● 暗号資産市場では、価格だけでは市場の本当の姿を把握することはできない。近年はETFや機関投資家の参入により、オンチェーンデータを活用した分析の重要性が高まっている。
● 今回は、CryptoQuantで市場分析を行う際に最初に確認したい4つの基本指標「MVRV Ratio」「NUPL」「Realized Price」「Puell Multiple」を解説する。これらは市場サイクルや投資家心理を把握するうえで欠かせない指標である。
● エックスウィンでは、現在のビットコイン市場は2025年の強気相場とは異なり、過熱感が大きく後退した「次のサイクルを探る局面」にあると考えている。
ビットコイン市場について、「これから上がるのか、それとも下がるのか」という質問を受けることは少なくありません。
しかし、プロの市場分析では、最初から価格だけを見ることはほとんどありません。
まず確認するのは、「市場全体がどのような状態にあるのか」です。
現在の市場は過熱しているのか。それとも悲観が広がり、底値圏に近づいているのか。これを判断するために活用されるのがオンチェーンデータです。
オンチェーン分析とは、ブロックチェーン上に記録された取引データから、投資家の利益状況や行動、市場全体のサイクルを分析する手法です。
今回は、CryptoQuantで最初に確認したい4つの代表的な指標をご紹介します。
市場は割高なのか、それとも割安なのか

最初に確認するのがMVRV Ratioです。
MVRVは「現在の時価総額」と「すべての保有者が取得した価格(Realized Value)」を比較する指標で、市場全体のバリュエーションを判断するために使われます。
株式市場で例えるならPER(株価収益率)のような存在と言えるでしょう。
MVRVが高いほど、市場参加者全体が大きな含み益を抱えている状態になります。利益が十分に積み上がると利益確定売りが増えやすくなり、市場は過熱局面に入りやすくなります。
一方、MVRVが低下すると市場全体の利益は縮小し、過去のサイクルでは底値圏を形成する局面も数多く見られました。
今回のチャートでは、2025年の高値局面で2倍を超えていたMVRVが、現在は約1.2倍まで低下しています。
これは市場全体として利益は残っているものの、昨年のような過熱感は大きく後退していることを意味しています。
市場全体はどれだけ利益を抱えているのか

次に確認するのがNUPL(Net Unrealized Profit/Loss)です。
MVRVが市場全体の評価を見る指標であるのに対し、NUPLは市場参加者全体の「含み益」と「含み損」の割合を示します。
言い換えれば、市場全体の投資家心理を数値化した指標です。
多くの投資家が大きな利益を抱えている局面では、「そろそろ利益を確定しよう」という心理が働きやすくなります。
逆に利益が小さい局面では売却圧力も弱まり、市場は新たな材料を待つ展開となります。
現在のNUPLは約0.16と、2025年の強気相場と比較するとかなり低い水準にあります。
これは市場全体の利益が縮小し、楽観ムードが後退していることを示しています。
一方でマイナス圏には入っておらず、2022年のような全面的な悲観相場とも異なります。
つまり現在は、「強気でも弱気でもない、中立的な局面」と考えることができます。
市場全体の平均取得価格を知る

Realized Priceは、現在市場に存在するすべてのビットコインについて、最後に移動した価格を平均したものです。
つまり、市場全体の平均取得価格とも言える指標です。
現在のRealized Priceは約53,000ドル付近まで上昇しています。
現在のビットコイン価格は約64,000ドル前後で推移しており、市場全体としては依然として平均取得価格を上回っています。
これは、多くの保有者がまだ利益圏にあることを意味しています。
一方で、価格がRealized Priceへ近づく局面では、市場全体の利益が急速に縮小し、投資家心理も悪化しやすくなります。
そのため、Realized Priceは長期的なサポートラインとしても注目される重要な指標です。
マイナーは売り始めているのか

最後に紹介するのがPuell Multipleです。
これはビットコインの新規発行量と価格から、マイナー(採掘事業者)の収益状況を分析する指標です。
マイナーはビットコイン市場における最大級の供給者です。
収益が大きく改善すると利益確定のために保有するビットコインを売却する傾向があり、反対に収益が悪化すると売却できる数量も減少します。
そのため、Puell Multipleは「マイナーからの売り圧力」を判断する重要な指標として利用されています。
現在は約0.6付近と比較的低い水準にあり、マイナー収益は2025年の強気相場ほど高くありません。
これは現時点でマイナーから大規模な売り圧力が発生している状況ではないことを示しています。
◆まとめ
今回ご紹介した4つの指標は、それぞれ異なる角度からビットコイン市場を分析しています。
MVRV Ratioは、市場全体が割高なのか、それとも割安なのかを判断する指標です。NUPLは、市場参加者全体がどれだけ利益を抱えているのかを示し、投資家心理を読み解くことができます。Realized Priceは、市場全体の平均取得価格を示し、長期的なサポートラインとして意識される重要な水準です。そしてPuell Multipleは、マイナーの収益状況から、新規供給による売り圧力を把握する役割を担っています。
重要なのは、これらの指標を単独で見るのではなく、組み合わせて判断することです。
例えば、
・MVRVが高く、NUPLも高い
・価格がRealized Priceから大きく乖離している
・Puell Multipleも高く、マイナー収益が大きく改善している
このような状況であれば、市場全体に利益が積み上がり、利益確定売りが出やすい「過熱局面」である可能性が高まります。
反対に、
・MVRVが低い
・NUPLも低く、市場全体の利益が縮小している
・価格がRealized Priceに近づいている
・Puell Multipleも低く、マイナーの売り圧力が限定的である
このような局面では、市場全体の過熱感は解消され、長期投資家にとっては次のサイクルへ向けた準備期間となるケースも少なくありません。
もちろん、これら4つだけで相場の方向性が決まるわけではありません。しかし、「市場全体は今どのような状態なのか」という大きな流れを把握するうえでは、非常に有効な指標です。
エックスウィンでは、まずこの4つの指標で市場サイクルを確認し、そのうえでETF資金フロー、取引所への資金移動、クジラの動向、先物市場のレバレッジなどを組み合わせ、多角的に市場を分析しています。
現在の4つの指標を総合すると、2025年のような強い過熱感は見られず、市場全体は利益が縮小した「調整・蓄積局面」にあると考えられます。夏相場は方向感が出にくい時期でもありますが、このような局面だからこそ、価格だけではなく、市場構造そのものを理解することが重要になるでしょう。
次回は、「SOPR」「Exchange Netflow」「Exchange Reserve」「Exchange Whale Ratio」を取り上げ、実際に市場で「誰が売り、誰が買っているのか」という資金の流れをオンチェーンデータから読み解いていきます。
■ショート動画
【オンチェーン分析①】市場の現在地が分かる4つの基本指標
https://youtube.com/shorts/jv4BM9yUkRc


