日本がドル建てステーブルコイン「RLUSD」承認──重要なのは「生まれた場所」ではなく「取引される場所」【エバーノース寄稿】

1950年代、米ドルにとって最も重要な市場は、大西洋を越えてロンドンへと移った。ドルの発行自体は今も昔もワシントンが担っているが、世界中がドルを借り、取引する巨大な市場──ユーロダラー市場──は、大西洋を隔てた1ドルたりとも自ら刷ることのできない都市で発展した。

当時のロンドンの銀行は、米国内の規制よりも自由にドル建ての預金金利や貸出金利を設定できた。わずか20年ほどで市場規模は数千億ドルへと膨らみ、ロンドンを再び金融の中心地へと押し上げる一因となった[1]。この教訓は今も色あせない。通貨が発行される場所と、その通貨が最も活発に機能する場所は、必ずしも一致しないのだ。

こうした歴史を思い起こしたのは、ある出来事がきっかけだった。

金融庁は6月24日、リップル社のドル建てステーブルコイン「RLUSD(Ripple USD)」について、日本の規制の枠組みの中での運用を認めた。外国発のドル建てステーブルコインとして初めて日本の同等性審査を通過し、SBIを通じて機関投資家・個人投資家の双方に提供されることになる[2]。

この動きを、ドル建てステーブルコインと円建てステーブルコインの競争として捉えたくなるかもしれない。だが本当に重要な問いは、日本のような市場が門戸を開いたという事実が、何を意味するのかということだろう。

日本は、手の届かないドルを求めて奔走するような新興市場ではない。世界有数の対外純資産国であり、最も厳格な部類に入る金融規制当局を擁し、銀行への信頼も厚い国だ。

〈エバーノースCEOのアシーシュ・ビルラ(Asheesh Birla)氏:NADA NEWS編集部撮影〉

今年、野村が日本の投資専門家518人を対象に実施した調査によれば、資金管理や越境決済、外国為替取引などですでにステーブルコインの具体的な活用法を見出している回答者が63%にのぼる一方、依然として銀行発行のコインに最も厚い信頼を寄せていることも示された[3]。

これほど慎重な市場が、規制対象のドルをパブリックブロックチェーン上で扱うために新たな法的枠組みを整えたということは、周辺的な実験などではない。金融がこれからどこへ向かうのかを示すシグナルなのだ。

このシグナルに重みを与えているのは、規制対象のドルがオンチェーンに乗った瞬間に何が起きるかという点だ。ドルは動き出す。取引され、決済され、これまで数日かかっていた国際送金をわずか数秒で完了させる。そのひとつひとつが、ネットワーク上の取引として記録されていく。

ステーブルコインそのものが商品なのではない。それが引き起こす活動こそが本質なのだ。

私たちはその活動をずっと追跡してきたが、その規模はすでに無視できないものになっている。XRPレジャー上では今年の春、ドル建てステーブルコインの決済額が単月で50億ドルを突破し、18カ月前の約75倍に達した。

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これらのドルペアを通じた累計取引額は25億ドルを超え、1年半前には存在しなかったこのドル市場は、いまや半年ごとに約10億ドル規模の決済を処理している[4]。規制対象のドルがネットワークを見つけ、そこで動き始めると、こうしたことが起きるのだ。

ここで、話は再びロンドンに戻る。

RLUSDは日本ではイーサリアム上でローンチされた。発行の場としては、理にかなった選択だ。しかし、発行はあくまでスタートラインであって、安住の地ではない。今の流動性の動き方は、当時のユーロダラーとよく似ている。

トークンがどこで発行されたか、誰の名前がついているかにはお構いなしに、取引執行が最も厚く、最もコストの低い場所へと集まっていくのだ。流通するRLUSDの過半、約51%(2カ月前の17%から増加)はいまやXRPレジャー上にあり、その中でも最も厚みのある市場はXRP建てのペアである[5]。市場は、いつものように、自らその居場所を見つけたのだ。

日本にとっての意味合いは、単なる取引の話をはるかに超える。

円安が続くなか、利回りを求める巨額の貯蓄基盤を抱え、海外資産にも数兆ドル規模を投じている一方で、越境決済インフラは、効率性で定評のある国内決済網に比べると、依然として遅くコストも高い。

オンチェーンで機能する規制対象ドルとは、つまるところ「アクセス」の物語である。

日本の企業や個人が、メッセージを送るのと変わらない手軽さで、ドル建ての貯蓄や決済にアクセスできるようになるということだ。日本のメガバンクがいま構築を進める円建てステーブルコインと並べて考えると、より大きな構図が見えてくる。ドルと円がともにオンチェーンで決済され、その間で価値を運ぶ中立的な「レール」こそが最も重要な地位を占める──そんな市場だ。日本はいままさに、その部品を組み立てている最中である。

次に何をどこに築くべきかを見極めようとする人々にとって、データはすでに答えを示しつつある。流動性はXRPネットワークに集まり、そこでドル市場が成熟しつつあるのだ。これが、Evernorthとして私たちが立っている視点であり、日本の承認を結論ではなく出発点として捉える理由でもある。

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流動性がどこに集まるのか、そこに目を向けてほしい。かつてのユーロダラーがそうだったように、重心はすでにそちらへと動き始めている。

【脚注】
[1] 1950年代後半からロンドンで形成され始めたオフショア(ユーロ)ドル市場。その背景には、米国の預金金利の上限規制(レギュレーションQ)や、オフショアにおけるドル取引をより自由にしたその他の制約が一部あった。1970年代までにその規模が数千億規模にまで拡大した経緯については、国際決済銀行(BIS)のユーロドル市場の歴史に関する資料を参照のこと。

[2] Ripple、「RippleとSBIグループが提携し、日本で『Ripple USD(RLUSD)』をリリース」、2026年6月、ripple.com;NADA NEWS、「SBI VCトレード、ステーブルコイン「RLUSD」の取り扱いを開始」、2026年6月24日、NADA NEWS。RLUSDは、金融庁の「同等性枠組み」に基づき、日本で初めて承認された海外発行のドル建てステーブルコインとして認可され、SBI VCトレードを通じて提供されることになった。

[3] 野村ホールディングス、「野村とレーザー・デジタル、デジタル資産投資動向に関する2026年機関投資家調査を発表」、2026年4月16日、野村ホールディングス。日本の投資専門家518名を対象とした調査(2025年12月16日~2026年1月29日に実施)。回答者の63%が、資金管理や国境を越えた決済・外国為替取引など、ステーブルコインの潜在的な活用事例を挙げた。また、日本円、米ドル、ユーロの各通貨において、大手金融機関が発行するステーブルコインが最も高い信頼を得た。

[4] Evernorth、「XRP上のRLUSD:ネットワークの成長エンジンとなるか?」、2026年6月30日、evernorth.xyz。Dune Analyticsのデータに基づく数値:XRP上の直接決済で清算されたRLUSDは、約6,800万ドル(2024年12月)から約50億8,000万ドル(2026年5月)へと増加した。ローンチ以来のRLUSDペアの累積取引高は25億ドルを超え、過去6ヶ月間のRLUSD/XRPペアの清算額は約9億ドルに達した。

[5] Evernorth、「XRP上のRLUSD:ネットワークの成長エンジンとなるか?」、2026年6月30日(Dune Analytics)。XRP上のRLUSDの流通供給量は、2026年4月の約17%から、2026年6月には約51%に達した。

|文:Evernorth CEO・アシーシュ・ビルラ(Asheesh Birla)
|翻訳・編集:NADA NEWS編集部
|トップ画像:Adobe Stock

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