日本円ステーブルコイン「JPYC」を手がけるJPYCは7月22日、物流大手AZ-COM丸和ホールディングスとの資本業務提携を発表した。
両社はJPYCを活用した決済プラットフォームの構築やウォレットアプリの提供、配送完了と連動したスマートコントラクトによる自動決済などを段階的に進める方針を示した。
リリースでは「決済プラットフォームの構築」や「独自ウォレットアプリの提供」といった取り組みが盛り込まれており、JPYCがステーブルコイン発行会社からソリューション提供にも踏み出すようにも読める。
これまで「発行元」としてのスタンスを表明してきたJPYCが、ソリューション提供にも乗り出すのか──。NADA NEWSの質問に対し、代表取締役の岡部典孝氏は、「JPYCが個社向けの開発やコンサルティングを大々的に展開する考えは現時点ではない」と説明した。
開発主体はパートナー企業
岡部氏によると、ステーブルコイン関連の開発支援やコンサルティングは定款上の事業範囲に含まれているものの、実際のシステム開発はJPYCの導入実績を持つウォレット企業や外部パートナーが中心になるという。
一方、JPYC自身は、ステーブルコインを社会実装する際の規制や商慣習、標準仕様の整備に注力する考えだ。
岡部氏はこれまで、ブロックチェーン推進協会(BCCC)の副代表や日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)の理事として制度整備にも関わってきた。
「オンチェーン金融」の社会実装へ
岡部氏は今回の提携について、政府が掲げる「オンチェーン金融」の具体化につながる取り組みと位置付けた。
2026年の「骨太の方針」では、オンチェーン金融について、ステーブルコインやトークン化預金による資金決済と、商流・物流などのデータ管理をプログラムによって連動・一体化する金融と位置付けられた。
これを踏まえ、岡部氏は「ステーブルコインを使って商慣習はこう変わる、という骨格をJPYCは提示できる」と説明。AIエージェントとステーブルコインを組み合わせることで商慣習が大きく変わるとの構想を以前から提唱してきたとしたうえで、「言い出した責任があり、社会実装を推進しなければならない」と語った。
また、その基盤技術として、自社が保有する「インボイスNFT」の基本特許を挙げ、今後はオープンに公開していく方針も明らかにした。
「Pay」を囲い込む考えはない
岡部氏は決済プラットフォームの在り方についても、「JPYC専用」のエコシステムを目指すものではないと説明した。
「どれか一つのPayに加盟していれば、JPYCでもUSDCでも、世界中のステーブルコインで支払えるのが健全な姿だ」と述べ、JPYC自身が独自のPayサービスを展開すれば、「他社の社会実装の妨げ」になる可能性があるとの認識を示した。
その上で、決済事業者や加盟店が、JPYC決済に送料無料や割引などのインセンティブを付与できる環境整備を進め、市場競争を促したい考えを明らかにした。
「社会実装の設計者」へ
今回のAZ-COM丸和との提携は、物流会社へのステーブルコイン導入にとどまらない意味を持つ。
JPYCは、自らシステムを囲い込むのではなく、パートナー企業とともに商慣習や標準仕様を整備し、ステーブルコインが社会インフラとして利用されるための基盤づくりを目指している。
岡部氏は、「今回のAZ-COM丸和さんのような出資者とともに商慣習の骨格を作るところに参加し、商慣習を変えるという、まさに社会のジレンマを突破したいと思います」と語った。
物流業界を起点に、ステーブルコインを前提とした新たな商慣習が広がるのか。今回の提携は、「オンチェーン金融」の社会実装を占う一つのモデルケースとなりそうだ。
取材・撮影(WebX 2026に登壇中の岡部氏):増田隆幸


