日本円ステーブルコイン「JPYC」を発行するJPYC社は10月9日、キャッシュレス決済市場の競争環境について、公正取引委員会に情報提供したと発表した。
情報提供は9月14日に実施し、JPYCの仕組みや決済市場の変化を説明した。
同社は、カード加盟店規約が、JPYC決済を利用する顧客への割引などを妨げかねないと指摘した。決済コストの削減分を顧客に還元することは、店舗の自由な経営判断に委ねられるべきだと主張している。
JPYCは、1JPYC=1円で発行・償還される電子決済手段だ。2025年10月27日の発行開始以降、飲食店や小売店、ECサイトなど150以上の店舗・事業者で利用できるようになった。
JPYCでの支払いは、利用者がブロックチェーン上で店舗に送金する仕組みで、JPYC社は店舗から加盟店手数料を徴収しない。同社は、これにより既存のキャッシュレス決済に比べて店舗のコスト負担を抑えられるとしている。
こうしたコストの差を原資に、JPYC決済を選んだ顧客への割引や送料無料を実施・検討する店舗が増えている。
一方、同社には「カード加盟店規約に違反するのではないか」との不安が寄せられ、実施をためらう例もあるという。
JPYC社が問題視するのは、クレジットカードなどの加盟店規約に広く存在するという、次の3つの禁止条項だ。
- ①カード利用者への料金上乗せの禁止
- ②現金利用者への割引の禁止
- ③他の決済手段の利用の推奨・誘引の禁止
同社によると、JPYC決済の導入店からは、割引などの優遇を行うと、こうした加盟店規約への違反を問われるのではないかとの不安が寄せられている。優遇施策の実施をためらう例もあるという。
具体的には、カード利用者への料金上乗せ、現金利用者への割引、他の決済手段の利用を勧める行為を禁止する条項を挙げた。これらが、店舗による決済手段ごとの価格設定や、顧客への案内を制限する可能性を指摘している。
公取委は2022年4月の実態調査報告書で、カード利用客と現金利用客への異なる料金設定を一律に禁じる行為について見解を示していた。店舗間の顧客獲得競争を弱めるおそれがある場合、独占禁止法上問題となるおそれがあるとしている。
他の決済方法を勧める行為の禁止についても、有力なカードブランドやカード会社が他の決済事業者を排除するおそれがある場合、同法上問題となり得ると指摘した。

JPYC社は、ステーブルコインなど新たな決済手段を利用する顧客への割引にも、公取委が示した考え方が当てはまると捉えている。
加盟店規約の内容や運用は、決済事業者ごとに異なるという。このため、JPYC社は、割引の実施に不安がある導入店や、決済事業者から中止を求められた導入店向けに、相談窓口を設けた。
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|文:平木 昌宏
|トップ画像:JPYC社リリースより(キャプチャ)
|画像:公正取引委員会の報告書概要より(キャプチャ)


