暗号資産の税率は「どこで売るか」で決まる──経路選択と“交換”の落とし穴【泉税理士の「分離課税」解剖連載②】
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ついに法案が成立し、2028年の適用開始が見込まれる暗号資産の「分離課税」。しかし、「これで税率が一律20%になって安心だ」と考えるのは早計だ。

実は、新税制では「どこで暗号資産を売るか(譲渡経路)」によって、税率20%の分離課税になるか、最大55%の総合課税になるかが決まるという、極めて重要なルールが存在する。

連載「泉税理士が読み解く!暗号資産『分離課税』のリアル」の第2回では、租税法に詳しい泉絢也税理士の解説をもとに、投資家が必ず知っておくべき「経路選択」のルールと、多くの人が勘違いしている「暗号資産同士の交換」に関する税金の落とし穴を解説する。

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本記事は、泉税理士のブログ記事「暗号資産の分離課税と取引経路―『どこで売るか』が課税方式を決める」を元に、NADA NEWS編集部で要約・再構成したものです。
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課税方式は「どこで売ったか」で決まる

今回の税制改正で最も実務的に重要なのが、「分離課税の適用は『譲渡時』に判定される」という点だ。

分離課税(20%)が適用されるためには、売却する暗号資産が「特定暗号資産」であることに加え、「国内の暗号資産取引業者を通じて譲渡したか」という取引経路の要件を満たす必要がある。

つまり、同じビットコインであっても、国内取引所で売却すれば「分離課税(20%)」になるが、海外取引所やDEX(分散型取引所)で売却すると「総合課税(最大55%)」になってしまうのだ。

逆に言えば、「取得時の経路」や「取得時期」は関係ない。これについて、泉税理士は次のように解説している。

【泉税理士の解説:取得経路と取得時期は無関係】

「分離課税の適用の有無は、特定暗号資産を取得した場所ではなく、譲渡の相手方・経路で判定されます。したがって、DEXや海外取引所で購入した暗号資産であっても、売却時に国内の暗号資産取引業者を通じて行えば、分離課税の対象となります。

また、取得の時期も問われません。改正前に購入して長期保有していたビットコインも、適用開始日以後に国内取引所で売却すれば分離課税が適用されます」

投資家は自身の状況に応じて、「国内で売って分離課税にするか」「あえて海外やDEXで売って総合課税にするか」を選択(経路選択)することが可能になる。

「円転しなければ非課税」はウソ

経路選択を考える上で、絶対に知っておかなければならないルールがある。それは「暗号資産同士の交換も課税対象(譲渡)になる」ということだ。

「法定通貨(円など)に換えなければ税金はかからない」と誤解している投資家もいるが、これは大きな間違いである。

例えば、海外取引所で購入した「非特定暗号資産(分離課税の対象外のアルトコインなど)」を、同じ海外取引所で「ビットコイン(特定暗号資産)」に交換し、それを国内取引所に送金して売却した場合を考えてみよう。

最終的に国内取引所で売却しているのだから、すべて分離課税(20%)になりそうに思えるが、実際はそうではない。

【泉税理士の解説:暗号資産同士の交換は課税イベント】

「暗号資産同士の交換はそれ自体が税務上の『譲渡』に該当し、含み損益が清算されます。

例えば、海外取引所で非特定暗号資産をビットコインに交換した時点の利益は、『総合課税』の対象となります。ビットコインという特定暗号資産を取得する取引であっても、譲渡したのが非特定暗号資産である以上、分離課税は適用されません」

つまり、「アルトコイン→ビットコイン」の交換時点で一度総合課税(最大55%)の利益が確定してしまい、その年の確定申告が必要となる。

ウォレット間の移動にも課税リスク

さらに泉税理士は、単なる資金の移動であっても注意が必要だと警鐘を鳴らす。

【泉税理士の解説:移管時のリスク】

「自己のウォレット間・口座間での暗号資産の移管は原則として譲渡に該当しませんが、移管の過程で別トークンへの変換(ラップトークン化、クロスチェーンブリッジ、ステーブルコイン交換など)が介在すると、それぞれが独立した課税イベントとなる可能性があります」

DeFiなどを触っているユーザーであれば、ネットワークをまたぐためのブリッジやラップドトークン(WBTCなど)への変換は日常茶飯事だろう。

国税庁はこの点に関する公式見解を明らかにしていないが、これらも税務上は「別の資産への交換(=譲渡)」とみなされ、意図しないタイミングで課税が発生するリスクがあるのだ。

まとめ:経路と仕組みを理解して備えよう

分離課税が導入されても、「すべてが自動で20%になる」わけではない。

  • どこで売るか(経路選択)で税率が変わる
  • 暗号資産同士の交換はすべて課税対象

この2つの大原則を理解し、今のうちから自身の取引履歴やポートフォリオを見直しておくことが、来るべき新税制への備えとなるだろう。

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■ 監修者プロフィール・元記事のご案内

さらに詳しい「具体的な計算例」や「総平均法を用いた場合の経路選択の注意点」などについては、泉先生のブログ記事本編にて詳細に解説されています。ぜひ併せてご覧ください。

▼元記事を詳しく読む

暗号資産の分離課税と取引経路――「どこで売るか」が課税方式を決める

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暗号資産の申告率は1.76%──日本は19.78%で突出、なぜ世界1位なのか【専門税理士の「分離課税」解剖連載①】

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▼監修者プロフィール

泉 絢也(いずみ じゅんや)

税理士・東洋大学法学部教授、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)税制部会顧問。元国税職員(国税調査官)。博士(会計学・中央大学)。専門は租税法。暗号資産・NFTの税務、AIと税務、税務調査を主な研究テーマとする。著書に『事例でわかる!NFT・暗号資産の税務〔第2版〕』(中央経済社・共著)、『パブリックコメントと租税法』(日本評論社・単著)など。

|編集:栃山直樹
|画像:NADA NEWS制作

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