エックスウィン アメリカマーケットリサーチアナリストのデリア・ロホです。
サンフランシスコから、現在アメリカで最も注目されているCLARITY Act(暗号資産市場構造法案)の最新動向をお伝えします。
ここ数週間、アメリカの暗号資産業界では「CLARITY Actは成立するのか」という話題が大きな関心を集めています。一時は成立が有力視され、市場も期待感を織り込んでいました。しかし現在、状況は大きく変わりつつあります。
結論から申し上げると、法案の内容そのものよりも、「政治日程」が最大の壁になっています。
最大の問題は”時間”
CLARITY Actは下院を超党派の賛成で可決しており、市場構造法案としては大きな前進を遂げました。現在は上院での審議段階にありますが、上院には暗号資産以外にも優先順位の高い法案が数多く残されています。
司法関係の人事承認、予算関連法案、安全保障、ロシア制裁など、多くの重要案件が議会日程を占めています。さらに8月の休会を迎えるまでの審議日数は限られており、「法案を審議する時間そのもの」が不足している状況です。
そのため、現在の焦点は「内容」ではなく、「いつ審議できるか」に移っています。
民主党は何に反対しているのか
SNSなどでは「民主党が暗号資産に反対している」という単純な説明を見かけますが、実際はそこまで単純ではありません。民主党内でも暗号資産を推進する議員は存在します。
今回議論となっているのは、
・利益相反(Ethics Rule)
・消費者保護
・監督権限
といった制度設計です。
特にトランプ大統領と暗号資産ビジネスとの関係については、民主党側がより厳格な倫理規定を求めています。一方で共和党は、イノベーションを阻害しない形で制度を整備したいという立場です。
つまり現在は「成立するか否か」ではなく、「どのような形で成立させるか」が議論の中心になっています。
中間選挙が近づくほど法案は難しくなる
ここから最も重要なポイントです。2026年はアメリカの中間選挙イヤーです。中間選挙が近づくにつれ、議員は地元選挙区での活動を優先するようになります。
さらに、選挙が近づくと党派対立が強まり、超党派での大型法案成立は難しくなる傾向があります。こうした事情から、多くの政策関係者は「時間が経つほど成立のハードルは高くなる」とみています。
つまり、今後数か月は政治日程そのものが最大のリスクとなります。
仮に共和党が敗北した場合はどうなるのか
投資家から最も多く受ける質問がこれです。結論として、「成立が数年単位で遅れる可能性」があります。アメリカでは、中間選挙で議会の勢力図が変わると、法案の優先順位も大きく変わります。
歴史的にも、大統領与党は中間選挙で議席を減らすケースが多く、2026年も共和党が厳しい戦いになるとの見方が出ています。
もし共和党が上下院のいずれかで多数派を失えば、CLARITY Actの審議は一から仕切り直しになる可能性があります。その結果、SECとCFTCの管轄整理も先送りとなり、暗号資産市場は現在の「曖昧なルール」が続くことになります。
それでも市場は前向きに見ている理由
一方で、市場参加者が極端に悲観しているわけではありません。
理由は二つあります。
一つ目は、法案そのものへの反対ではなく、政治スケジュールが問題になっている点です。
二つ目は、アメリカでは政権・議会を問わず、デジタル資産を制度化する流れそのものは継続していることです。
ETF市場の拡大、金融機関の参入、ステーブルコイン関連法制の整備などを見る限り、「暗号資産を金融インフラとして位置付ける」という大きな方向性は変わっていません。
その意味では、今回の停滞は”後退”というよりも”時間との戦い”と捉える方が適切でしょう。サンフランシスコで多くの関係者と話していると、「成立するかどうか」を議論する人は以前より減っています。
現在の関心は、「いつ成立するのか」「どのような修正が加わるのか」という点へ移っています。暗号資産市場は、価格だけでなく制度によって成熟していく市場です。
だからこそ、CLARITY Actは単なる一つの法律ではありません。今後10年のアメリカのデジタル資産市場の競争力を左右する重要な分岐点と言えるでしょう。サンフランシスコからは、今後も現地で起きている変化を、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。


