【独自】なぜメタプラネットを選んだのか──子会社証券会社が語る買収までの2カ月

ビットコイン(BTC)の保有を急速に拡大し、国内のビットコイントレジャリー企業として注目を集めてきたMetaplanet(メタプラネット)。同社は6月、私募社債を扱う旧Siiibo(シーボ)証券を21億円で買収すると発表し、7月には「メタプラネット証券」へ商号を変更した。

メタプラネットの事業戦略はIRや公式発表を通じて示される一方、経営陣がメディアでその背景を語る機会は少なく、証券会社買収の舞台裏もこれまで詳しく語られてこなかった。

両社が初めて面談したのは4月末ごろ。その後、約2カ月で買収の大筋が固まったという。メタプラネット証券の小村和輝代表取締役CEOに、グループ入りの経緯と今後の事業について聞いた。

「どこかと組まないと」独立成長に感じた限界

Siiibo証券がグループ入りを検討した背景には、独立系フィンテック企業として事業を伸ばしていく難しさがあった。小村氏によると、フィンテック企業が自社で多額のマーケティング費用をかけて顧客を集め続けるだけでは、成長に限界がある。近年は、大きな顧客基盤を持つ企業と組み、その基盤を生かして成長するケースも増えているという。

Siiibo証券もベンチャーキャピタル(VC)などから資金調達しながら事業を拡大してきたが、小村氏は「VCから調達した、色の付いていない独立したお金で自社だけで成長していくモデルには限界を感じていた。どこかと組まないと、という思いはありました」と振り返る。

そうしたなか、既存株主を通じて紹介されたのがメタプラネットだった。メタプラネット側も、多数の株主を基盤に新たな事業を育てるなかで、金融分野への進出に向けて証券会社を探していたという。小村氏は「我々も、多くの投資家の目に触れる基盤のある会社と組みたいという思いがあった。そこが合致して、スピード感を持って話が進んだ」と説明する。

両社が初めて面談したのは2026年4月末ごろ。その後、約2カ月で買収の大筋が固まり、必要な手続きを経て7月に完全子会社化された。メタプラネットは2026年6月12日、Siiibo証券の全株式を21億円で取得すると発表していた。

不安から一転、面談で見えた共通点

メタプラネットについて、小村氏は「SNSでもよく話題になる銘柄なので、どういう方々なんだろうと、初めての面談前は不安な気持ちも持っていました」と率直に明かす。

グループ入りにも、迷いはあったという。ただ、実際に経営陣と話すなかで印象は変わった。

Man in a gray suit sits at a conference table with open laptops in front of him, attentively listening or speaking during a meeting.

「日本の伝統的な金融機関とスタートアップだと、カルチャーの部分を理解していただけなかったり、話がかみ合わなかったりすることもあります。その点、メタプラネットは金融を分かっていて、スタートアップのカルチャーにも理解があった」と小村氏は説明する。経営陣とは「目指しているところも似ていた」という。

小村氏はドイツ証券やBlackRock Japan(ブラックロック・ジャパン)でクレジット商品などに携わった後、Siiibo証券の前身である株式会社Siiiboを創業した。自身も金融業とスタートアップの双方を経験してきただけに、その両方への理解は相手を選ぶうえで重要だったという。

こうした共通点もあり、小村氏は最終的にメタプラネットとのグループ入りを「最適だと思える選択肢だった」と振り返った。

Siiibo証券の原点、実はブロックチェーン

今回の取材では、創業時にまでさかのぼると、メタプラネットとの縁が感じられる意外な経緯も明らかになった。

同社は創業の当初から、私募社債をオンラインで販売する証券会社を目指して始まったわけではない。小村氏によると、発想の原点にあったのは、ブロックチェーンを使って新しい信用市場をつくる構想だった。

「実は創業するとき、ブロックチェーンの技術を使った分散型のクレジット市場をつくれないか、という発想がありました」と小村氏は明かす。ブロックチェーンを使った分散型の信用市場を構築する仕組みを検討していたのだという。

Man in a gray suit gestures with his hands while seated at a conference table with an open laptop in front of him.

その後、暗号資産やブロックチェーンを巡る規制整備が進む方向を見て、事業の形を変えた。法規制の外側で信用市場をつくるのではなく、自身が金融事業者となって、既にスキームが確立された法規制の中に入り、新しい市場をつくる道を選んだ。

小村氏は「証券会社を立ち上げるというのは高いハードルでしたが、最初から金融事業者としてちゃんと規制当局の下でやった方がいい、という発想で私募社債の取扱いに至りました」と話す。

そこで目を付けたのが、日本では市場が十分に育っていなかった成長企業向けの社債だった。大企業の公募債だけでなく、未上場企業や成長企業も社債で資金を調達し、個人投資家がそうした企業に直接投資できる市場をつくる。Siiibo証券は私募社債を入り口に、その市場の開拓を進めてきた。

そして約7年後、ビットコインを事業の中核に据えるメタプラネットの傘下に入ったことで、再びデジタル技術との接点が生まれている。

小村氏も「今でもブロックチェーンの進化はずっと追っています。創業当時の発想の原点に戻ってきた、という感じですね」と語った。

メタプラネット傘下でも「社債市場を広げる」

メタプラネット証券となったことで、今後は親会社に関連する金融商品の取り扱いも想定される。一方、小村氏は、従来から手がけてきた第三者企業の社債発行支援についても「むしろより強化していきたい」と話す。

理由は、Siiibo証券時代から掲げてきた「日本の社債市場を広げる」という目標が変わっていないためだ。

「メタプラネットの社債を扱うだけでは、日本の社債市場を本当に開拓していくことにはならない。今まで40数社を超える企業様の社債発行にご活用いただいていますが、これを100社、200社と増やしていきたい」と小村氏は語る。

日本では、個人が購入できる社債は大企業のものが中心だ。小村氏は、米国や欧州では投資適格の格付けを持たない企業などが発行する社債市場も形成されている一方、日本ではこうした企業に個人投資家が投資できる機会が限られていると指摘する。

メタプラネット証券が掲げるのは、投資家と資金調達を必要とする企業を直接つなぐ市場を広げることだ。小村氏は、一部の大企業の社債に限定されずに、金利収入を求める個人の投資家がさまざまな企業の債券から選べる環境をつくりたいと話す。

その構想をメタプラネットとの取り組みに当てはめた最初の事例が、8月に始まった社債発行プログラム「BitBonds(ビットボンズ)」だ。

BitBondsは初回約2億円から始まったが、小村氏は今回の取材で、今後はこれまでに無い規模での起債を目指す考えを明らかにした。その先では公募債、ステーブルコインを使った利払い、セキュリティ・トークン(ST)、社債のセカンダリー市場の拡大も将来的な検討を視野に入れている。

後編では、メタプラネット証券がBitBondsをどこまで拡大し、その先にどのような社債市場を描いているのかを詳しく聞く。

|取材・文:平木 昌宏
|撮影:橋本祐樹

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