米ワイオミング州のWyoming Stable Token Commission(ワイオミング・ステーブルトークン委員会)は8月18日、州発行のステーブルコイン「Frontier Stable Token(フロンティア・ステーブル・トークン:FRNT)」のクロスチェーン基盤を、LayerZero(レイヤーゼロ)からChainlink(チェーンリンク)のCross-Chain Interoperability Protocol(CCIP)へ完全移行したと共同発表した。
委員会は複数年契約を結び、CCIPをFRNTの唯一のクロスチェーン基盤として採用した。
これまで利用していたレイヤーゼロの実装は完全に廃止する。
FRNTは、米国の公的機関が発行する初の法定通貨裏付け・完全準備型のステーブルコインとして、2026年1月に発行された。
米ドルと短期米国債を裏付け資産とし、決済や資金決済などでの利用を想定している。
現在はアービトラム、アバランチ、Base、イーサリアム、Hedera、Optimism、Polygon、ソラナの8つのブロックチェーンに展開されている。
異なるチェーン間でFRNTを移動させる仕組みには、当初レイヤーゼロの「Omnichain Fungible Token(OFT)」規格を採用していた。
委員会は今回の移行に先立ち、クロスチェーン基盤について詳細なセキュリティレビューを実施した。
その結果、レイヤーゼロの「情報開示のあり方」と「運用上のセキュリティ」に懸念を確認したとしている。
Anthony Apollo(アンソニー・アポロ)事務局長は、CCIPについて、委員会が求めるセキュリティと信頼性の基準を全面的に満たしたクロスチェーン基盤だったと説明した。
背景にあるのはKelpDAOの巨額被害
移行の背景にあるのは、4月18日に発生したKelpDAO(ケルプダオ)へのブリッジ攻撃だ。
この攻撃では、「rsETH」ブリッジから11万6500rsETH、当時約2億9200万ドル(約467億円、1ドル=160円換算)が流出した。
LayerZero Labsの調査報告によると、攻撃者は同社開発者へのソーシャルエンジニアリングを足掛かりにRPCクラウド環境へ侵入した。
その後、改ざんしたRPCから偽の情報を返し、LayerZero Labsが運営するDVN(分散型検証ネットワーク)に不正なクロスチェーンメッセージを正当なものとして認証させた。
一方、被害拡大の原因を巡ってはレイヤーゼロとケルプダオの主張が対立した。
レイヤーゼロは、ケルプダオがLayerZero LabsのDVNだけを利用する「1-of-1」構成を採用していたため、別の検証者によるチェックが働かなかったと説明した。
同社は複数のDVNを利用する構成を推奨していたとして、ケルプダオ側の設定にも問題があったとの立場を示した。
これに対しケルプダオは、問題となった1-of-1構成はレイヤーゼロの文書上のデフォルト設定に基づくもので、過去の協議でも適切と確認されていたと反論したと、CoinDeskが報じた。
事件以降、クロスチェーン基盤を見直す動きが活発に
この事件以降、クロスチェーン基盤をレイヤーゼロからCCIPへ切り替えるプロジェクトが相次いでいる。
5月7日にはSolv Protocol(ソルブ・プロトコル)が、SolvBTCとxSolvBTCのレイヤーゼロ経由のブリッジを廃止し、CCIPへ移行すると発表した。
15日にはLombard(ロンバード)が、10億ドル超(約1600億円)のLBTCとBTC.bについて、CCIPを唯一のクロスチェーン基盤として採用すると発表した。
6月4日にはVirtuals Protocol(バーチャルズ・プロトコル)も、7億ドル超(約1120億円)規模のVIRTUALをレイヤーゼロからCCIPへ移行した。
ロンバードとバーチャルズはいずれも、レイヤーゼロを巡る攻撃後に実施したセキュリティレビューを移行判断の背景として挙げている。
ただし、ワイオミング州はKelpDAOへの攻撃を今回の移行理由として直接挙げてはいない。
同州が明示したのは、独自のセキュリティレビューでレイヤーゼロの情報開示と運用上のセキュリティに懸念を確認したという点だ。
KelpDAO事件以降、クロスチェーン基盤を見直す動きが続くなか、今回の決定によってLayerZeroからCCIPへの移行が公的機関の発行するステーブルコインにも広がった形となる。
|文:平木 昌宏
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