● TradFi Equity Perpetualの拡大は、新しいデリバティブ商品の登場ではなく、「金融市場の24時間化」という大きな流れの始まりである。
● RWA(Real World Assets)、トークン化証券、ステーブルコインの普及が進めば、株式、債券、不動産、コモディティなど、あらゆる資産がブロックチェーン上で24時間取引される可能性がある。
● エックスウィンでは、2030年頃には「暗号資産市場」と「伝統的金融市場」という区別は次第に薄れ、ブロックチェーンを基盤とした新しい金融インフラが世界の標準になっていくと考えている。
TradFi Equity Perpetual編・第3回
第1回では、暗号資産取引所でTradFi Equity Perpetualが急拡大している背景について解説した。
第2回では、その象徴ともいえるSpaceX人気から、未上場企業への投資需要と資本市場の民主化について考察した。
そして最終回となる今回は、この流れが金融市場全体をどのように変えていくのかを考えてみたい。

図を見ると、BinanceにおけるTradFi株式パーペチュアル先物の取引高は、2026年6月に急激な拡大を見せている。CryptoQuantの分析によれば、この増加を最も大きくけん引したのがSpaceX(SPCX)のパーペチュアル先物であり、MicroStrategy(MSTR)、Circle(CRCL)、Intel(INTC)などの関連銘柄も取引を伸ばした。
重要なのは、この急増が単なる一時的なブームではなく、暗号資産取引所が株式や未上場企業への投資ニーズを取り込み始めたことを示している点である。市場はすでに、「暗号資産だけを取引する場所」から、「あらゆる資産へアクセスできる金融プラットフォーム」へと変化し始めている。
現在、世界の金融業界では「トークン化(Tokenization)」が大きなテーマとなっている。
これまで株式、債券、不動産などの資産は、それぞれ異なる市場やシステムで管理されてきた。しかし近年では、それらをブロックチェーン上でデジタル化し、より効率的に発行・保有・取引しようという動きが加速している。
世界最大級の資産運用会社であるBlackRockは、トークン化ファンドを立ち上げるなど、デジタル資産を次世代の金融インフラとして位置付け始めている。また、Franklin Templetonをはじめとする大手運用会社も、ブロックチェーンを活用した金融商品の実用化を進めている。
つまり、ブロックチェーンは暗号資産だけの技術ではなく、伝統的金融そのものを支える基盤へと変わり始めているのである。
この流れの中で注目されるのが、「24時間金融市場」という考え方だ。
暗号資産市場では、24時間365日取引できることが当たり前となっている。一方、株式市場は国ごとに取引時間が決まっており、土日や祝日は基本的に取引できない。
しかし、世界中で資金がリアルタイムに動く時代において、「市場が閉まっている」という仕組みそのものが見直され始めている。
TradFi Equity Perpetualは、その変化を象徴する商品である。
投資家は、証券取引所が開くのを待つのではなく、自分が取引したいタイミングで世界中の資産へアクセスしたいと考えている。暗号資産取引所は、その需要に応える形で24時間取引という新しい市場モデルを提供している。
さらに今後は、対象となる資産も株式だけにとどまらないだろう。
ETF、国債、社債、不動産、REIT、金、原油、さらにはカーボンクレジットや知的財産権など、多様な資産がトークン化され、ブロックチェーン上で流通する未来が議論されている。
もちろん、その実現には規制の整備が不可欠である。
投資家保護、価格の透明性、資産の裏付け、マネーロンダリング対策など、多くの課題を解決しなければならない。また、国ごとに法制度が異なるため、国際的なルール作りも重要になる。
一方で、規制は「止めるため」ではなく、「安全に普及させるため」の段階へと移りつつある。
米国ではデジタル資産市場の制度整備が進み、香港やシンガポール、中東でもWeb3やRWAを成長戦略として位置付ける動きが活発化している。
日本でも暗号資産を金融商品として位置付ける制度改正や、ステーブルコインの実用化など、少しずつ環境整備が進んでいる。
世界の潮流を見ると、「暗号資産市場」と「証券市場」が競争する時代ではなく、「融合する時代」に入ったと考えるべきだろう。
その意味で、TradFi Equity Perpetualは単なる新しいデリバティブ商品ではない。
これは、金融市場そのものが変化していることを示す重要なシグナルなのである。
エックスウィンでは、今後5年から10年で金融市場の中心的なテーマは「トークン化」と「24時間金融市場」になると考えている。
暗号資産取引所は、暗号資産だけを売買する場所ではなく、世界中のあらゆる資産を一つのプラットフォームで取引できる総合金融市場へと進化していくだろう。
そして将来的には、投資家が「これは暗号資産」「これは株式」「これは債券」と意識する場面は少なくなっていくかもしれない。
重要なのは資産の種類ではなく、「どのようなリスクとリターンを持つ資産なのか」を、同じ市場で比較し、自由に選択できることになる。
TradFi Equity Perpetualの急拡大は、その未来への第一歩に過ぎない。
私たちは今、「暗号資産が金融に近づいている」のではなく、「金融そのものがブロックチェーンへ近づいている」という歴史的な転換点に立っているのである。
■用語解説
TradFi Equity Perpetual(伝統的株式パーペチュアル先物)とは、株式そのものを保有するのではなく、株価の値動きに連動するデリバティブ商品を暗号資産取引所で24時間365日取引できる金融商品です。通常の株式市場では、証券取引所が開いている時間しか売買できませんが、TradFi Equity Perpetualではビットコインやステーブルコインを証拠金として、株価の上昇・下落をいつでも取引できます。また、レバレッジを利用した取引も可能であり、暗号資産市場で培われた高い流動性や24時間取引の利便性を、伝統的な金融資産にも広げた新しい仕組みとして注目されています。
ただし、TradFi Equity Perpetualは株式そのものを保有する商品ではありません。そのため、議決権や配当など株主としての権利は得られず、あくまで株価の変動による損益を取引するデリバティブ商品です。それでも、これまで一般投資家がアクセスしにくかった未上場企業や海外株式などへ、世界中から24時間取引できる点は大きな魅力となっています。近年ではSpaceX関連商品の人気をきっかけに取引が急拡大しており、暗号資産市場と伝統的金融市場(TradFi)の融合を象徴する新たな市場として注目されています。
■ショート動画
【第3回】2030年、金融市場は24時間365日になる TradFi Perpetualが変える未来
https://youtube.com/shorts/HoWoxXU2H5s


