各国通貨ステーブルコインはドル建てトークンの需要を高める可能性がある=IMF

国際通貨基金(IMF)の第一副専務理事、Dan Katz(ダン・カッツ)氏は8月7日、ケープタウン大学での講演で、ドル建てトークンへの依存抑制を狙って発行される自国通貨建てステーブルコインが、かえって利用者のデジタルドルへの資金移動を容易にしかねないと述べた。

ステーブルコインの時価総額は直近1年ほぼ横ばいの約3000億ドル(約48兆円、1ドル=160円換算)で、その約99%がドル建てである。

カッツ氏によれば、現地通貨建てステーブルコインがドル建てと同じブロックチェーン基盤上に存在すれば、両者の交換はオンチェーン取引になる。現地通貨からドルへのオンランプは、銀行や為替ディーラーという規制された領域から、分散型取引所(DEX)や流動性プール、ピアツーピアのスワップへ移り、当局が資本の流れを管理する政策手段となってきた摩擦は消えかねない。

「このようにして、現地通貨ステーブルコインは、外貨ステーブルコインの普及を加速させる可能性さえある」とカッツ氏は語った。

例に挙げたのが南アフリカだ。ドル建ての浸透も限定的だが、ランド連動型の需要はさらに少ない。結論は時期尚早としつつも、流動性やネットワーク効果、国境を越えた受容性から利用者がドル建てを選好する可能性を示した。

リスクは国によって異なる。ドル化が進んだ経済圏では既存のドル保有の置き換えが中心で、外貨需要全体への影響は比較的限定的だという。

一方、ドルへのアクセスが制限され経済基盤が脆弱な国では、抑圧された需要が顕在化し、外貨保有そのものを押し上げかねない。カッツ氏は、オンランプ・オフランプとオンチェーンの交換地点へと規制を拡張するよう促した。

カッツ氏は、マクロ枠組みが強固で開放度の高い経済圏では外貨ステーブルコインの普及は緩やかにとどまるとみる一方、資本フローの変動性は高まりうるとも述べた。日本はドル化圧力の小さい経済だが、円建てステーブルコインのJPYCはイーサリアム(Ethereum)、ポリゴン(Polygon)、アバランチ(Avalanche)などで発行され、オンチェーン流通額は7月10日時点で20億円を超えている。ドル建てと同じ基盤に並ぶ構図であり、DEX経由の乗り換え経路は技術的にすでに存在している。

|文・編集:井上 俊彦
|画像:Shutterstock

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