「東京ゲームショウを少し一緒に回りませんか?」
1週間ほど前、コインチェックの井坂さんから、メッセージが届いた。ブロックチェーンゲームの「現在地」を確認しませんか、というお誘いだった。
井坂さんは、コインチェックの代表取締役 社長執行役員CEOで、JCBA(日本暗号資産ビジネス協会)のブロックチェーンゲーム・エンターテインメント部会長でもある。ゲームデザイナー/プロデューサーという経歴を持つ「ゲーム大好き」な井坂さんたちと、部会の視察という形で東京ゲームショウ2026を回ることになった。
東京ゲームショウに行くのは、今回が2回目。1回目は2023年。そう、「ブロックチェーンゲーム」が“Web3マスアダプションを切り拓く”と期待を集め始めていた時期だ。
18日は「ビジネスデイ」だったが、すでに多くの人が来場していた。チケットの発券から入場までは長い列を作り、海浜幕張駅に着いてから幕張メッセの会場に入るまでには、1時間ほどかかった。午前中で切り上げたが、帰る頃にはさらに人が増えていた。

東京ゲームショウは、国内外のゲーム会社が集まる巨大イベント。30周年となる今年はゲームショウ史上最長の5日間開催となる。会場には巨大なディスプレイや装飾物を散りばめたブースが並び、新作ゲームの映像が流れ、あちこちに試遊の長い行列ができていた。幕張メッセが1年で最も賑やかになる日だろう。
そして、「ブロックチェーンゲーム」は?
おそらく読者の皆さんも想像されているように、少なくとも私が歩いた範囲では「ブロックチェーン」「Web3」「NFT」といった言葉を目にすることはなかった。
ゲームをプレイして暗号資産を稼ぐ「Play to Earn」が注目され、ゲーム内のキャラクターやアイテムをNFTとして所有し、売買する。大手ゲーム会社も相次いでブロックチェーンゲームへの取り組みを表明──。あの熱狂は、どこへ行ったのだろう。
プロジェクトは生きていた
当時スタートしたプロジェクトがすべて消え去ったわけではない。
2023年9月、KONAMIは「PROJECT ZIRCON」を「当社初のweb3プロジェクト」として発表した。当時のリリースには、「ブロックチェーン技術を活用」「web3プロジェクト」「NFT」といった言葉が並んでいる。東京ゲームショウ2023で正式発表した際のリリースのタイトルも、「ブロックチェーン技術で“ゲームを共創”する『PROJECT ZIRCON』始動」だった。
私の東京ゲームショウ初体験も、「PROJECT ZIRCON」と同社のブロックチェーンゲームを支える仕組みとなるNFTマーケットプレイス「Resella(リセラ)」を取材するためだった。
▶KONAMI、ブロックチェーン技術でゲームを共創する「PROJECT ZIRCON」発表
▶KONAMI、日本円で取引できるNFTマーケットプレイス「リセラ」発表──外部提供も視野に

あれから3年、「PROJECT ZIRCON」は、KONAMIのブースの中にあった。プロジェクトは消えていない。だが、そこに「ブロックチェーン」や「NFT」という言葉はない。「KONAMIが主導する共創プロジェクト」と紹介されていた。
「まずゲーム」が先になった
もうひとつ、東京ゲームショウで気になっていたゲームがあった。「そろえて☆マーメイドシアター」だ。
手がけているのは、今年5月に14年以上在籍したスクウェア・エニックスを退職して独立した畑圭輔さん。2022年から同社でブロックチェーンを使ったコンテンツ開発・運営を行う部署の立ち上げに携わり、「資産性ミリオンアーサー」などを手がけた。まさにブロックチェーンゲームのど真ん中にいた人物だ。

2023年には畑さんのインタビュー記事も公開している。
▶カードで遊んだワクワクをブロックチェーン上に再現、新しいユーザー層を開拓した「資産性ミリオンアーサー」の秘密:スクウェア・エニックスの開発プロデューサー、畑 圭輔氏インタビュー
その畑さんは退職時、Xに「ブロックチェーン領域については引き続き事業スコープにいれて、事例作りに貢献できれば」と書いている。
実際、8月に行われたXスペースでは、新しいゲームについて、まず純粋にゲームとして面白いものを出し、その後、段階的に円建てステーブルコイン「JPYC」への対応を進める考えを語っている。
「儲かるゲーム」ではなく、ゲームを楽しんでいたら、その結果として貯まっていた。そんな体験を目指しているという。
ここでも、順番が変わっている。まずゲームを作る。ブロックチェーンやステーブルコインは、その後だ。

「そろえて☆マーメイドシアター」が出展していたのは、HALL1〜8のいわゆるメイン会場とは別に設けられた「インディーズゲームコーナー」だった。井坂さんによると、今インディーズゲームは大きな盛り上がりを見せ、数人で開発したゲームが大ヒットする事例も出ているという。
実はこの日、午前中だけとはいえ会場を歩き回ったため、夜は早々にダウン。深夜に目を覚まして何気なくテレビをつけると、乃木坂46のメンバーが「めっちゃカメレオン」をプレイしていた。
「めっちゃカメレオン」は、日本の個人開発者2人が手がけたゲームで、6月の発売から約2カ月で販売本数は2000万本を突破したと伝えられている。
「ブロックチェーンゲーム」を作るのではなく
数年前のブロックチェーンゲームは、「NFTを使う」「トークンを発行する」「Play to Earnを実現する」といったこと自体を、ゲームの特徴として打ち出すものが少なくなかった。
「ブロックチェーンを使って、どんなゲームを作るか」、そんな発想だったように思う。
だが、PROJECT ZIRCONの現在の姿や、畑さんの新しい取り組みを改めて振り返ってみると、その順番が逆になっているように感じた。
まず、ユーザーに遊んでもらえるものを作る。その上で、アイテムをどう扱うのか、ポイントをどう使うのか、ゲームの外のサービスとどうつなぐのか。そのためにブロックチェーンが必要なら使う。
考えてみれば、これはごく当たり前の話だ。
ゲームを遊ぶ人にとって重要なのは、「ブロックチェーンゲーム」なのかどうかではない。面白いかどうかだ。
ゲームにブロックチェーンって、本当に必要なのか?
先週、このコラムで「金融にブロックチェーンって、本当に必要なのか?」と書いた。
金融の24時間化も、DvPも、プログラマビリティも、個々の機能だけを見ればブロックチェーンでなければ実現できないわけではない。だからこそ、「Why Blockchain?」を問い続ける必要がある、と書いた。
東京ゲームショウを歩いていて、同じ問いが浮かんだ。
「ゲームにブロックチェーンって、本当に必要なのか?」
ゲームを面白くするために、ブロックチェーンが必要なわけではない。
だが、ゲームの中で生まれたものをゲームの外へ持ち出す。別のサービスや経済圏とつなぐ──。そうしたところでは、ブロックチェーンを使う意味が出てくるかもしれない。
会場を歩き始めたときは、「ブロックチェーンゲームの残骸探し」のような気分だった。だが今は「ブロックチェーンゲーム」という言葉が消えた先に、何が残るのか。それをもう少し、追いかけてみたくなった。
最後に、東京ゲームショウ2026の会場の様子をいくつか。会場の熱気は圧倒的だった。







|文・撮影:増田隆幸
|トップ画像:生成AIで加工
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