暗号資産取引所は「世界の金融取引所」へ──Open Interestが示す資本集中とTradFi市場への進出【エックスウィン】

●暗号資産デリバティブ市場の未決済建玉(Open Interest)は約650億ドル規模となっており、Binance、Bybit、Gateの上位3取引所で約63%、上位5社では約81%を占めるなど、資本は一部の巨大取引所へ集中している。
●Binanceは暗号資産市場で約35%のシェアを維持し、TradFi(株式・ETF・金・原油など)のパーペチュアル市場でも約35%を占めており、暗号資産・TradFi双方で最大の流動性を持つプラットフォームとなっている。
●暗号資産市場全体のOpen Interestは2025年後半から2026年前半に記録した約800億ドルのピークから約20%減少した。一方、その間にTradFiパーペチュアル市場は約2倍へ成長しており、資本が新たな市場へ循環している様子が確認できる。
●暗号資産取引所は暗号資産だけを扱う存在ではなく、24時間365日あらゆる金融商品を取引できる「次世代のグローバル金融市場」へ進化し始めている。

Open Interestが示す「資本の地図」

暗号資産市場では価格や出来高が注目されることが多いですが、市場全体の資金量を把握する上で最も重要な指標の一つがOpen Interest(未決済建玉)です。

Open Interestとは、現在市場に残っている先物・パーペチュアル契約の総額を意味します。つまり、「どれだけ多くの資金が市場へ投入され、まだ決済されずに残っているか」を示す指標です。

出来高は一日に何度でも売買されるため短期的な盛り上がりを表しますが、Open Interestは実際に市場へ滞留している資本を表します。そのため、多くの機関投資家やプロトレーダーは価格以上にOpen Interestの変化を重視しています。

今回のデータでは、市場全体のOpen Interestは約650億ドルとなっています。しかし注目すべきなのは市場規模だけではありません。「その資本がどこへ集まっているのか」という点です。

資本は巨大取引所へ集中している

添付チャートを見ると、暗号資産デリバティブ市場は非常に偏った構造になっていることが分かります。

2026年7月28日時点では、Binanceが約313.4億ドルと市場全体の約35%を占め、2位のBybit(約114.4億ドル)を大きく引き離しています。さらに、OKX(約87.0億ドル)、Bitget(約87.3億ドル)、Gate(約85.9億ドル)が続き、上位5取引所だけで市場全体の約8割以上の未決済建玉を保有しています。

暗号資産パーペチュアル先物市場の未決済建玉Open Interestを示す積み上げグラフ。右上に取引所別上位5位の表がある。

このランキングから分かるのは、暗号資産デリバティブ市場では「勝者総取り」の構造がさらに強まっていることです。流動性の高い取引所ほど注文が集まり、約定しやすくなり、その結果さらに多くの資金が流入するという好循環が生まれています。

これはNYSEやNASDAQへ売買が集中する株式市場と同様のネットワーク効果であり、暗号資産市場でも資本が少数の巨大取引所へ集中する構図が定着しつつあります。

また、今回のランキングを見ると、Binance・Bybit・OKX・Bitget・Gateという顔ぶれは、現物市場だけでなくデリバティブ市場でも中心的な存在となっており、今後TradFi(株式・ETF・コモディティ)のパーペチュアル市場が拡大しても、この優位性が維持される可能性は高いと考えられます。

Open Interestはピークから約20%減少

2025年後半から2026年前半にかけて、市場全体のOpen Interestは約800億ドルまで拡大しました。しかし現在は約650億ドル前後となり、およそ20%減少しています。

この数字だけを見ると、「市場から資金が逃げている」と考える人もいるかもしれません。

しかし、必ずしもそうではありません。Open Interestが過度に増える局面では、レバレッジが積み上がり、市場は非常に不安定になります。

わずかな価格変動でも大量のロスカットが発生し、市場全体が急落するリスクが高まります。そのため、Open Interestが適度に整理されることは、健全な市場へ戻るための自然なプロセスとも考えられます。

実際、今回のデータを見ると、市場全体の資金が消えたというより、一部の資金が新しい市場へ移動していることが分かります。

資本はTradFi市場へ流れ始めた

最も注目すべき変化はTradFiパーペチュアル市場です。TradFiとはTraditional Finance、つまり株式、ETF、金、銀、原油など従来型金融商品を意味します。近年、多くの暗号資産取引所は、これらの資産を24時間365日取引できるパーペチュアル商品として提供し始めました。

市場規模はまだ約20億ドル程度ですが、2026年5月以降だけでも約2倍へ急拡大しています。もちろん、暗号資産デリバティブ市場約650億ドルと比較すると、まだ約3%程度に過ぎません。

しかし、市場の成長率という観点では最も勢いのある分野です。これは従来の暗号資産投資家だけでなく、株式やコモディティを取引したいユーザーも暗号資産取引所へ集まり始めていることを意味しています。

BinanceはTradFiでも圧倒的な存在感

興味深いのは、TradFi市場が成長しても勢力図はほとんど変わっていないことです。TradFi市場でもBinanceが約35%のシェアでトップを維持しています。さらにBybit、Gateも暗号資産市場と同様に上位へ位置しています。

つまり、新しい市場が生まれても、新しいプレーヤーが勝っているわけではありません。既に巨大な流動性を持ち、多くのユーザーを抱える取引所が、その優位性をそのまま新市場へ持ち込んでいます。
これは取引所ビジネスにおいて「流動性」が最大の競争力であることを改めて示しています。

利用者が多い市場にはさらに利用者が集まり、その結果として流動性が高まり、さらに資金が流入するという好循環が続いています。

暗号資産取引所は「金融スーパーアプリ」へ

数年前まで暗号資産取引所は、ビットコインやイーサリアムを売買する場所という認識が一般的でした。しかし現在、その姿は大きく変わり始めています。

暗号資産だけではなく、

・世界の株式
・ETF
・金
・銀
・原油
・指数

こうした金融商品を一つの口座で24時間365日取引できる環境が整いつつあります。これは単なるサービス拡大ではありません。

暗号資産取引所そのものが「世界共通の金融インフラ」へ進化しようとしていることを意味します。特に若い世代にとっては、証券会社よりも暗号資産取引所の方が最初に利用する金融サービスになる可能性も十分考えられます。

今回のOpen Interestデータから最も重要なメッセージは、「資金が減った」のではなく、「資金の使われ方が変わり始めた」という点です。

暗号資産デリバティブ市場は依然として650億ドルという巨大市場を維持しながら、一部の資本は急成長するTradFiパーペチュアル市場へ流れています。

そして、その恩恵を最も受けているのはBinance、Bybit、Gateなど、既に高い流動性とユーザー基盤を築いた大手取引所です。

今後、TradFi商品の種類がさらに増え、規制環境が整備されれば、暗号資産取引所は「ビットコインを売買する場所」ではなく、「世界中のあらゆる資産を24時間取引するグローバル金融市場」として位置付けられる可能性があります。

今回のOpen Interestの推移は、その大きな転換点を示す重要なデータと言えるでしょう。

ショート動画

暗号資産取引所は「世界の証券取引所」へ?Open Interestが示す新時代
https://youtube.com/shorts/ZBAUD_Dkk2

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