暗号資産の分離課税、「歓迎一色」ではない──少額投資家は増税も? 対象銘柄・実務負担の論点

暗号資産(仮想通貨)の分離課税は、必ずしもメリットばかりではない。投資家の属性や利益水準によっては、現行制度より不利になる可能性もある。

4月21日に開催されたブロックチェーン推進協会(BCCC)のイベントで、税理士法人ファシオ・コンサルティング代表の八木橋泰仁氏と、村上裕一公認会計士事務所所長の村上祐一氏は、今回の税制改正を評価しつつも、まだ「法律が通っただけ」だと指摘。具体的な内容は「まだこれから検討」であり、必ずしもすべての投資家にメリットがあるわけではないと述べた。

3月31日、暗号資産の分離課税導入を含む「所得税法等の一部を改正する法律」が成立。これまで最大55%の総合課税となってきた暗号資産取引について、一定の条件下で20%の申告分離課税が適用されることとなった。

だが、すでに解説記事で伝えたように、対象は「特定暗号資産」に限られる。しかも「特定暗号資産」の定義はまだ固まっていない。

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対象銘柄は限定的になる可能性も

〈税理士法人ファシオ・コンサルティング代表の八木橋泰仁氏〉

八木橋氏は「運用は法律だけでは決まらない。今後、当局が出す通知や通達などで決まっていくが、まだ先だ」と述べた。

そして、特定暗号資産について、YouTubeで「魔界の税理士ちゃんねる」を運営する村上氏は「対象となる暗号資産の銘柄がかなり限定されるのではないか」との見方を示した。八木橋氏も「国内で上場していることが前提になる」ものの、すべてが認められるとは限らないのではと述べた。

業界の自主規制団体は、国内に上場している銘柄すべてが分離課税の対象となるよう求めている。だが八木橋氏は「国が分離課税を認めるということは、国として金融資産として優遇するという話になる」と述べ、その際には「市場性が重要になる」と指摘した。端的に言えば、取引高の小さい銘柄までを含めて、国内上場銘柄のすべてが一律に優遇対象となるとは限らないという見方だ。

多くの投資家は不利になる?

さらに税率面でも、必ずしもすべての投資家にメリットが生まれるわけではないという。

〈YouTubeで「魔界の税理士ちゃんねる」を運営する村上裕一公認会計士事務所所長の村上祐一氏〉

村上氏は、現行の総合課税では「1億円の利益が出れば、5000万円強が税金」となる一方、分離課税になれば「20.315%の固定税率になるので約2000万円で済むことになり、大口投資家にとっては非常に有利」と述べた。

だが一方で、「年収300万円で、100万円の利益が出たというケースだと、分離課税だと納税額が増える可能性がある」と指摘。八木橋氏も、一般的な会社員で「年間50万円から100万円ぐらい利益が出た場合は、非常に微妙」と付け加えた。

分離課税は“減税”として語られている。だが、多くの個人投資家にとっては、必ずしもそうとは限らない。

実務は複雑に

実務面では計算が複雑化するとの懸念も示された。

村上氏は、今後は「特定暗号資産かどうか」「国内取引所か海外取引所か」「譲渡(売却)か、ステーキングやレンディングか」といった要素ごとに所得区分を分けて計算する必要が生まれるとし、「実務的な負担がより増えてしまうだろう」と述べた。

八木橋氏も「もはやExcelでは処理できない」と語り、例えばビットコイン(BTC)でも保管場所や取引形態によって税務上の扱いが分かれうることを問題視した。

ステーブルコイン関係も整備はこれから

〈BCCC Collaborative Dayの基調講演「暗号資産・ステーブルコイン税制について」に登壇した八木橋氏(中央)と村上氏(右)、モデレーターはBCCC DeFi部会長の荒澤文寛氏〉

ステーブルコイン関係の税務も、今後の大きな論点として浮上した。

八木橋氏は「ステーブルコインに関する税金は、まだ確定していない部分が多い」と述べ、ひとつの例として、ステーブルコインを決済に利用したときのブロックチェーン取引手数料(ガス代)の扱いをあげた。

ステーブルコインの決済では、きわめて少額のガス代が発生することになるが、これを「暗号資産の売買」と捉えると、その都度、売買への課税が発生することになる。それを1件ごとに処理するとなれば、実務負担は極めて大きい。

さらに八木橋氏は、国が円建てステーブルコインの普及・促進を後押しするのであれば、暗号資産から円建てステーブルコインに替える際には、「一定の税制上の配慮があってもよいのではないか」との考えも示した。

本当の評価はこれから

今回の議論では、分離課税そのものへの期待を否定する声はなかった。だが同時に、まだ出発点に過ぎず、分離課税の実際はこれから固まるという認識で一致していた。

八木橋氏は最後に、「ブロックチェーンを利用した取引やサービスは今後、さまざまに生まれてくる」としたうえで、「会計も税制も、リーズナブルかつ単純に、すぐに処理できるような状況が整うことが国にとっても、今後の経済成長にとっても間違いなくプラスになる」と述べた。

分離課税の実現は大きな前進だが、本当の評価は、これから定まる制度設計と運用次第になりそうだ。

|文:増田隆幸
|撮影:NADA NEWS編集部

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