中期経営計画に記載されたトークン化預金「ゆうちょDCJPY」は、どこへ向かうのか──勝手に考えてみた【編集長コラム】

ゆうちょ銀行が5月15日に発表した中期経営計画(2026〜2028年度)には、“トークン化預金「ゆうちょDCJPY」”という言葉が記載されていた。

ゆうちょ銀行は2025年9月1日、2026年度中に「トークン化預金」の取り扱いを開始する検討に入ったと正式に発表。11月には不動産分野での活用をディーカレットDCP、シノケングループとともに発表している。

だが、「全国に2万局」「1.2億口座」を持つ巨大銀行がトークン化預金を使って何をするのか、何を狙うのかは明らかになっていなかった。

中期経営計画で、トークン化預金「ゆうちょDCJPY」の展開が大々的に記載されたわけではなく、登場は数カ所だが、「ゆうちょDCJPY」がどんな形で使われていくのか、少し想像してみた。

法人利用ではない?

その前に少し、トークン化預金(TD)とステーブルコイン(SC)の性質・役割を整理しておこう。ちょうど5月19日に公表された、自民党「次世代AI・オンチェーン金融構想PT」の提言に分かりやすい一文がある。

「日本の強みである間接金融による信用創造を通じた成長資金供給が引き続き求められており、TDの役割が大きい。他方、ステーブルコインについては、個人・法人等の小規模・中規模決済を支えるインフラとして、」(太字は筆者)

つまり、トークン化預金は金融の根幹とも言える「信用創造」が期待されている。分かりやすく言えば、法人・ビジネス用途が主眼に置かれている。

ちなみに、ステーブルコインについては、企業間決済やクロスボーダー決済での活用が期待されているが、PTが「小規模・中規模決済を支えるインフラ」としたのは意外だった。ただ、この後には「また、1600兆円の年間売買高を誇る東証での証券決済等を筆頭にアセットサイドにおけるT+0を支える主体として機能を発揮する」と続いており、役割を明確に分けているわけではない。

PTと提言の狙いについては、座長の木原誠二衆議院議員へのインタビュー記事を後日公開する予定だ。

前置きが長くなった、話をもとに戻そう。

ゆうちょ銀行が見る景色

〈ゆうちょ銀行「中期経営計画(2026〜2028年度)」より〉

法人・ビジネス用途が主眼に置かれるトークン化預金だが、今回のゆうちょ銀行の中期経営計画を読むと、少し違った景色が見える。

「ゆうちょDCJPY」の文字が登場するのは「デジタルペイメント事業戦略」の「様々なパートナー企業との提携例」の中だ。しかも、単なる研究開発ではなく、IT投資や事業展開の文脈で位置づけられている。

「ゆうちょDCJPY」の展開としては、「多数のお客さまの資金決済を自動・省力化」「NFTと連動した決済を実現」「目的別貯金への活用」「セキュリティトークン取引との連動(証券売買等)」が挙げられている。

もちろん、現時点ではまだ計画段階であり、詳細は記されていない。そこで、もし「全国2万局」「1.2億口座」を持つゆうちょ銀行が、本気で“トークン化預金の個人利用”を推し進めたら、どんな景色が見えてくるのか。自由に(勝手に)想像してみた。

「目的別貯金」は、お金のOS化か

個人的に最も興味深かったのは、「目的別貯金」というワードだ。一見すると地味だが、実はかなり本質的かもしれない。

トークン化預金は、スマートコントラクトと接続できる。つまり、“お金に条件を埋め込める”可能性がある。例えば「子どもの教育費」「将来に備えた年金や介護費」はもちろん、「災害への備え」「旅行積立」などを、用途付きで管理できるかもしれない。

つまり、「子どもの入学などの条件達成で支払い」というスマートコントラクトが設定できれば、「教育費として積み立てたお金を別用途で使ってしまう」といった事態を防げるかもしれない。

さらには、自治体の補助や給付金などを自動的に連携させるようなことも可能になるだろう。

これは単なる「アプリの機能追加」ではない。お金そのものが“ソフトウェア化”していく話だ。

「NFT決済」は、本当にNFTなのか

「NFTと連動した決済を実現」も興味深い。NFTをいわゆる、ユニークな画像への投資と捉えると、現状は厳しい。市場規模は縮小し、さまざまなサービスが終了している。

だがNFTは、もっと広く捉えることもできる。

例えば、「デジタルチケット」「ファンコミュニティ」、さらには「デジタル所有権」など、保有の証明と決済が結びつく世界だ。

「ゆうちょDCJPY」でイベントのチケットを購入すると、交通・宿泊の手配から決済までが自動連携されるかもしれない。

観光に関連したNFTを持つと、店舗で自動割引や優待が受けられるかもしれない。

あるいは、高齢者の見守りや行政サービスと結びつく可能性もある。

重要なのは、「NFT」という単語そのものよりも、“デジタル証明とお金が一体化する”点だ。

「セキュリティトークン取引との連動(証券売買等)」は、4月に実証実験の完了を発表していた取り組みだ。長くなるので、詳細はここでは省こう。

関連記事:国内初──SBI証券ら6社、トークン化預金「DCJPY」でST決済を実証完了

郵便局ネットワークと「地域経済圏」

ゆうちょ銀行には、他の金融機関を大きく上回る強みがある。全国の郵便局ネットワークだ。もし将来、「地域限定ポイント」「地域のデジタル商品券」「子育て給付」「観光クーポン」「災害支援金」などが、トークン化預金ベースでリアルタイム配布されるようになったらどうだろうか。

さらに、「地域内だけで使える」「期間限定」「特定用途のみで利用可能」といった機能を追加することもできる。

現在でも自治体デジタル商品券は存在するが、多くは個別のアプリやシステムに閉じている。

もしも「ゆうちょ銀行」の巨大基盤と接続されれば、景色は大きく変わる。一部の先進ユーザー向けではなく、高齢者を含めた生活インフラとして普及する可能性がある。

「公金」との接続もあり得るかもしれない。

現在、政府は給付金などの受け取り先として「公金受取口座」の活用を検討している。ただし、公金受取口座は全国民が登録しているわけではなく、既存の銀行口座を紐づける仕組みになっている。

郵政民営化から約20年が経ったとはいえ、特に地方や高齢者にとって、「ゆうちょ」の存在感は大きい。「公金受取口座」と「ゆうちょ銀行」、さらにトークン化預金「DCJPY」が接続されれば、給付そのもののあり方も変わるかもしれない。

「銀行アプリ」ではなく「生活インフラ」

さらに興味深いのは、ゆうちょ銀行が中期経営計画のなかで、「ゆうちょDCJPY」を、NTTドコモの「dポイント」や生活アプリ連携施策と並列で配置している点だ。

「ゆうちょDCJPY」と「dポイント」の連携が、具体的に記されているわけではない。あくまでもそれぞれの取り組みが同じページに並列されているだけだ。

だが、どちらも「ゆうちょ銀行の貯金口座」をベースにした取り組みだ。連携・融合が行われることは容易に想像できる。

「ゆうちょ通帳アプリ」が、さまざまな生活サービスをカバーするスーパーアプリに進化するかもしれない。

オンチェーン金融を積極的に推進するSBIグループ、コインチェックとの提携を発表したKDDI、JPYCがウォレットで利用できるようになったLINE、Binance Japanとの連携を拡張しているPayPay──。さらに、ゆうちょとドコモが連携を強化するとしたら。

オンチェーン金融は、いよいよ“クリプトの話”ではなく、“生活インフラの話”へと変わり始めるかもしれない。

|文:増田隆幸
|画像:Shutterstockの素材を元に加工

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