・Aave創業者のスタニ・クレチョフ氏は、イーサリアムで提案されているステーキング報酬制度の見直しに反対し、暗号資産イーサリアム(ETH)が機関投資家やソロステーカーにとって魅力を失う可能性があると警告した。
・同案では、ステーキング比率の上昇に応じてバリデーターの発行報酬を段階的にバーンし、ETH供給量の約50%がステーキングされた場合、コンセンサスレイヤー由来の発行報酬を事実上ゼロにする。
・クレチョフ氏は、ステーキング利回りの低下によってDeFiにおける借入需要が弱まり、特にAaveなどのレンディング市場を支えるレバレッジ型ETHステーキング戦略に打撃を与える可能性があると主張した。
Aave創業者「イーサリアムは成長を理由に罰せられるべきではない」
Aave創業者のスタニ・クレチョフ氏は、イーサリアムで提案されている「Tapered Issuance Burn(発行報酬の段階的バーン、EIP-8363)」を批判した。クレチョフ氏は、同案がETHの投資対象としての魅力を低下させるとともに、主要な分散型金融(DeFi)市場を混乱させる可能性があると主張している。
ジャスティン・ドレイク氏らイーサリアム研究者が提案した同案は、ETHのステーキング比率が上昇するにつれ、バリデーターに支払われる発行報酬のうち、バーンされる割合を段階的に引き上げる仕組みだ。ETH供給量の約50%がステーキングされると、コンセンサスレイヤー由来の発行報酬は事実上ゼロになる。
クレチョフ氏は、この仕組みによってETHの将来的な利回りを予測しにくくなると指摘した。
「残念ながら、この提案は目指している成果を実現できないばかりか、実際にはイーサリアムに悪影響を与える」─クレチョフ氏のX投稿、8月4日
同氏によると、ステーキング収益が予測できなくなれば、安定したキャッシュフローを生む資産を求める機関投資家がETHへの投資を避ける可能性がある。
「これは、ETHのステーキング利回りが予測不能になり、多くの参加者にとって採算がまったく合わなくなる可能性があることを意味する。この不確実性は、普及の大きな妨げとなる」
また、小規模な運営者は、インフラ費用を正当化するために安定したステーキング収入を必要とすることが多いため、ソロバリデーターも同様の問題に直面するとした。
クレチョフ氏は、報酬を制限することの経済的な合理性についても疑問を呈した。
「イーサリアムは成長したことを理由に罰せられるべきではない」
同氏はこう述べ、開発者に対して提案を進めないよう求めた。
クレチョフ氏の懸念の背景には、Aaveがイーサリアムのステーキング経済から強い影響を受けるという事情がある。
Aaveは依然として最大規模の分散型レンディングプロトコルであり、数十億ドル規模のETH担保がネットワーク全体の借入活動を支えている。
クレチョフ氏は、コンセンサスレイヤー由来の発行報酬がゼロになれば、多くのETH借入戦略の採算が取れなくなると警告した。
「DeFiにおいて報酬が0%になれば、ETHを借り入れる戦略の大半が事実上成立しなくなり、ETHの借入や利回り獲得のユースケースが失われる」
さらに、次のように述べた。
「皮肉なことに、ETHを借りる唯一の理由は、ETHを空売りするためということになる」
ETHの借入が、次第に価格下落を見込む弱気戦略にしか利用されなくなるとの見方を示した。
供給資産260億ドル規模のAave市場に圧力
Aaveはイーサリアム上のレンディング市場で大きなシェアを占めている。そのため、レバレッジを利用したステーキング需要が長期的に減少すれば、DeFi市場全体の流動性や借入額、担保利用率にも影響が広がる可能性がある。
Aaveの最近の動向からも、ステーキング報酬がプロトコルの成長にとって重要であることが分かる。Aaveに供給された資産総額は、4月中旬の約450億ドルから減少し、6月上旬には223億ドルまで落ち込んだ。

30日前との比較では約6%増加し、借入残高も約8%増の113億ドルとなった。
ETH建て資産は引き続きAaveで最大の供給区分となっている。その供給額は約109億ドルで、30日前から約12%増加し、供給資産全体の40%以上を占めた。これにドル建て資産の約101億ドル、ビットコイン(BTC)建て資産の約44億ドルが続いた。
今回の回復は、Kelp DAO危機によって市場が急激に縮小した後に始まった。
2026年4月にラザルス・グループに関連するとみられる攻撃が発生した後、Kelp DAOは一時的に出金を停止した。これを受け、利用者はAave上で構築していたレバレッジ型ステーキングポジションを急速に解消した。
Kelp DAOが5月中旬に出金を再開すると、Aaveの市場も回復し始めた。
5月25日、Kelp DAOはrsETHのOFTアダプターに最後の2万373.72 rsETHを補充した。これにより、rsETHブリッジの裏付け比率は100%を上回り、復旧計画の運用段階が完了した。
6月第1週以降、Aaveには41億ドルを超える資金が再流入している。
この回復は、Aaveのレンディング活動がイーサリアムのステーキングエコシステムと密接に結び付いていることを示している。
提案されている発行制度の変更によってコンセンサスレイヤー由来の発行報酬が大幅に減少した場合、批判派は、レバレッジ型ETHステーキングの需要や、それを支える借入活動に再び下押し圧力がかかるとみている。
Aaveエコシステムの有力者であるマーク・ゼラー氏も議論に加わり、AaveやLido、ether.fiなど、影響を受ける主要プロトコルは、この提案を全面的に拒否すべきだと主張した。
一方、EIP-8363の支持者は、現在のイーサリアムが過剰なステーキングを促すことで、ネットワークの安全性を確保するために必要以上の報酬を支払っていると主張している。
発行量を減らせば、ETHの通貨としての性質を改善できるほか、大手カストディ事業者へのバリデーターの集中も抑えられるとしている。
ガバナンスを巡る議論が活発化するなか、ETH価格は8月5日、1,900ドルを上回った。米国とイランの緊張緩和が追い風となった。


