「様子見」は正しかった──FOMC後に見えたビットコイン市場の本音【エックスウィン】

デリバティブ市場とオンチェーンデータが示していた「イベント待ち」の投資家心理

●FOMCでは市場予想通り政策金利は据え置かれた。一方で声明やFRBの姿勢は市場が想定していた以上にタカ派と受け止められ、発表後は暗号資産市場のボラティリティが拡大した。
●しかし、FOMC前のオンチェーンデータやデリバティブ市場の指標を見ると、多くの投資家が積極的な売買を控え、「結果待ち」の姿勢を取っていたことが確認できる。
●テイカー売買比率、トレーダー行動、Funding Rate、取引所流入量という4つの指標は、イベント前の市場心理を非常に正確に映し出していた。

市場はFOMCをどのように迎えたのか

FOMC後は価格が大きく動いたが、重要なのは「市場参加者が発表前にどのようなポジションを取っていたのか」である。価格だけを見ていては、結果しか分からない。しかし、デリバティブ市場やオンチェーンデータを分析することで、投資家が強気だったのか、弱気だったのか、それとも様子見だったのかという「市場心理」を読み解くことができる。

本稿では、FOMC前後の市場を4つの主要指標から振り返る。

・テイカー売買比率(積極的な買い・売りのバランス)
・無期限先物市場におけるトレーダー行動(ポジションの変化)
・Funding Rate(ロング・ショートの需給)
・取引所への総流入量(売却圧力の有無)

これら4つの指標を総合すると、FOMC前の市場は「明確な方向感を持たず、結果を待っていた」ことが浮かび上がる。そして、FOMC後の値動きを振り返ることで、事前に見えていた市場心理が実際にどのような意味を持っていたのかを検証していきたい。

テイカー売買比率は「完全な均衡」を示していた

<【図1:ビットコイン:テイカー売買比率(全取引所)】>

最初に注目したいのが「テイカー売買比率(Taker Buy Sell Ratio)」である。

この指標は、市場で積極的に買い注文を出している投資家と、積極的に売り注文を出している投資家の勢力を比較したものだ。

一般的に、

・1.0を上回れば買い優勢
・1.0を下回れば売り優勢

と解釈される。

今回のFOMC直前では、この比率が1.0付近で推移していた。つまり、買い手と売り手がほぼ均衡していたのである。通常、大きなイベント前にはどちらかへ大きく傾くケースが多い。しかし今回は、多くの投資家が方向性を決めず、FOMCの結果を見極めようとしていた。

実際にFOMC通過後に価格変動が大きくなったことを考えると、このチャートは「市場全体がイベント待ちだった」という状況を的確に示していたと言える。

トレーダー行動は「慎重姿勢」が鮮明だった

Time-series chart of Bitcoin trader behavior dominance in perpetual futures, showing long/short positions and profit-taking/liquidation from June to July, with CryptoQuant watermark and a July 30 vertical highlight.
<【図2:ビットコイン:無期限先物市場におけるトレーダー行動の優勢度】>

続いて確認したいのが、無期限先物市場におけるトレーダー行動である。

このチャートでは、

・青:ロングポジション構築
・赤:ショートポジション構築
・黒:ロング利益確定
・ピンク:ショートカバー

を表している。

FOMC直前を見ると、新規ロングやショートが大きく増えている様子は確認できない。一時的にショートポジションが優勢になる場面はあったものの、62,000~63,000ドル付近では何度も下落が止められた。

つまり、市場は積極的に下落へ賭けていたのではなく、「様子を見ながら小さくポジション調整をしていた」状態だった。イベント前の慎重な市場心理がよく表れているチャートと言える。

③ Funding Rateは強気心理を維持していた

Bitcoin funding rates (all exchanges) over time with price on the right axis, Jan–Jul time range. Green/black/red lines show funding and price trends.
<【図3:ビットコイン:資金調達率(Funding Rate・全取引所)】>

Funding Rateは、デリバティブ市場におけるロング・ショートの需給バランスを示す代表的な指標である。

プラス圏ではロング需要が優勢となり、マイナス圏ではショート需要が優勢となる。6月以降、Funding Rateは継続してプラス圏を維持していた。これは、市場参加者の基本スタンスが依然として「中長期では上昇を期待している」ことを意味している。

一方で、Funding Rateが長期間プラス圏にあるということは、ロングポジションが積み上がっている状態でもある。今回のFOMC後に価格変動が拡大した背景には、このロングポジションの偏りも一因として考えられる。

市場は強気を維持していたものの、その分だけボラティリティが高まりやすい環境だった。

取引所への流入量は低水準だった

Line chart of Bitcoin price (USD) and total exchange inflow across all exchanges over time (Apr–Jul).
<【図4:ビットコイン:取引所への総流入量(全取引所)】>

最後にオンチェーンデータを確認すると、取引所へのビットコイン流入量は依然として低水準だった。

一般的に、

保有者がビットコインを取引所へ送金する

売却準備

というケースが多い。しかし、FOMC直前でも大規模な流入は確認されなかった。これは、多くの長期保有者が慌てて売却しようとしていなかったことを意味する。市場は政策金利据え置きをある程度織り込んでおり、「結果を見てから判断する」という姿勢が優勢だったことが読み取れる。

4つの指標が示していた「イベント待ち」

今回のFOMCを振り返ると、政策金利そのものよりも、FRBの今後の金融政策に対する姿勢が市場の焦点となった。

一方で、イベント前のオンチェーンデータやデリバティブ市場の各種指標は、一貫して「市場参加者が積極的な方向性を決めず、結果を待っている」状態を示していた。

・テイカー売買比率は1.0付近で均衡
・無期限先物市場では新規ポジション構築が限定的
・Funding Rateはプラス圏を維持し、中長期の強気心理は継続
・取引所への流入量は低水準で、大規模な売却準備は見られない

そしてFOMC通過後、市場は新たな情報を織り込みながらボラティリティを拡大させた。

今回あらためて確認できたのは、オンチェーンデータは「価格を予測するツール」ではなく、「市場参加者がどのようなポジションを取り、どのような心理状態にあるのか」を客観的に映し出すツールであるという点だ。

価格だけでは見えない投資家心理を把握できることこそ、オンチェーン分析の大きな価値であり、今回のFOMCでもその有効性が改めて示されたと言える。

ショート動画

FOMC後、ビットコイン市場で何が起きたのか?4つのデータが示した真実https://youtube.com/shorts/mdQEFW_pmvg

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