イーサリアム(ETH)は8月に32.5%上昇し、ビットコイン(BTC)を2カ月連続で上回った。ETHが2カ月連続でBTCを上回るのは2023年7月~8月以来だ。
- イーサリアム(ETH)は8月に32.5%上昇し、ビットコイン(BTC)を2カ月連続で上回った。ETHが2カ月連続でBTCを上回るのは2023年7月~8月以来だ。
- イーサリアム財務会社(トレジャリー企業)の時価総額は94億ドル増加し、ETHの総ステーキング比率は35%の節目に迫っている。
- ステーキングの増加、ETF資金流入、先物建玉(オープンインタレスト)の拡大がETHの上昇を支えた一方、資金調達率(ファンディングレート)とRSIの上昇は9月のボラティリティ拡大リスクを示している。
イーサリアムが2カ月連続でビットコインを上回る、2023年以来初めて
イーサリアムは2026年8月末、2460ドル前後で取引を終え、月間で32.5%上昇した。ビットコインを2カ月連続で上回るのは、2023年7月から8月以来初めてとなる。

相場上昇は、上場しているイーサリアム財務会社の企業価値も押し上げた。8月初めの247.4億ドルから、累計評価額は約94.2億ドル増加し341億ドルとなった。企業による財務保有は8月中に10万3265ETH以上積み増され、その大半は世界最大の企業向けイーサリアム保有者であるBitmine Immersion Technologies(ビットマイン・イマージョン・テクノロジーズ、BMNR)による積極的な購入がけん引した。

SharpLink(シャープリンク、SBET)も機関投資家の参加が拡大している。8月18日付の公式開示によると、50を超える機関投資家がSBET株の新規ポジションを構築した。機関投資家による保有比率は6月30日時点で約60%に達しており、フィデリティ、ブラックロック、モルガン・スタンレー、バンガード、ステート・ストリート、インベスコ、ハイブリッジ・キャピタル・マネジメントなど主要株主が保有を積み増した。
L2がメインネットの手数料収益を奪い、イーサリアム本体は伸び悩む
イーサリアムのメインネット利用は、8月の32.5%の上昇にもかかわらず大きく落ち込んだ。Artemisによると、イーサリアムメインネットの日次取引件数は8月18日の340万件から180万件に減少した。ネットワーク収益もほぼ60%減少し、8月19日の110万ドルから月末には約30万6000ドルまで落ち込んだ。

リスク選好が高まる中、活動はメインネット上に留まらず、より手数料の安いイーサリアム関連ネットワークへと移った。

Robinhood Chain(ロビンフッド・チェーン)ネットワークは、8月30日の日曜日に単日のDEX(分散型取引所)取引高が過去最高の13.3億ドルを記録し、預かり資産残高(TVL)は7億ドルを突破、月間でほぼ倍増した。同L2ネットワーク上のステーブルコイン供給量も約7.7億ドルまで増加し、月間で47%増となった。
活動の中身にも変化が見られる。Robinhood Chainは当初、7月にミームコイン「CASHCAT」が現物上場したことをきっかけに、ミームコイン関連の取引が大半を占めていた。

8月に入るとRobinhood Chain上の活動は、実用性・インフラ関連トークンへとシフトした。同チェーンの主要ローンチパッドの一つであるPONS(ポンズ)の時価総額は、月間で約2000万ドルから2億ドル超へと拡大した。
イーサリアム、8月急騰を支えた3つの指標
イーサリアムの8月の相場をけん引した上昇は、L2がメインネットの取引活動を奪う中、資金の流入、ステーキング需要、レバレッジ需要によって支えられた。その裏付けとなるのが、ステーキング需要、機関投資家によるETF需要、レバレッジポジションという3つの主要な市場指標だ。
①ETH2.0ステーキング──EIP-8363を巡る議論をよそに、短期供給から33億ドルを吸収
Validator Queueのデータによると、ステーキングされたETHの量は8月1日時点の約4127万ETHから、8月31日には4261万ETHまで増加し、総供給量に占めるステーキング比率は35%の節目に迫っている。

これは1カ月で約134万ETHの増加に相当する。8月末時点の価格で換算すると、この8月の増加分は約33億ドル相当になる。この傾向は7月とも重なり、7月には約140万ETHがステーキングに追加されていた。価格が急騰する中でも保有者がETHをネットワークにロックし続けていることが分かる。これは、合計ステーキング量が50%の節目に達した時点でイーサリアムのステーキング報酬の発行を停止するという開発者提案「イーサリアム改善提案(EIP)8363」を巡る論争をよそに起きている。同提案は現時点で草案段階にとどまっており、今後のネットワークアップグレードへの採用は決まっていない。8月に開催された「オール・コア・デベロッパーズ・コンセンサス」の会合では、開発者や主要DeFi関係者から同提案に反対する声が上がった。提案者は、直近のアップグレードでの採用見送りを検討するよう求められた。
現在のペースが続けば、イーサリアムは今後およそ10カ月、2027年6月ごろには提案されているステーキング上限に近づく可能性がある。当面、ステーキング需要は堅調に推移するとみられる。
②現物ETF資金フロー──18.1億ドルの需要が機関投資家の下支えに
メインネットの活動が鈍化する一方、ETF資金フローはイーサリアムに対するもう一つの大きな需要源となった。イーサリアムは8月中に総額約18.1億ドルのETF資金流入を記録した。月初は横ばいで推移したものの、月末にかけての13営業日には16億ドルの資金が流入し、その間資金流出はゼロだった。
ETF購入は、8月を通じて見られた企業によるETH財務保有の積極的な積み増しとも重なった。9月を迎えるにあたり、機関投資家の需要はETH価格動向にとって引き続き重要な要素となる。
③建玉(オープンインタレスト)──米財務省の買い戻し発表後、60億ドルの新規先物契約が流入
デリバティブ市場は3つ目の重要なシグナルを示している。イーサリアム先物の建玉は8月1日から18日にかけて約265億ドル前後で横ばいだったが、米財務省が買い戻し拡大を発表したことが相場上昇のきっかけとなり、建玉は8月末までに325.5億ドルまで拡大した。

これは、トレーダーが相場上昇局面でよりレバレッジを効かせたポジションを求めた結果、約60億ドル相当の先物契約が新たに市場に流入したことを意味する。建玉加重平均の資金調達率(ファンディングレート)の動きも、強気の解釈を裏付けている。同レートは8月18日の約0.002から、月末には0.0095まで上昇した。資金調達率は、無期限先物のロングとショートの間でレバレッジトレーダーが支払うプレミアムを示す指標だ。

資金調達率が建玉とともに上昇する場合、一般的にはより多くのトレーダーがレバレッジを効かせたロングポジションを維持するためにプレミアムを支払う意思があることを示す。今回のケースでは、約60億ドルの建玉増加と資金調達率の急上昇が組み合わさったことは、トレーダーが現物市場でETHを買うだけでなく、モメンタムの加速に伴いレバレッジ・エクスポージャーも積み増していたことを示唆している。ETHの資金調達率は依然として月間の高水準付近で推移しており、9月に向けた強気シナリオを補強する材料となっている。
一方で懸念材料もある。資金調達率の過熱と60億ドルの建玉は、レバレッジをかけたロングポジションが積み上がっていることを示しており、9月に急激な反転が起きた場合には下落を増幅させる可能性がある。もっとも、8月に市場供給から吸収された33億ドル相当のステーキング資産と18億ドル相当のETF購入は、下振れリスクに対する緩衝材となり得る。さらに、時価総額の増加はイーサリアム財務会社のバランスシートを強化し、新規購入の原資となる。
イーサリアム価格見通し──ボリンジャーバンドは上値余地、9月はリスクにも注意
先週金曜日のFRB高官によるタカ派的な発言を受けた小幅な調整を消化し、イーサリアムはテクニカル的に強気の地合いを維持したまま9月を迎えている。ETH/USDの週足チャートでは、ETHは週間高値の約2489.90ドルをつけた後、2446.70ドル前後で取引されている。20週ボリンジャーバンドの中心線は約2019.55ドル、上限バンドは2580.13ドル付近、下限バンドは1458.96ドル付近に位置する。ボリンジャーバンドは、移動平均を中心とした価格変動の大きさを測る指標だ。
ETHが上限バンドに近い水準にあることは、8月の上昇が直近のレンジの上限までETHを押し上げたことを示している。

ただし、ETHはまだ上限バンドを明確に上抜けていない。買い手が2490ドル近辺をサポートに変えられれば、さらなる上値余地が残る。2580ドルを上回る動きが続けば、テクニカル的に重要なブレイクアウトとなり、2700ドル、さらには3000ドルへの道も開ける可能性がある。
週足RSIも重要なシグナルを示している。ETHの14週RSIは58.49と、平均値の約42.25を上回る水準にある。RSIは価格変動の速度と大きさを測る指標だ。58前後の水準は強気のモメンタムが大きく強まっていることを示す一方、伝統的な「買われすぎ」とされる70には達していない。
下値では、8月に複数回の利益確定を経て推移してきた2400~2420ドル近辺が最初の主要サポートとなる。この水準を割り込めば、下落は2020ドル付近のボリンジャーバンド中心線まで深まる可能性がある。この水準を明確に下回れば、現在の強気構造は大きく損なわれ、8月のブレイクアウトがより広範な調整局面に入ったことを示唆する。


