2025年、暗号資産詐欺の被害額は約2兆7000億円:Chainalysis

ブロックチェーン分析企業のChainalysis(チェイナリシス)が発表した『2026 Crypto Crime Report(2026年暗号資産犯罪レポート)』によると、2025年、暗号資産(仮想通貨)を巡る詐欺と不正行為による被害額は、推定で170億ドル(約2兆7000億円、1ドル=159円換算)に達した。前年から急増した最大の要因は、「なりすまし詐欺」の爆発的拡大と、AI技術の本格的な悪用だ。

最新の分析によると、なりすまし型詐欺は前年比で約1400%という異常な増加を記録し、AIを利用した詐欺は従来型に比べて4.5倍以上の収益性を示している。

もはや詐欺は、個人が行う犯罪ではない。高度に分業化され、ツール化され、国境を越えて展開される「産業」になりつつある。

信頼を武器にする「なりすまし詐欺」の進化

2025年に最も顕著だったのが、政府機関や企業を装うなりすまし詐欺だ。

中でも象徴的なのが、米国の電子料金徴収システムを装ったE-ZPass詐欺である。

この詐欺では、利用者にSMSを送り「未払い料金がある」と偽ってリンクを踏ませ、公式サイトと見分けがつかない偽ページへ誘導した。背後にいたのは、中国語話者のサイバー犯罪集団「Smishing Triad(Darcula)」とされている。

Googleが2025年11月に起こした訴訟によれば、彼らは「Lighthouse」と呼ばれる中国語圏のフィッシング・アズ・ア・サービスを利用していた。このサービスは、テンプレート化された偽サイトや検知回避機能を備え、まさに「初心者向け詐欺キット」だったという。

そのコストは驚くほど低い。一部のフィッシングキットは500ドル未満で入手可能だったとされる。しかし、その影響は甚大だ。E-ZPass関連の詐欺は、3年間で10億ドル以上を詐取し、100万人超の被害者を生んだとされている。

AIが詐欺を「効率化」する時代へ

2025年は、AIが詐欺のあり方を根本から変えた年でもあった。

ディープフェイク音声、顔交換技術、大規模言語モデル(LLM)により、詐欺師はより説得力のある人物になりすますことが可能になった。

分析によれば、AI関連ツールとオンチェーンで結びつく詐欺は、1件あたり平均320万ドルを詐取しており、AIを使わない詐欺(約71万ドル)を大きく上回る。

また、1日あたりの取引件数も約9倍に増加しており、少人数で多数の被害者を同時に操る「量産型詐欺」が現実になっている。

法執行機関の反撃

一方で、2025年は法執行機関にとっても転換点だった。詐欺活動の規模拡大と巧妙化が進んだことを受け、暗号資産関連の詐欺活動に直接関連する史上最大規模の法執行措置も2件実施された。

英国では、史上最大規模となる6万1000ビットコイン(当時約50億ポンド相当)が押収された。中国での大規模投資詐欺に関与した人物が、長年かけて資金洗浄を試みていたケースだ。

ロンドン警視庁のWill Lyne(ウィル・ライン)氏は次のように述べている。

「暗号資産に関連する詐欺は、規模も巧妙さも増している。しかし同時に、我々の対応能力も大きく向上している」

米国でも、東南アジアの強制労働型詐欺拠点を統括していたとされる犯罪組織「Prince Group」に対し、150億ドル超の資産凍結と刑事措置が取られた。

これらの拠点では、人身売買の被害者が「豚の屠殺(ピッグ・ブッチャリング)」と呼ばれる投資詐欺を強制的に実行させられていた。

「産業化された詐欺」にどう立ち向かうか

2025年のデータが示すものは明確だ。

暗号資産詐欺は、AI、分業化、国際的資金洗浄ネットワークを取り込んだ高度に組織化された産業へと進化している。

被害を抑えるには、技術、法執行、国際協力を組み合わせた多層的な対策が不可欠だ。リアルタイム検知、国境を越えた資金凍結、制度の弱い地域への支援が求められている。

|文・編集:Shoko Galaviz
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