“どのチェーンが強いか”ではない──企業の基盤選定は“用途起点”へ、Avalanche・Base・Solana・Suiを横断議論

企業がWeb3やブロックチェーン活用を進めるうえで、どの基盤をどう選ぶべきかについて考えるイベント「今、選ぶべきチェーンとは?」が4月10日、開催された。N.Avenue/NADA NEWSが主催し、シーエーシー(CAC)の協賛で実施された。

会場では、同社の担当者がAvalanche、Base、Solana、Suiの各チェーンの特徴を紹介したほか、有識者セッションも行われ、それぞれのチェーンがどのような事業文脈で選ばれ得るか議論された。

議論は単なる性能比較にとどまらず、金融利用やユーザー体験、事業の拡張性、さらにAIエージェント時代の決済まで広がった。全体を通じて共有されたのは、「どのチェーンが優れているか」という視点ではなく、「何を実現したいか」から逆算して基盤を考える重要性だった。

基盤選定が事業の成否を決める

イベント冒頭では、ブロックチェーン基盤の選定が、開発終盤の実装論ではなく、事業設計の初期から向き合うべき論点(基盤選定ファースト)であることが確認された。登壇者の議論から浮かび上がったのは、チェーンの優劣を一律に比較するのではなく、何を実現したいのかによって最適な基盤は変わるという前提だった。

この視点を示したのが、シーエーシーの金融・SIビジネス本部 デジタルソリューション部 ブロックチェーン推進グループ長を務める薮下智弘氏。同社が2016年以降、Corda、Quorum、Hyperledger Fabricといったプライベートチェーンを中心に、セキュリティトークン、ステーブルコイン、トレーサビリティなどの案件を手がけてきた経緯を紹介した。そのうえで、足元では企業の関心や市場の重心が、プライベートチェーンからパブリックチェーン、さらに「オンチェーン金融」へと移りつつあると整理した。

「オンチェーン金融」が変える前提

〈シーエーシーのデジタルソリューション部 ブロックチェーン推進グループ長の薮下智弘氏〉

薮下氏は講演で、チェーン選定を技術比較に閉じず、金融の構造変化と結びつけて語った。

例えばRWA(現実資産)を起点にした新たな金融の流れとして、「RWAに対して、決済の実行をステーブルコインで行う。その主体は今後、人間からAIエージェントに変わるだろう」と述べた。ブロックチェーンを単なる記録基盤としてではなく、流動性や決済、執行主体まで含んだ経済インフラとしてとらえる発想だ。

RWAにおいてもレイヤー化が進み、多様なトークン化金融商品が生み出される中で、担保としての二次的利用も促進され、そこにおいては信用力・即時性・透明性のメリットを享受できるマルチチェーン対応のシステムが選ばれると説明した

また、「100の事例からみるBC基盤選定・ビジネス化のポイント」と題したスライドを用い、基盤選定を単なる性能比較で終わらせず、どこまでをオンチェーン化するのか、誰にどの価値を届けるのか、どの流動性につなぐのか、規制や運用をどう設計するのか、といった複数の論点を整理した。

プライベートチェーンは参加者制御やコンプライアンス対応に優れ、パブリックチェーンはオープン性や相互運用性、流動性との接続に強みを持つ。重要なのは、どちらが優れているかではなく、「何を守り、何を開くのか」を先に定めることだという。

そのうえで薮下氏は、シーエーシーがプライベートとパブリックを融合させたハイブリッド構成を提案していることを説明。具体的には、Avalanche、Base、Solana、Suiに注力していく方針を示した。

以下、その4つの基盤について各担当者の説明を追う。登壇した4人は皆、同社の金融・SIビジネス本部 デジタルソリューション部 ブロックチェーン推進グループに所属している。

Avalanche:段階的に育てられる柔軟な基盤

〈山田祐司氏〉

Avalancheを紹介したのは、山田祐司氏だ。

山田氏はAvalancheの特徴として、高速ファイナリティ、高いスケーラビリティ、低いトランザクション手数料を挙げた。企業利用の観点で重要なのは、こうした性能だけではなく、それを比較的安定した条件で使い続けやすいことだという。

山田氏は、AvalancheのL1が持つ独立性にも言及。用途に応じてネットワークを設計しやすく、他のネットワークの混雑や手数料高騰の影響を受けにくいため「常に速く、常に安く使いやすい」状態を目指しやすいと指摘。運用面での予見可能性を持ちやすいと説明した。企業にとって、トランザクションコストや処理速度が外部要因で大きくぶれにくいことは、PoC後の実装を考えるうえで現実的な判断材料になる。

また、AvalancheではICM(Interchain Messaging)によってチェーン間通信が可能であり、独自性と相互運用性を両立しやすい点も紹介された。単に閉じた基盤をつくるのではなく、必要に応じて外部との接続も視野に入れられる。

山田氏は、企業のプロジェクトは最初から大規模に始まるわけではなく、「まず小さく始め、事業の拡大に応じて構成を見直していく」のが実態に近いとした。その点でAvalancheは、事業の成長に合わせてアーキテクチャを段階的に変えやすいことが強みになるという。

紹介された事例は、Progmat、Bowmore(サントリーグループ)のウイスキーボトルのトークン化、トヨタ・ブロックチェーン・ラボのMobility Orchestration Networkなど。構想段階から将来の拡張まで見据えたとき、柔軟性と独立性が企業導入の実務に響く基盤として位置づけられていた。

Base:運営主体の信頼と決済文脈の強さ

Baseについては、佐藤呼春人氏が説明した。

BaseはEthereumのレイヤー2(L2)であり、OP Stackを採用するチェーンとして整理された。佐藤氏はその特徴として、技術仕様だけでなく、Coinbaseがその背後にいることを挙げた。

〈佐藤呼春人氏〉

EVM互換の安心感に加え、Coinbaseという大手事業者が推進するチェーンであることは、企業が対外説明を行ううえでも分かりやすい。佐藤氏は、USDCとの親和性や決済・送金など実需に近いユースケースとの接続しやすさにも触れた。Baseは単に「使えるL2」ではなく、法定通貨周辺の導線やユーザー基盤を持つプレイヤーと結びついたチェーンとして見られている、という説明だった。

さらに、AIエージェント時代の決済インフラとしての可能性にも触れた。 Agentic Walletやx402のような文脈の中で、AIによる自律的な少額決済を支える基盤としての役割が示された。

また、渋谷のPangaea Cafe & BarでUSDCを用いて行われた決済の実証実験でBaseが基盤となったことを紹介。消費者接点を伴う実装イメージが比較的描きやすいチェーンだとした。

Solana:金融・RWA領域への機能拡張

Solanaを紹介したのは、高橋祐貴氏。

高橋氏はまず、Solanaの特徴として、高速処理と低コストを挙げたうえで、同チェーンのポイントは単なる処理性能にとどまらず、金融やRWAといったユースケースを見据えた機能拡張が進んでいる点にあると説明した。

〈高橋祐貴氏〉

発表では、Confidential Transfers、Auditor Keys、Transfer Hook、Token ACLといったキーワードが示され、プライバシー確保や監査、権限制御など、金融領域で求められやすい要件に対応する方向性が紹介された。

高橋氏は、こうした機能群によって、Solanaが「速いチェーン」であるだけでなく、より実務的な要請に応えうる基盤として整備されつつあることを示した。

また、ステーブルコインの発行から決済・清算までを一体的に扱う基盤としての広がりや、開発・運用のしやすさも特徴として紹介。マルチチェーン環境を前提に、単独チェーンとして閉じるのではなく、複数のネットワークが併存する環境の中でSolanaをどう位置づけるか、という観点も示していた。

全体として高橋氏の説明は、Solanaを高性能チェーンとして紹介するだけでなく、金融・決済・RWAといった具体的な事業領域にどう接続できるかを意識したものだった。

Sui:ユーザー導線と開発体験を両立する設計

〈劉昊氏〉

Suiについて説明したのは、劉昊氏。劉氏はSuiの特徴として、高性能・低コストに加え、ユーザー体験と開発体験の両面を意識した設計を挙げた。

発表では、Suiの基盤として、オブジェクト中心のデータモデルやSui Move、並列処理を支えるアーキテクチャが紹介され、高い処理性能を実現しやすいチェーンであることが整理された。単にトランザクションを速く処理するだけでなく、アプリケーション設計の自由度を持たせやすい点もポイントとして示された。

あわせて、劉氏が強調していたのが、ユーザー導線の設計だ。

SuiではzkLoginにより、Google IDやApple IDを用いたログインが可能で、従来のWeb3サービスでハードルになりやすかったウォレット起点の導線を和らげやすいという。劉氏は、こうした仕組みによって、Web2に近い感覚でサービスに入れることが、一般ユーザー向けの展開では大きな意味を持つと説明した。

また、開発者にとっても、新しいサービス設計を試しやすい基盤であることが示された。高性能な実行環境に加え、ユーザーの入り口を設計しやすいことから、Suiは金融に限らず、より幅広いアプリケーション展開を視野に入れた基盤として紹介された。

有識者セッション:問われるは「何を優先するか」

後半の有識者セッションでは、チェーンの優劣ではなく、企業が何を基準に選定すべきかが議論された。

登壇したのは、Ava Labs Head of Japanの平田路依氏、Superteam Japan CMOの道家和人氏、あたらしい経済」編集部記者の渡邉洋輔氏で、進行は高橋氏が務めた。高橋氏はまず、登壇者にそれぞれのチェーンの魅力を尋ねた。

〈Avalancheについて説明したAva Labs Head of Japanの平田路依氏(右)〉

平田氏はAvalancheについて、変化の激しいWeb3領域では「特定のインフラにロックインしてしまうと、数年後に変えなきゃいけないケースが多々ある」と述べたうえで、Avalancheは「いかに技術に余白を持たせるか」を強く意識した設計だと説明した。さらに、「一番の魅力は、インフラとして、後でボトルネックになったり、選んで後悔されたりしないよう、かなり丁寧に技術選定している点」と語り、短期的な性能よりも中長期の運用や拡張への耐性を重視する姿勢を示した。

道家氏はSolanaの魅力として、第一に「コミュニティの強さ」を挙げた。多くのプロジェクトが実際にSolana上でマネタイズし、その経済圏を回していることが「進化のスピードが速い」背景にあるという。

そのうえで、「世界の最高峰の金融のプロジェクトがSolanaを実際の金融インフラとして使っているところも魅力」と述べ、性能だけでなく、実装事例の厚みも重要な判断材料になるとした。

〈左から、佐藤氏、Superteam Japan CMOの道家氏、「あたらしい経済」編集部記者の渡邉氏〉

一方、渡邉氏はSuiを含むチェーン全般の見方として、「ブロックチェーンは設計思想がそれぞれ違うので、画一的な評価軸を置くのはなかなか難しい」と指摘。そのうえで、「金融プラットフォームとしてブロックチェーンを活用するのか、開発インフラとして活用するのかという、二軸の方向性がある」とし、基盤選定はスペックの単純比較ではなく、何のために使うのかという用途の整理から始めるべきだとした。

続けて、Suiについては、並列処理の速さだけでなく「開発者体験の高さ」を重視したいとし、Move言語やオブジェクトモデル、Sui Stackといった要素が、開発基盤としての使いやすさにつながっていると説明した。

正解は一つではない、進むマルチチェーンとサイロ化の課題

登壇者の発言からは、あらためてチェーン選定に単一の正解はなく、企業が選ぶべきなのは「自社の要件に最も合うチェーン」だという視点が浮かんだ。

将来的な設計変更まで見込んで基盤を選ぶのか。金融や決済のように、流動性やコンプライアンス、実績を重視するのか。一般ユーザー向けサービスの基盤として、入り口のわかりやすさや開発しやすさを優先するのか。事業の前提や目的に応じて、適したチェーンを見極める必要があることが共有された。

4人のセッションに続いては質疑応答が行われ、チェーンの多様化が進むことで進むサイロ化への懸念が示された。登壇者からは、一定の分断は避けがたいとしつつも、現実には複数チェーンの併存を前提に、相互接続や役割分担を考える必要があるとの認識が示された。一方で、現実には複数の有力チェーンが並立している以上、単一チェーンにすべてを収れんさせるのではなく、相互接続や役割分担を前提に考える必要があるという問題意識も共有された。

この日の議論から見えたのは、基盤選定がチェーンの優劣を比べる作業ではなく、事業要件を整理するプロセスに近づいているということだった。Avalanche、Base、Solana、Suiはいずれも異なる強みを持ち、選択は用途やユーザー、流動性、規制、開発体制によって変わる。

それぞれの違いを踏まえ、企業が何を優先して基盤を選ぶべきかが共有されたワークショップとなった。

|文:瑞澤 圭
|編集・写真:NADA NEWS編集部

PR

ボーナスで始めるのにおすすめな国内暗号資産取引所3選

取引所名特徴

Coincheck
500円の少額投資から試せる!】
国内の暗号資産アプリダウンロード数.No1
銘柄数も最大級 、手数料も安い
無料で口座開設する

bitbank
【たくさんの銘柄で取引する人向け】
◆40種類以上の銘柄を用意
◆1万円以上の入金で現金1,000円獲得
無料で口座開設する

bitFlyer
初心者にもおすすめ】
◆国内最大級の取引量
◆トップレベルのセキュリティ意識を持つ
無料で口座開設する