・開発チームが、Orchardで確認された偽造につながる脆弱性を修正し、供給量の検証可能性を回復する新たなシールドプール「Ironwood」の導入に向けた進展を公表したことを受け、Zcashは10%上昇した。
・ZECの流通量は約1676万枚となり、発行上限2100万枚の約79.8%に達した。
・取引高は約40%増加して6億ドルに達した。一方、予測市場では、700ドルに向けて再び上昇する可能性に慎重な見方が続いている。
Zcash、Orchardの脆弱性修正を受け、供給量の整合性を検証する新シールドプール『Ironwood』の導入計画を発表
Zcashは7月7日、10%を超える上昇を記録した。Orchardで確認された脆弱性への対応として、新たなシールド取引プール「Ironwood」の導入に向けた開発・検証が進展したことが材料となった。
プライバシー重視型暗号資産として最大規模とされるZECは、プロトコルのアップグレード発表後の数時間で500ドル付近まで上昇し、時価総額は85億ドルに達したが、その後は上値を抑えられた。

Ironwoodの導入は、Shielded Labsのセキュリティ研究者テイラー・ホーンビー氏が先月、Orchardで検知不能な偽造を可能にする欠陥を発見したことを受けたものだ。ただし、開発チームは、この欠陥が攻撃者に悪用された証拠は確認されていないとしている。
一方、この脆弱性の性質上、偽造されたコインが実際に生成されたかどうかを、コミュニティーが決定的に証明することはできなかった。Zcashのプライバシー設計では、取引残高が意図的に秘匿されているためだ。
こうした不確実性を解消するため、開発チームは脆弱性を恒久的に取り除いた新たなシールドプールとしてIronwoodを導入する計画を発表。
IronwoodはOrchardとは異なり、過去の取引履歴を引き継がない状態で運用を開始する予定だ。ユーザーは「ターンスタイル」と呼ばれるプロトコル機能を利用し、OrchardからIronwoodへ任意で資金を移動できるようになる。
Ironwoodが有効化されると、ユーザーは資金移行を待たずに、コンセンサスルールに基づいてZECの流通量が上限を超えていないことを検証できる。さらに、移行が進む中で上限を超えるZECが旧Orchardプールから出ようとしなければ、脆弱性が悪用されていなかったことを示す強い証拠となる。
開発チームは、旧Orchardプールに新たなアウトプットを作る取引を無効化する予定だ。これにより、旧プール内のZECはターンスタイルを通じて外部へ移動することだけが可能となり、誰でも流通量が上限を超えていないことを検証できるようになる。
Zcashの開発チームは、従来のコードレビューだけに依存するのではなく、特定の種類のプロトコルエラーを導入前に排除するため、数学的証明を用いた形式検証と独立監査を進めている。
Ironwoodへのアップグレードは、Zcashが2016年にローンチして以来、複数回にわたって実施してきた包括的なセキュリティー強化の新たな段階に当たる。
Zcashの上昇がプライバシーコイン市場全体に波及し、Moneroも2.5%上昇した。XMRは330ドルを上回って取引され、時価総額は62億5000万ドルに達した。
Zcashの流通量が発行上限の約80%に
CoinMarketCap上の流通量は約1676万ZECとなり、発行上限2100万ZECの79.8%に達した。Zcashの発行上限は、ビットコインと同じ2100万枚に設定されている。
約80%に達したことは、最終的に発行されるZECの大半が、すでに市場に流通していることを意味する。ビットコインと同様に、ZECの新規発行量は定期的な半減期を通じて徐々に減少し、毎年市場に供給される新規採掘分も少なくなっていく。
Zcashでは、168万ブロックごと、おおむね4年ごとにブロック報酬が半減する。半減期を迎えるたびに、1ブロック当たりに新規発行されるZECの数量は50%減少する。

Zcashの発行スケジュールに基づくと、残る約420万ZECは今後数十年をかけて徐々に採掘され、半減期を迎えるたびに新規発行量が減少する。
現在のネットワークは、2024年11月から2028年後半までのEra 3にある。現在のブロック補助は1ブロック当たり1.5625 ZECで、このうち80%がマイナーに配分される。年間の供給増加率は現時点で概算約3.9%となる。
次回の半減期は2028年後半に予定されており、ブロック報酬は1ブロック当たり0.78125ZECに減少する。年間の新規発行量は約32.9万ZECとなり、半減直後の供給増加率は概算で約1.8%となる。
さらに、2032年ごろに予定される次の半減期では、新規発行量が1ブロック当たり0.390625ZECまで減少する。
投資家は、Ironwoodの発表と流通量が発行上限の約80%に達したことを好感した。CoinMarketCapによると、過去24時間の取引高は約40%増加し、およそ6億ドルに達した。プロトコルのアップグレードに伴って投機的な買いが入ったことを示している。
過去1年間に1000%超上昇したZEC、予測市場では2026年後半の上昇期待が後退
今回のプロトコルアップグレードによって短期的な買い意欲が明確に回復した一方、予測市場では、2026年後半にかけてZECの上昇が長期化する可能性について、トレーダーは依然として慎重な見方を示している。

Polymarketの参加者が見込む、ZECが2026年末までに700ドル以上へ上昇する確率は現在33%にとどまる。700ドルを対象とする契約の累計取引高は約3万3000ドルとなっているものの、達成確率は低く見積もられている。
市場では、800ドルに到達する確率は17%、900ドルを超える確率は20%と見積もられている。
注目すべき点として、主要な上昇目標価格に対する予想確率は、ここ数週間でいずれも2桁の割合で低下している。これは、再び持続的な上昇局面に入るとの期待が後退していることを示す。
こうした慎重な見方の背景には、Zcashが上半期に極めて大きく上昇したことがある。ZECは過去1年間で1000%を超える上昇を記録し、2026年5月には一時670ドル付近まで値上がりしたものの、その後は暗号資産市場全体の逆風を受けて下落した。


