WebX 2026で7月14日、パネルセッション「メタプラネットの次なる成長戦略 ビットコイントレジャリーとデジタルクレジットが拓く日本発の金融エコシステム」が開催された。

登壇したのは、メタプラネット執行役の奥野晋平氏と、メタプラネット証券代表取締役CEOの小村和輝氏。Web3を活用した新たな金融商品の構想と、両社が描くデジタルクレジット市場の未来について語った。
メタプラネットは約2年間で5000億円を超える資金を調達し、ビットコイン(BTC)の保有量を上場企業で世界3位、国内では首位の規模まで拡大した。約4万3000BTCを保有する同社は、ビットコインを積み上げた先に何を目指すのか。

奥野氏は「次の一手」としてWeb3を活用した新しい金融事業への展開を明かした。一定の事業規模と資金調達力を基盤に、社債や優先株などの新たな金融商品を市場で発行していく考えだ。奥野氏は、以前から構想していた取り組みだとしたうえで、「より早く仕掛けていく」と語った。
この構想において重要な役割を担うのが、7月13日付でメタプラネットグループに参画し、Siiibo証券から商号を変更したメタプラネット証券だ。
同社はこれまで、私募債(不特定多数を対象とする公募ではなく、限られた投資家を対象に発行する社債)を専門に扱い、スタートアップや未上場企業のクレジット市場を開拓してきた。小村氏は、メタプラネットグループへの参画により、同社が課題としていた情報発信力や事業基盤を強化できると説明した。メタプラネットの発信力や事業基盤と、メタプラネット証券の社債事業を組み合わせ、市場を広げる考えだ。
一方、既存の資本市場や株式市場の仕組みについて、奥野氏は「Web3の目線から見るとあり得ないことが2つある」と指摘する。
1つ目は「紙の無駄遣い」だ。配当金や税金の案内を郵送で行うアナログな手法に疑問を呈した。そして、2つ目は「タイムラグ」である。例えば、3月に権利が確定しても、株主名簿の確認や税金計算などのシステム処理に時間がかかり、実際に配当金が入金されるのは3ヶ月後の6月になってしまう。24時間365日グローバルで取引されるデジタルなビットコインに対し、資金調達の場となる既存金融のシステムはあまりにもアナログだという。
奥野氏はこの課題に対し、「Web3の技術を活用し、すべてデジタルで完結させることで、極論『T+0(取引当日決済)』も可能になる」と語り、投資家にとってよりフレンドリーな金融商品を作っていく決意を述べた。
では、具体的にどのように市場を開拓していくのか。奥野氏は大きく3つのステップを掲げた。
まずはビットコインを裏付けとした利回り商品を発行し、投資家に新しい金融商品へ「慣れてもらう」フェーズ。次に商品をセキュリティ・トークン(ST)化し、JPYCなどのステーブルコインを利払いや決済に活用するフェーズ。そして最終的には、大きな市場へスケールしていくという流れだ。

この構想について小村氏は、メタプラネット証券が手がけてきた私募債の発行やセカンダリー取引の仕組みを、新たな金融商品の流通にも活用する考えを示した。
あわせて、Web3の技術で利払いのサイクルも大きく縮めていく方針だ。同社が現在取り扱う社債は半年ごとの利払いが主流だが、小村氏はこれをSTやステーブルコインによって月払いへ移し、「究極的には日払いで利息を受け取れる商品へ広げたい」と語った。
また、議論は、日本の債券市場が抱える構造的な課題にも及んだ。奥野氏は「日本の資本市場には、ハイイールド債券の市場が実質的に存在しない。イールド(利回り)を求める投資家にとって、クレジットリスクを取る選択肢が全くないのが現状だ」と指摘する。国内投資家が利回りを求める場合、米国債などの海外商品を購入し、為替リスクや地政学リスクを取るケースが多いのだという。
奥野氏は、メタプラネットが自ら発行体となって新しいプロダクトを供給し、投資家に新たな選択肢を提供していく方針を示した。その上で、この市場開拓において、私募債を専門としてきたメタプラネット証券の存在を挙げ、「彼らが元々手がけてきた領域であり、非常に強いシナジーを感じている」と強調した。
|取材・文・撮影:平木昌宏


