金塊(金インゴット)取引プラットフォームを開発するアウラムは6月29日、金塊を金庫内に保管したまま、売買に伴う所有権移転の過程をブロックチェーン上に記録する技術実証(PoC)を実施したと発表した。
自社開発のブロックチェーン台帳「AURAM」を活用し、特定の金塊1本ごとの所有者情報をNFTで記録・管理する仕組みを検証した。
今回の実証の焦点は、金庫に保管された特定の金塊について、現物を動かさずに、所有権移転の手続きがどのように行われたのかを記録し、その手続きの履歴を第三者が確認できる形で残せるかを検証した点にある。
RWA(現実資産)の実用化に向けては、ブロックチェーン上の記録が、現実世界の資産に対する権利と本当に結びついているのかが課題の一つとなる。
今回のPoCは、金塊というRWAを対象に、所有権移転の手続きをブロックチェーン上で確認できる形にする試みといえる。
同社はこの技術により、金などの実物資産を安全に保管したまま、売買や将来的な担保活用につなげる基盤の構築を目指すという。

実証では、民法第184条の「指図による占有移転」という仕組みを用いた。これは、現物を直接手渡ししなくても、売主が保管者に引き渡しを指図し、買主がそれを承諾することで、法律上の引き渡しにあたると整理する仕組みだ。
同社は、売主が保管者に出す指図と、買主による承諾を、それぞれ別のブロックチェーン上の記録として残し、所有権移転の過程を改ざんが難しいデジタル記録として残す仕組みを実装したという。
リリースによると、従来の金の預かりサービスの多くは、顧客が預けた金の所有権が事業者側に移り、顧客は同じ種類・量・品質の金を返してもらう権利を持つ形になる。
一方、AURAMが想定するモデルでは、特定の金塊そのものの所有権を顧客側に残し、その所有者を台帳上で管理する。
ただし、この仕組みによって第三者にも所有権を主張できる法的要件を満たせるかについては、現在も確認中としている。
アウラムは、民法第184条の「指図による占有移転」により、民法第178条に基づき、第三者に対しても所有権を主張できる状態になるとの見解を、複数の弁護士の助言に基づき持っている。
その確認のため、経済産業省のグレーゾーン解消制度を通じて法務省に照会しており、現在は回答を待っている段階としている。

今回のPoCは、アウラム代表の福田和博氏が代表を務める2法人間で実施した。
対象は100g、純度999.9のデモ用金塊で、Avalanche Fujiテストネットを使用した。
製造者や刻印、外観写真などをもとに、金塊を識別するためのハッシュ値をブロックチェーン上に記録した。一方、シリアル番号や元の写真など、公開に適さない情報はブロックチェーン上には載せず、限られた事業者だけが確認できる仕組みで管理する設計とした。
なお、今回のPoCは技術面と法的な整理を検証するためのもので、実際の売買契約の締結や代金決済は行っていないという。

アウラムは今後、この技術をもとに金塊取引プラットフォーム「KINGOT」の開発を進める方針だ。
2026年度中に、まずは招待制の限定サービスとして法人向けに提供を始め、倉庫事業者との提携が確定した後、2027年度以降に本格展開と個人顧客への対応を予定している。
また、金塊の保管を担う倉庫事業者や、取引に参加する地金商、貴金属を扱う事業者との提携も募るという。
|文:平木 昌宏
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