BOOSTRYは8月19日、企業がセキュリティ・トークン(ST、デジタル証券)を自ら投資家に販売する「自己募集」を支援する新サービス「E-Prime Direct(イープライム・ダイレクト)」の提供を開始したと発表した。
第1号案件として、トヨタファイナンスが18日に募集を開始したデジタル社債「TOYOTA Wallet つむぐボンド」で採用されている。
トヨタファイナンスは今回、証券会社を介さず、決済・モビリティアプリ「TOYOTA Wallet」から投資家が直接申し込める自己募集の仕組みを採用した。BOOSTRYの発表によって、その自己募集を支えるシステムの詳細が明らかになった。
申込から利払い・償還までを支援
E-Prime Directは、自己募集を行う企業と投資家をつなぐWebチャネルだ。
BOOSTRYが提供する発行体向けST管理システム「E-Prime for Issuer」と連携し、投資家からの購入申込の受付から、募集案件の管理、抽選結果の登録、購入代金の引き落とし、トークンの割り当てまでを支援する。
発行後も、利払い・償還などの期中管理に対応する。
さらに、e-KYCや資金決済サービス、発行企業が持つ認証サービスなどとAPIで接続できる。企業独自のドメインやカラー、ロゴなどを設定することもでき、自社ブランドの販売チャネルとして利用できるという。
トヨタファイナンスのケースでは、同社がすでに持つTOYOTA Walletという顧客接点と組み合わせることで、投資家が新たに証券口座を開設することなく、デジタル社債を購入できる仕組みを構築した。
ただし、自己募集に必要なすべての業務をE-Prime Directだけで完結させるものではない。BOOSTRYは、商品設計や投資家保護、KYC、資金決済、税務、証券管理、二次流通などについては、発行体、金融機関、専門家、外部サービス事業者が連携して対応することを想定している。
自己募集は丸井などが先行
デジタル社債の自己募集自体は今回が初めてではない。
丸井グループや「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)などの先行事例がある。両社の案件ではSecuritize(セキュリタイズ)のプラットフォームが活用されている。
自己募集では、発行企業が証券会社を通じることなく自ら投資家を募るため、既存の顧客基盤を活用できる一方、申込受付や本人確認、決済、発行後の情報提供などに対応する仕組みが必要になる。
BOOSTRYは今回、こうした自己募集を支える機能をE-Prime Directとしてサービス化した。
デジタル社債を「顧客との接点」に
トヨタファイナンスの「TOYOTA Wallet つむぐボンド」では、購入者にTOYOTA Wallet QUICPay残高を進呈するほか、富士スピードウェイの観戦チケットや特別試乗体験などの抽選特典も用意する。
こうした特典設計からは、デジタル社債を資金調達だけでなく、企業と顧客をつなぐ手段として活用する姿勢もうかがえる。
BOOSTRYは、自己募集を証券会社経由の募集に代わるものではなく、発行規模や商品性、対象投資家、発行企業の顧客基盤などに応じて使い分ける選択肢と位置づけている。
一方、トヨタファイナンスが今回、なぜ証券会社を介した発行ではなく、自己募集を選んだのか、その狙いは明らかになっていない。
BOOSTRYが今回、自己募集のための投資家向けチャネルをサービスとして展開したことで、トヨタファイナンスのように自社の顧客基盤を持つ企業による直接販売が広がっていくのか、注目される。
|文:増田隆幸
|画像:リリースより


