・The Intercept(ジ・インターセプト)とFreedom of the Press Foundation(フリーダム・オブ・ザ・プレス・ファウンデーション:FPF)は、月額10万ドルのTruth API(トゥルースAPI)が大統領の公式発表への優先アクセスを違法に販売しているとして、ドナルド・トランプ大統領とホワイトハウス高官らを提訴した。
・訴状では、有料購読者に市場を動かし得る政府情報への迅速なアクセスを認めていることが、米憲法修正第1条および第5条に違反すると主張している。
・オフィシャル・トランプ(Official Trump:TRUMP)は過去24時間で5%下落した一方、予測市場は今回の訴訟にほとんど反応しておらず、Polymarket(ポリマーケット)では、2026年末までにトランプ氏が大統領職を離れる確率が7%で横ばいとなっている。
トランプ大統領、月額10万ドルのTruth API巡り憲法訴訟──大統領投稿への早期アクセスを提供
ドナルド・トランプ大統領、Dan Scavino(ダン・スカビーノ)ホワイトハウス次席補佐官、Natalie Harp(ナタリー・ハープ)大統領付きエグゼクティブ・アシスタント、大統領行政府、ホワイトハウス・オフィスは8月12日、大統領の公式投稿に一般ユーザーより早くアクセスできるトゥルース・ソーシャルの有料サービスを巡り、ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所に提訴された。
ジ・インターセプトとFPFが起こした今回の訴訟では、Trump Media & Technology Group(トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ:TMTG、以下トランプ・メディア)が8月1日に開始した企業向けサブスクリプションサービス「トゥルースAPI」の違法性が争われている。
同サービスの料金は月額10万ドルで、3年契約では月額6万ドルとなっており、トランプ大統領やその他の政府高官による投稿を一般公開より早く顧客に配信する。トランプ・メディアは7月、同サービスを企業向けのリアルタイムデータフィードとして発表していた。

訴状によると、同APIでは現在、トゥルース・ソーシャルで多くのフォロワーを持つ政府関連アカウント10件の投稿に迅速にアクセスできる。
対象には、トランプ大統領、JD Vance(JD・バンス)副大統領、Kash Patel(カシュ・パテル)米連邦捜査局(FBI)長官、Karoline Leavitt(キャロライン・レビット)ホワイトハウス報道官、Sean Duffy(ショーン・ダフィー)運輸長官、Robert F. Kennedy Jr.(ロバート・F・ケネディ・ジュニア)保健福祉長官、ホワイトハウス公式アカウント、スカビーノ次席補佐官などが含まれる。
Kevin McGurn(ケビン・マクガーン)暫定CEOは、8月10日に行われた同社の第2四半期決算説明会で、新たなトゥルースAPIを契約した顧客が10社を超えたことを明らかにした。
トランプ・メディアはまた、より高額な購読料を支払う顧客向けに、対象アカウントをさらに拡大する可能性も示している。
原告側は、トランプ大統領が政府の公式業務に関する主要な情報発信手段としてトゥルース・ソーシャルをますます利用するようになっていることから、同サービスは単なる商用データサービスの範囲を超えていると主張している。
訴状では、トランプ氏が軍事作戦や停戦、関税に関する決定、外交政策の変更、移民政策上の指示、政府機関幹部の任命や解任、そのほかの行政措置について、従来のホワイトハウスの情報発信ルートに先駆けてトゥルース・ソーシャルで発表した多数の事例が挙げられている。
さらに原告側は、トランプ氏の金銭的利害関係が前例のない利益相反を生み出していると主張している。裁判所への提出書類によると、トランプ氏はDonald J. Trump Revocable Trust(ドナルド・J・トランプ取消可能信託)を通じて現在もトランプ・メディアの筆頭株主であり、同社株式のおよそ41.4%を保有している。2024年の大統領選後には、保有株の評価額が一時40億ドル近くに達していた。
訴状はまた、トランプ氏の個人プロフィールから発信するSNS投稿について、まずトゥルース・ソーシャルに投稿し、その後6時間は同じ内容を他のSNSに再投稿しないとする契約条項がある点も指摘している。政府や政治に関する投稿などについては、この6時間の制限を回避できる例外が設けられている。
原告側は、こうした契約によって、大統領による公式な情報発信がトランプ氏の民間事業の商業的価値を高めるために利用されていると主張している。
原告側は裁判所に対し、この仕組みを違憲と認定するとともに、優先アクセスを有料で販売するプラットフォームを通じて、ホワイトハウス当局者が政府の公式発表を独占的に発信することを禁じるよう求めている。
報道の自由団体、法律専門家、議員らが「公職の濫用」と批判
今回の訴訟を巡っては、報道機関や憲法学者、民主党議員らから厳しい批判が出ている。
Seth Stern(セス・スターン)FPFアドボカシー責任者は、この仕組みについて、大統領自身が生み出すニュースへのアクセスを自ら販売するものだと指摘した。
「大統領自身が生み出すニュースへの優先アクセスを、自らが支配する民間企業の利益のために販売する行為は、あまりにも露骨に腐敗しており、違憲だ。ほんの数年前であれば、想像することさえ難しかっただろう」— セス・スターンFPFアドボカシー責任者
スターン氏はまた、このプログラムを市場の公正性と憲法修正第1条上の権利の双方を脅かす「厚かましい金もうけ」だと批判した。
Ben Muessig(ベン・ミューシグ)ジ・インターセプト編集長は次のように述べた。
「トランプ氏は、本来販売する権利のない政府情報を私物化することで、自ら利益を得ようとしている。われわれはこれを許さない」
Citizens for Responsibility and Ethics in Washington(シチズンズ・フォー・レスポンシビリティ・アンド・エシックス・イン・ワシントン:CREW)のNikhel Sus(ニケル・サス)首席法律顧問は、憲法上の問題は情報公開の遅延時間がどれほど短いかによって左右されるものではないと主張した。
「トランプ大統領が個人的な利益のために憲法を踏みにじること自体は今に始まったことではないが、今回の仕組みは常軌を逸している。すべての米国民には、大統領の公的発言に適時にアクセスする権利がある。それは大統領の会社に月額10万ドルを支払える人々だけに認められるものではない」
さらにサス氏は次のように付け加えた。
「憲法修正第1条で保障された基本的権利への制限について、『ごくわずかだから問題ない』という例外は存在しない」
Public Integrity Project(パブリック・インテグリティ・プロジェクト)のBrendan Ballou(ブレンダン・バルー)CEOも同様に、この取り組みについて、大統領による情報発信を巡る憲法上の問題として最も明確な事例の一つだと指摘した。
議員からも懸念が示されている。
Elizabeth Warren(エリザベス・ウォーレン)上院議員とAdam Schiff(アダム・シフ)上院議員は、7月29日に公表された米証券取引委員会(SEC)宛ての書簡の中で、この仕組みについて次のように述べた。
「一般投資家や市場の公正性を損なう一方で、ウォール街やその他の富裕なインサイダーを利する、大統領職を個人的利益のために利用した到底容認できない濫用だ」
Kathleen Clark(キャスリーン・クラーク)ワシントン大学セントルイス校(WashU)法学教授も、トランプ氏が大統領権限の行使によって生み出される情報への優先アクセスを不適切に収益化していると主張した。
トランプ・メディア、訴訟を「政治的動機に基づくもの」と一蹴
トランプ・メディアは今回の訴訟について、トランプ大統領と同社の双方を弱体化させようとする、政治的動機に基づく新たな試みにすぎないとして退けた。
「トランプ大統領からの情報は無数のプラットフォームや報道機関を通じて配信されており、その多くが有料APIを提供している。トゥルース・ソーシャルもそうしたチャネルの一つだ。トゥルース・ソーシャルは、大統領が不当にプラットフォームから排除された後、言論の自由を守り、排除されることのない場として設立された。いま左派の活動家らは、裁判所を不当に政治利用して再び大統領を検閲し、当社の株主に損害を与えようとしている」─ 広報担当者
マクガーン暫定CEOは同社の決算説明会で、トゥルースAPIが提供する投稿は他の配信経路より「ほんのわずかに早い」にすぎないとして、このビジネスモデルを擁護した。
マクガーン暫定CEOは、リアルタイムデータを商用ライセンスとして提供することは業界では一般的な慣行だと主張した。また、トゥルース・ソーシャルの投稿は公開された時点で直ちに一般公開情報となるため、インサイダー取引を巡る懸念は的外れだとの見解を示した。
さらに、追加の収益源として、予測市場運営企業に同社のデータをライセンス提供する可能性についても検討していることを明らかにした。
予測市場の反応は限定的、TRUMPは1.40ドル付近で過去最高値から約98%安
トゥルースAPIの収益化を巡り憲法上の問題が提起されたにもかかわらず、予測市場の反応は限定的となっている。
8月13日午前0時(CET)時点で、ポリマーケットにおける「ドナルド・トランプ氏が辞任・解任、その他の理由で2026年末までに大統領職を離れるか」を対象とする市場の確率は、7%の低水準で横ばいとなった。

同市場では、2025年11月5日の開始以降、累計取引高が約1050万ドルに達している。
一方、米国の規制対象予測市場Kalshi(カルシ)では、「トランプ氏が弾劾されるか」を対象とする別の市場が取引されている。
2027年1月1日までの弾劾を対象とする短期市場では、カルシのトレーダーが織り込む確率は3.5%にとどまり、日中では0.5ポイントの小幅上昇となった。
もう少し先の中期市場では、2027年3月1日までに弾劾される確率が23%と予測され、直近では1ポイント上昇した。

一方、2028年1月1日までの弾劾の可能性を対象とする長期市場では、確率が50%と最も高いものの、今回の訴訟後には5ポイント下落している。
また、CoinMarketCap(コインマーケットキャップ)のデータによると、TRUMPは過去24時間で5%下落し、1.40ドル付近で取引されている。
時価総額は約3億5000万ドル。価格は過去最高値75.35ドルから約98%下落している。

7月上旬には、ブロックチェーン分析会社Nansen(ナンセン)の分析で、TRUMP購入者が大規模な損失を抱えていることが報告された。
Nansenの分析によると、TRUMPを購入した約148万ウォレットのうち98万8905ウォレットが2026年6月末時点で損失を抱え、実現損と含み損の合計は約38億1000万ドルに達した。


