エックスウィン アメリカマーケットリサーチアナリストのデリア・ロホです。
サンフランシスコから、現在アメリカで最も注目されているCLARITY Act(暗号資産市場構造法案)の最新動向をお伝えします。
先週までは、「CLARITY Actはいつ成立するのか」が市場の最大の関心事でした。
しかし、この数日で議論の焦点は少し変わってきました。
現在のテーマは、「成立するかどうか」ではなく、「どのような内容で成立するのか」です。
私は複数の現地メディアや議会関係者の情報を確認しましたが、民主党内でも暗号資産を支持する議員たちは、法案そのものには賛成しながらも、現在の法案には修正が必要だという姿勢を強めています。
これは市場にとって非常に重要な変化です。
なぜなら、「民主党は反対、共和党は賛成」という単純な構図ではなくなってきているからです。
民主党が問題視しているもの
現在、民主党が特に重視している論点は三つあります。
一つ目は「倫理規定(Ethics)」です。
民主党は、市場構造法を整備するのであれば、大統領や政府高官、議員本人やその家族が暗号資産事業から不当な利益を得ないよう、より厳格な利益相反ルールを設けるべきだと主張しています。
この議論の背景には、トランプ大統領と暗号資産業界との関係があります。
民主党側は、制度を整備すること自体には反対しているわけではありません。
ただ、「制度を作る政治家自身が、その制度から利益を受けることがあってはならない」という考え方を強く打ち出しています。
二つ目は、「Illicit Finance(違法金融)」です。
これは単純に犯罪を意味する言葉ではありません。
民主党が懸念しているのは、マネーロンダリング、制裁逃れ、テロ資金供与、不正送金などに暗号資産が利用されるリスクです。
つまり、
「新しい市場を作るなら、その市場が犯罪に利用されない仕組みも同時に整備するべきだ」
という考えです。
暗号資産業界ではAML(アンチ・マネーロンダリング)やKYC(本人確認)が年々強化されていますが、民主党はさらに厳格な管理体制を求めています。
三つ目は、「消費者保護」です。
これは共和党も民主党も必要性では一致しています。
ただし、「どこまで投資家保護を強めるべきか」という点では温度差があります。
暗号資産支持派の民主党も修正を要求
今回興味深いのは、暗号資産を支持する民主党議員の間でも、
「CLARITY Actは必要だ。しかし、今の内容では十分ではない。」
という意見が増えていることです。
現地報道では、複数の民主党議員が、現在の共和党案は倫理規定や違法金融対策が不十分だと指摘しています。
つまり、
「法案そのものに反対している」のではなく、
「もっと完成度を高めて成立させたい」
という姿勢なのです。
これは非常に重要なポイントです。
市場では、「民主党が反対している」という見出しだけが目立ちます。
しかし実際には、「より修正したうえで成立を目指す」という意見も少なくありません。
なぜ時間がかかるのか
現在、上院では共和党だけでは法案を成立させることができません。
通常手続きでは60票が必要となるため、民主党議員の協力が不可欠です。
つまり共和党は、
「民主党が納得できる修正」
をどこまで受け入れるかが重要になります。
この交渉が現在も続いています。
そのため、市場が期待しているほど簡単には採決まで進まない可能性があります。
私が注目していること
私自身は、法案が数週間遅れること自体は、それほど重要ではないと考えています。
むしろ重要なのは、
アメリカが暗号資産市場を正式な金融インフラとして整備する方向性を維持していることです。
SEC、CFTC、財務省、そして民主党・共和党双方とも、
「市場構造法そのものは必要」
という認識では大きく変わっていません。
違うのは、
「どのようなルールにするのか」
だけです。
私はこれが非常に大きなポイントだと思っています。
数年前までのアメリカでは、
「暗号資産をどう規制するか」
という議論でした。
しかし今は、
「どのようなルールで市場を育てるか」
という議論へ変わっています。
これは暗号資産市場が成熟してきた証拠でもあります。
今後、何を見るべきか
私は今後、次の四つを注目しています。
・民主党と共和党が倫理規定についてどこまで妥協できるか。
・AMLや違法金融対策がどのように法案へ反映されるか。
・上院本会議の日程がいつ正式に決まるのか。
・最終法案でSECとCFTCの役割分担がどのように整理されるのか。
これらは、アメリカだけではありません。
日本で議論されている暗号資産ETF、RWA、DeFi、そしてオンチェーン金融の制度設計にも、大きな影響を与える可能性があります。
だからこそ、私はCLARITY Actを単なるアメリカの法律ではなく、「世界の暗号資産市場のルール作り」として注目しています。
今後もサンフランシスコから、現地の最新動向をお伝えしていきます。


