● 前編では、CryptoQuant CEOのKi Young Ju氏が公開したデータをもとに、ビットコイン市場では価格を押し上げるために必要な資本が飛躍的に増加し、市場構造そのものが大きく変化していることを解説した。
● 後編では、オンチェーン分析の代表的な指標である「Realized Cap(実現時価総額)」から、現在の市場構造をさらに深く読み解く。
● エックスウィンでは、今後の強気相場は資本流入だけでは説明できず、ETFを通じた長期資金の拡大、マクロ環境の改善、そして市場全体のバリュエーション拡大が重要な鍵になると考えている。
Realized Capが示す「本当のお金の流れ」
前編では、「ビットコイン価格を押し上げるためには、以前とは比較にならない規模の資本が必要になった」ことを見てきました。
では、その「資本」とは具体的に何を指しているのでしょうか。
そこで重要になるのが、CryptoQuantが日々分析している「Realized Cap(実現時価総額)」です。
一般的な時価総額(Market Cap)は、
現在価格 × 発行枚数
で計算されます。
そのため、価格が上昇すれば、それだけで時価総額は大きく増加します。
一方、Realized Capは考え方が大きく異なります。各ビットコインが最後にオンチェーン上で移動した価格を基準に評価するため、実際に売買が行われ、新しい価格帯で保有者が入れ替わらなければ数値は増加しません。
つまり、Realized Capは「市場が実際に受け入れた資本」の大きさを示す指標なのです。
だからこそ、多くのオンチェーンアナリストは、この指標を市場構造を分析する上で最も重要な指標の一つとして位置付けています。

CryptoQuantのチャートを見ると、その変化は非常に分かりやすく表れています。
2018年頃には約800億ドル規模だったRealized Capは、2021年には約4,500億ドルまで増加し、現在では1兆ドルを超える水準へ到達しています。
これは、ビットコイン市場が世界中から過去最大規模の資本を受け入れる市場へ成長したことを意味しています。
しかし、このチャートを見て、多くの人が一つの疑問を持つでしょう。
「これだけ資本が流入しているのに、なぜ2021年のような熱狂相場にならないのか?」
ここが今回の分析で最も重要なポイントです。
「資本流入」と「価格上昇」は同じではない
エックスウィンでは、この疑問を理解するためには、「Realized Cap」と「Market Cap」の違いを理解することが重要だと考えています。
Realized Capは、市場へ実際に流入した資本を表します。
一方、価格は市場参加者がその資産にどれだけ高い価値を認めるか、つまり「評価(バリュエーション)」によって決まります。
言い換えれば、資金が流入したことと、価格が大きく上昇することは必ずしも同じではありません。
近年、米国では現物ビットコインETFが承認され、多額の資本が市場へ流入しました。しかし、その資金の多くは短期的な投機資金ではなく、資産運用会社や年金基金、ファミリーオフィスなどによる長期保有を前提とした資金です。
そのため、市場には大量の資本が流入していても、2021年のような短期間で価格が何倍にも膨らむような相場にはなりにくくなっています。これは市場が弱くなったのではなく、市場参加者が変わった結果だと言えるでしょう。
ビットコインは「投機資産」から「マクロ資産」へ
今回のCryptoQuantの3つのチャートを通して見えてくるのは、ビットコイン市場の本質的な変化です。
かつてのビットコイン市場は、個人投資家が中心となる小さな市場でした。
少額の資金でも価格は大きく動き、数万%という驚異的な上昇も珍しくありませんでした。
しかし現在では、市場へ流入する資本は数千億ドル規模となり、ETFを通じて世界中の機関投資家が参加する市場へと変化しています。
価格を動かすためには以前よりも多くの資本が必要になりましたが、それは市場が成熟した証拠でもあります。
AppleやMicrosoft、あるいは金(ゴールド)の市場が小さな資金で大きく動かないのと同じように、ビットコインも世界的なマクロ資産へと成長しているのです。
次の強気相場に必要な条件
では、今後のビットコイン市場に必要なものは何でしょうか。
エックスウィンでは、次の強気相場には三つの条件が重要になると考えています。
第一に、機関投資家による資金流入の継続です。
ETFの普及は始まりに過ぎません。
今後、年金基金や保険会社、ソブリン・ウェルス・ファンドなどが本格的に資産配分を拡大すれば、市場構造はさらに大きく変化する可能性があります。
第二に、マクロ環境の改善です。
ビットコインは現在、金利やドル流動性、株式市場など伝統的金融市場との連動性を強めています。
金融緩和やドル流動性の改善は、ビットコイン市場にとっても重要な追い風となるでしょう。
そして第三に、市場全体のバリュエーション拡大です。
Realized Capが増えるだけでは十分ではありません。
市場参加者が「ビットコインにはもっと高い価値がある」と評価し、その評価倍率が拡大することで、初めて本格的な強気相場が形成される可能性があります。
今回のKi Young Ju氏の投稿は、「ビットコインは今後上がる」という単純な価格予想ではありません。むしろ、「ビットコイン市場は成熟し、新たなステージへ進んだ」という市場構造の変化を示す分析だと、エックスウィンでは考えています。
興味深いことに、Ki氏は投稿の最後で「現在、金(ゴールド)の市場規模は約27兆ドルである」とも述べています。これは、ビットコイン市場がすでに巨大化したとはいえ、世界最大級の価値保存資産である金と比較すれば、依然として成長余地が残されていることを示唆しています。
もちろん、ビットコインが金と同じ市場規模になる保証はありません。しかし、「デジタルゴールド」という位置付けが今後さらに定着し、世界中の機関投資家による資産配分が進めば、長期的には市場がさらに成長する可能性は十分に考えられます。
価格だけを見ていては、市場の本質は見えてきません。どれだけ資本が流入しているのか。その資本は誰のお金なのか。市場はその資本をどのように評価しているのか。こうした市場構造を読み解くことが、これからのビットコイン分析には欠かせません。
エックスウィンでは今後もCryptoQuantとの連携を通じて、日本国内にオンチェーン分析の価値を広めるとともに、価格の裏側にある市場構造を、データに基づいて発信してまいります。
■ショート動画
【後編】 ビットコインは再び大相場を迎えるのか CryptoQuant CEOが示した次の強気相場の条件
https://youtube.com/shorts/zEWHJDUmNK0?si=NfIi2z6KnDmTKYEq



