ビットコイン市場の構造が、大きく変わり始めている。
ビットコインは8月17日以降に約24%上昇し、22日には一時8万ドルを突破した。その後は利益確定売りに押され、8万ドルを維持できていないものの、今回の上昇は単なるショートスクイーズや一時的な反発だけでは説明しにくい。
CryptoQuantが8月25日に公表した週次レポートでは、バリュエーション、現物需要、先物需要、流動性など、複数の指標が同時に強気方向へ転換したとして、現在を「新たな強気相場の初期段階」と評価している。
一方、短期投資家の利益率は急上昇し、クジラによる大規模な利益確定も確認された。つまり現在は、強気相場への転換を示す材料と、短期的な調整を警戒すべき材料が同時に存在する局面だ。
Bull Scoreは1週間で30から80へ急上昇
市場構造の変化を最も分かりやすく示しているのが、CryptoQuantの「Bull Score Index」だ。

Bull Score Indexは、オンチェーンデータ、市場需要、流動性、バリュエーション、テクニカル指標など10項目を統合し、市場環境を0から100で評価する指標である。
一般的に60以上は強気領域、40以下は弱気領域とされる。今回、Bull Scoreはわずか1週間で30から80へ急上昇した。これは、ビットコインが約12万4,000ドルで推移していた2025年10月6日以来の高水準である。
現在は10項目のうち8項目が強気シグナルに転換した。チャートを見ても、2025年末から2026年前半にかけて低迷していたBull Scoreが、足元で一気に強気領域へ入ったことが分かる。
重要なのは、価格が上昇したから指数も上がったという単純な関係ではない点だ。需要や収益性、市場の流動性など、価格を支える複数の要素が同時に改善している。
その意味で今回の動きは、「価格だけが反発している状態」から「市場構造そのものが強気へ転換し始めた状態」への変化と考えられる。
見かけ上の現物需要がプラス圏へ転換
2つ目の注目点は、ビットコインの「見かけ上の需要(Apparent Demand)」が急速に回復していることだ。

見かけ上の需要は、新たに市場へ供給されるビットコインと、長期間動いていなかった供給量の変化から、市場でどの程度ビットコインが吸収されているかを推定する指標である。
需要がマイナスの期間は、新規供給や既存保有者からの売却を市場が十分に吸収できていない可能性がある。反対にプラスへ転換すれば、市場に出てくる供給を上回る買い需要が発生していることを示す。
チャートでは、2025年10月以降、赤色で示された需要不足の状態が長く続いていた。特に2026年6月から7月にはマイナス幅が大きく拡大し、価格も6万ドル前後まで下落している。
しかし8月に入ると状況が一変した。見かけ上の需要は急回復し、足元ではプラス圏へ転換している。CryptoQuantによると、その拡大ペースは2025年12月下旬以来の速さとなった。
さらに今回は、現物需要と先物需要が同時に増加している。両者がそろって成長する状態は、ビットコインが過去最高値圏にあった2025年10月初旬以来、初めて確認された。
先物市場だけで上昇する相場は、過度なレバレッジが解消された瞬間に崩れやすい。一方、今回のように現物の買いが伴っている場合、上昇を支える基盤はより強くなる。
今回の24%上昇にはショートポジションの清算も影響しているが、それだけではなく、実際の現物需要が戻ってきたことが大きな意味を持つ。
新規クジラはすでに利益確定へ
一方で、短期的な過熱を示すシグナルも強まっている。
特に注目したいのが、新規クジラによる実現利益の急増だ。

このチャートでは、新しくビットコインを取得したクジラと、長期にわたり保有しているクジラの利益確定状況を比較している。
足元で大きく伸びている青色の棒は、新規クジラによる実現利益である。CryptoQuantによると、新規クジラは8月20日から22日までの3日間で約12億ドルの利益を確定した。特に8月20日には、1日として過去最大となる約6億1,400万ドルの利益が実現された。
これは、直近の安値圏で購入した大口投資家が、7万8,000ドルから7万9,000ドル付近で一部の保有資産を売却した可能性を示している。
長期保有者が市場から全面的に撤退しているわけではない。しかし、今回の上昇で利益を得た新規参入の大口投資家が、8万ドル付近を利益確定の水準として意識していることは明らかだ。
加えて、短期投資家の未実現利益率は20.5%まで上昇し、2025年6月以来の高水準となった。含み益が急速に増えれば、「これ以上上がる前に買いたい」というFOMOと、「利益があるうちに売りたい」という心理が同時に強くなる。
現在の8万ドル前後で値動きが荒くなっている背景には、この2つの投資家心理の衝突がある。
取引所への流入増加にも注意
利益確定の可能性は、取引所への資産流入からも確認できる。
ビットコインの取引所流入量は約5万3,000BTCまで増加し、2026年6月5日以来の高水準となった。イーサリアムも約170万ETHが取引所へ流入し、XRPではクジラからの流入量が約4億6,000万XRPまで拡大している。
取引所への送金が、すべて売却につながるわけではない。証拠金として利用する場合や、ヘッジ取引のために移動させる場合もある。
ただし、自己管理ウォレットやコールドウォレットに保管されている資産は、すぐには市場で売却されない。それが取引所へ移されたということは、少なくとも売却やヘッジを行える状態に入ったことを意味する。
特に今回のような急上昇直後に、複数の暗号資産で取引所流入が同時に増加している場合、短期的な売り圧力には注意が必要だ。
最後に残された壁は8万3,000ドル
市場が強気相場へ正式に移行したかどうかを判断するうえで、最後に残されている重要なラインが365日移動平均線だ。
現在、この移動平均線は約8万3,100ドルに位置している。
過去のサイクルでは、ビットコインが365日移動平均線を明確に上回ることで強気相場が始まり、下回ることで弱気相場へ移行する傾向が確認されてきた。
現在の価格は、この水準まで約5%の位置にある。週足終値で8万3,000ドルを上回ることができれば、Bull Scoreを構成する残りの弱気シグナルも解消され、「強気転換を試す局面」から「新たな強気相場を確認する局面」へ進む可能性が高まる。
反対に、8万3,000ドルを突破できなければ、この水準が強い抵抗帯となり、いったん7万5,000ドル前後まで調整する展開も考えられる。
ただし、その場合でも現物需要が維持され、Bull Scoreが強気領域にとどまるならば、調整は必ずしも弱気相場への逆戻りを意味しない。急騰によって生まれた含み益とレバレッジを整理する、強気相場初期の健全な調整となる可能性もある。
市場構造は強気、短期的には過熱
現在のビットコイン市場を一言で表すなら、「構造は強気へ転換したが、短期的には過熱している」という状態だ。
Bull Scoreは80まで上昇し、見かけ上の現物需要もプラスへ転換した。現物と先物の需要が同時に拡大していることから、今回の上昇には一定の持続性がある。
一方、新規クジラはすでに記録的な利益を確定し、取引所への流入も急増している。8万ドルを超えれば直ちに上昇が加速するのではなく、利益確定売りを吸収できるだけの新しい需要が必要になる。
投資家心理の面では、急騰後ほど直近の値動きに引っ張られ、「このまま上がり続ける」と考えやすい。しかし、市場の方向が強気へ変わることと、価格が一直線に上昇することは同じではない。
今後の最大の注目点は、ビットコインが一時的に8万3,000ドルへ到達するかではなく、その上で週足を確定できるかどうかだ。
3つのオンチェーン指標は、すでに市場のレジームが変わり始めたことを示している。残された最後の確認材料は、365日移動平均線の突破である。
ショート動画
ビットコインは強気相場へ?──3つの指標と「8万3,000ドルの壁」
https://youtube.com/shorts/tn75q3Y1HvU


