した。一方、9月28日~10月9日の間BTCのETFでは6日間に資金流入があり、流出額は4億3700万ドルにとどまった。

ETFの資金動向が重要なのは、規制下にある金融商品を通じた暗号資産投資への需要を、数値で把握できるためだ。資金流入が続けば、ファンドの仕組みや取引状況によっては、運用会社が裏付けとなる資産を追加で購入する必要が生じる。反対に、資金流出が続き、解約に伴って資産が売却されれば、売り圧力につながる可能性がある。
BTCのETFに資金が集まる一方で、ETHのETFから資金が引き揚げられると、BTCの相対的な優位性はより鮮明になる。この違いには、機関投資家の投資姿勢、投資家の信頼感、将来のリターンに対する期待の差が表れている可能性がある。
ただし、ETFの資金動向だけでは、投資家が資金配分を変えている理由までは判断できない。ETHへの投資を減らしているのか、BTCへ資金を移しているのか、それともポートフォリオ全体のリスクを調整しているのか。これらを見極めるには、追加の情報が必要だ。
取引所残高も有用な指標の一つだ。ETHのETFの解約と同時にイーサリアムの取引所残高が増えているなら、一部の投資家が売却や保有資産の組み替えを準備している可能性がある。一方、ビットコインの取引所残高の減少は、長期保管を目的とした取引所からの出庫を示している可能性がある。
もっとも、これらの指標は、ETFからの資金流出が取引所への入金を直接引き起こしたことを証明するものではない。ファンドの解約、マーケットメーカーの在庫、投資家が独自に行う資産移動は、いずれも取引所残高に影響を与えうる。
2. イーサリアム開発者が量子技術に関連するセキュリティリスクを改めて警告
暗号技術の安全性をめぐる新たな警告が、暗号資産投資家にとって懸念材料となっている。特に、イーサリアムの長期的な技術リスクを評価する投資家にとっては、気がかりな問題だ。
Ethereum Foundation(イーサリアム財団)の研究者Justin Drake(ジャスティン・ドレイク)氏は、10月7日の投稿で、暗号資産のエコシステム全体に対し、より強固なセキュリティ対策に備えるよう呼びかけた。警告の焦点は、人工知能(AI)や数学的手法の進歩によって、既存の暗号システムに対する攻撃が加速する可能性にあった。
この懸念はイーサリアムだけの問題ではない。ビットコインもイーサリアムも、取引の承認に電子署名の暗号技術を利用している。ただし、実装方法やリスクへのさらされ方は異なる。
将来、攻撃者が十分に強力な量子コンピューターや、その他の革新的な技術を実用的に使えるようになれば、そうした攻撃に弱い暗号署名は重大なセキュリティリスクとなりうる。また、公開鍵がどのような形で公開されているかによって、ウォレットの種類ごとにリスクの程度が異なる可能性もある。
イーサリアムの共同創設者Vitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)氏も、AIや量子コンピューティングの進歩がセキュリティに及ぼしうる影響について見解を示した。ただし、将来の脆弱性への懸念と、現在使われているウォレットの署名方式をすでに破れるという証拠は、区別する必要がある。
「今すぐ慌てて新しいウォレットへ資金を移すことを勧めるわけではない。ただ、AIによって加速する数学の進歩が暗号技術にもたらすリスクは、真剣に受け止めるべきだ。量子技術による攻撃に弱い暗号方式だけでなく、AIによる攻撃に弱い可能性のある暗号方式についても、利用に伴うリスクをできる限り抑える必要がある」
──イーサリアム共同創設者ブテリン氏、10月7日
量子技術に関連するセキュリティ上の懸念は、暗号資産のエコシステム全体に関わる。それだけでイーサリアムがビットコインよりも脆弱だと判断したり、価格パフォーマンスの差をすべて説明したりすることはできない。
信頼性のあるセキュリティ警告は、実際に脆弱性が悪用される前でも市場心理に影響を与えうる。特に、新たな方式への移行時期、導入コスト、現在保有している資産の安全性について、投資家が確信を持てない場合はそうだ。

ETHの恐怖・強欲指数は、10月10日時点で38に低下した。前月の9月21日に記録した最高値69から、45%以上下がったことになる。
投資家にとって重要なのは、開発者に信頼できる移行計画があるか、提案された対策でウォレットの安全性を維持できるか、そして利用者が資産へのアクセスを失わずに新たな暗号規格へ移行できるかという点だ。
3. イーサリアムの取引所残高が増加する一方、ビットコインの残高は減少
ブロックチェーン分析ツールSantiment(サンティメント)のデータによると、10月4日から10月8日にかけて、イーサリアムの取引所残高は10万ETH以上、率にして2%近く増加した。一方、同期間にビットコインの取引所残高は約1万5000BTC減少した。この間の相場下落では、ETHが約10%下落したのに対し、BTCの下落率は約6%だった。
ビットコインとイーサリアムの取引所残高が逆方向に動いたことは、売りが広がる局面で、投資家が両資産について異なるポジションを取っていた可能性を示している。

取引所残高とは、取引プラットフォームに属すると特定されたアドレスに保管されている暗号資産の量を指す。アナリストはこの残高を使い、すぐに取引に回せる供給量がどれほどあるかを評価する。
取引所残高が増えている場合、投資家が売却、ポジションのヘッジ、流動性の提供などを目的に、トークンを取引所へ移している可能性がある。特に需要が弱い局面では、こうした動きによって売りに回りうる供給量が増える可能性がある。注目すべきは、取引所残高が約2億5000万ドル相当増加した時期と、ETH現物ETFから約7億ドルの資金が純流出した時期が重なっていることだ。
ただし、取引所への入金が、そのまま売却の意思を意味するわけではない。取引所内のウォレット間で資産が移動したり、カストディサービスでの保管に回されたり、担保やデリバティブ取引のために使われたりする場合もある。
今後、現物需要が弱いままであれば、イーサリアムの取引所残高の増加とETFからの継続的な資金流出は、さらなる売り圧力への懸念を強めるだろう。量子技術をめぐるセキュリティの議論も、市場心理に影響する別の要因として、今後数週間の投資家の信頼感を左右する可能性がある。
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