ビットコインは弱気相場入りするのか──APAC最大の資産運用会社、Amber Groupが示すアジアの暗号資産流動性の変化【エックスウィン】

● APAC最大級のデジタル資産運用会社であるAmber Groupは、6月の暗号資産市場について「極めて不安定な局面」と分析している。米国の雇用統計が市場予想を上回ったことで利下げ期待が後退し、世界的にリスク資産から資金が流出している。
● ビットコインETFからは継続的な資金流出が発生しており、機関投資家の資金流入ペースも鈍化している。一方で香港のトークン化債券、日本のブロックチェーン金融、韓国のステーブルコインなど、APAC地域では実需ベースのインフラ整備が進んでいる。
● エックスウィンが分析するオンチェーンデータでは、アジア時間帯のUSDT供給量が増加を続けており、市場流動性の重心が徐々にAPACへ移行している可能性も見え始めている。短期的な価格調整と中長期的な成長トレンドは分けて考える必要がある。

暗号資産市場が大きく調整する中、アジア太平洋地域(APAC)の機関投資家はどのように市場を見ているのでしょうか。

その参考になるのが、シンガポールを拠点とするAmber Groupです。Amber Groupは機関投資家向け運用やマーケットメイクを手掛けるAPAC最大級のデジタル資産金融グループであり、多くの機関投資家やプロ投資家が同社のレポートを参考にしています。

Amber Groupの最新レポートによると、現在の市場の最大のテーマは「高金利の長期化」です。

米国の雇用統計が市場予想を上回ったことで、FRBによる利下げ期待は大きく後退しました。市場では「高金利の長期化」が改めて意識され始めており、その結果として米国債利回りとドル指数が上昇しています。

こうした環境では投資家はリスク資産を減らし、現金比率を高める傾向があります。実際にビットコインは主要な上昇トレンドラインを割り込み、一時6万ドル近辺まで下落しました。

さらに機関投資家の資金動向にも変化が見られています。

今年前半まで市場を支えていた米国の現物ETFには資金流出が続いており、Amber Groupはこれを機関投資家需要の鈍化として警戒しています。市場参加者の間ではマイケル・セイラー率いるStrategyの一部売却も話題となりましたが、本質的にはETF資金流出と高金利環境によるリスク回避姿勢が市場全体を圧迫していると考えられます。

一方で、エックスウィンが独自に分析しているオンチェーンデータからは、別の興味深い変化も見えてきます。

添付の「アジアと米国におけるステーブルコイン供給量および供給比率の比較」データを見ると、アジア時間帯におけるUSDT供給量は過去数年にわたり増加を続けており、現在では米国時間帯の供給量に匹敵、あるいは上回る水準に達しています。

2020年頃は米国主導だった暗号資産市場ですが、近年はアジア発の流動性が市場を支える構造へと徐々に変化している可能性があります。

これはAmber Groupのレポートで指摘されているETF資金フローの減速とは異なる視点から市場を捉えるものであり、エックスウィンでは流動性の供給源にも注目しています。

米国では高金利環境の影響からビットコインETFを通じた資金流入が鈍化している一方で、アジアではステーブルコインを活用した資金供給が拡大している可能性が示唆されています。

もちろん、ステーブルコイン供給量の増加が直ちにビットコイン価格の上昇を意味するわけではありません。しかし、市場の流動性がどこから生まれているのかを考える上で、この変化は重要な観察ポイントの一つと考えています。

今後の暗号資産市場は、米国ETFだけでなく、アジア圏の資金動向にも大きく左右される局面に入りつつあるのかもしれません。

また、APAC地域では別の動きも進んでいます。

香港金融管理局はトークン化債券を推進し、日本では金融資産のブロックチェーン化が進みつつあります。韓国でもウォン連動型ステーブルコインの開発が進展しており、アジア各国はデジタル資産を単なる投機商品ではなく金融インフラとして取り込む方向へ動いています。Amber Groupもこうした流れを重要な市場テーマの一つとして取り上げています。

つまり、短期的には市場心理の悪化によって価格が下落しているものの、中長期的なインフラ整備はむしろ加速している状況です。

市場が最も注目しているのは、6月後半に予定されている米国金融政策関連イベントです。現在の下落は暗号資産固有の問題というよりも、世界的な流動性縮小の影響が大きいと考えられます。

そのため今後のビットコイン相場を考える上では、オンチェーンデータだけでなく、米国金利・ドル指数・ETF資金フロー、そしてAPAC地域の流動性動向を合わせて確認することが重要になるでしょう。

市場が弱気になると、投資家は価格だけを見てしまいがちです。しかし本当に重要なのは、その裏側で何が起きているかです。

現在はETF需要の減速や高金利による資金流出が続いていますが、同時にアジアではトークン化やステーブルコインなど次世代金融インフラの整備が着実に進んでいます。

価格と技術発展は必ずしも同じ方向には動きません。むしろ市場が悲観的な時期こそ、将来の成長につながる変化が進んでいることも少なくありません。

短期の値動きだけでなく、市場構造の変化にも注目していきたいところです。

■ショート動画

【APAC最大手Amber Groupが分析】ビットコイン急落の裏で起きていること
https://youtube.com/shorts/D2s-WmIF-Aw

■オンチェーン指標の見方

アジアと米国におけるステーブルコイン供給量および供給比率の比較

このチャートは、アジアと米国のどちらが暗号資産市場へ流動性を供給しているかを示しています。近年はアジア時間帯のUSDT供給量が大きく増加しており、市場の流動性の重心が米国からアジアへ移りつつある可能性があります。一方で米国ではETF資金流出が続いており、機関投資家の資金流入は鈍化しています。これは、現在の暗号資産市場が「米国ETF主導」から「APAC流動性主導」へ変化し始めている可能性を示す興味深いデータです。

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