8月7日、約10年前からステーブルコインに携わってきた、ある業界団体のトップを取材した。
同氏によれば、当時はこの言葉がまだ一般には浸透しておらず、誰にも見向きもされなかった。
それが今では日経新聞などのメディアにも当たり前のように登場し、多くの人が話題にする。
その変化に「隔世の感」を覚えると語った。時代が大きく移り変わったと感じるときに使う言葉である。
隔世の感は、話題になる頻度の変化だけでなく、実務がどれだけ「当たり前」になったかにも表れる。8月7日には、それを別の角度から裏付ける出来事が二つ重なった。
一つは、弊誌編集長が公開した記事である。同記事は、前日6日にローソンが実施した国内初のPOSレジでのステーブルコイン決済実証の舞台裏を伝えた。
レシートには支払い方法として「stablecoin」と印字された。
象徴的な一行だが、決済ネットワークを担った事業者の社長は「○○Payを追加することとあまり変わらなかった」と語り、POSレジの改修もほとんど行わなかったと説明した。
利用者による支払いの手順も、既存のQRコード決済とほぼ変わらない。
もう一つは金融庁である。新設の「暗号資産・ステーブルコイン課」が、7日の人事発表とともに動き出した。

当局の組織図にこの名称が加わること自体、10年前には成立しない光景だ。しかし発表は、他の部局の人事と何ら変わらない通常の告知として行われた。
3つの出来事は、事象こそまったく違うものだが、同じ変化を映し出している。
取材で語られた隔世の感は「話題になる頻度」の変化であり、レシートの一行と組織図の一行は「実務での定着」を表す。
どちらも、10年前にはなかった状態がいま当たり前になっていることを示している点で一致する。
技術が根づいていく過程では、驚きと日常が同じ瞬間に同居する時がある。
あるところでは大きな感慨として語られ、あるところではレシートや組織図の一行として淡々と刻まれる。
両方が同時に起きている、その瞬間を、8月7日に見た気がした。
|文:栃山直樹
|画像:ローソンのレシート(撮影:NADA NEWS編集部)


