米財務省外国資産管理局(OFAC)は、カンボジアの上院議員コック・アン氏と、その関係ネットワークに属する個人および企業計29主体を制裁対象に指定したと発表した。東南アジアを拠点とする詐欺組織が、同氏の影響力のもとで活動し、米国人を含む被害者から数百万ドル規模の資金をだまし取っていたとされる。
今回の措置は、デジタル資産を利用した投資詐欺やサイバー犯罪への対策強化の一環として実施された。詐欺の手口は、恋愛関係や友人関係を装って被害者の信頼を獲得し、高利回りの投資機会を装って資金移動を促す「ロマンス詐欺」などが中心とされる。被害者は暗号資産(仮想通貨)の形で資金を送金させられ、そのまま資金が奪われるケースが多い。
さらに、これらの詐欺拠点では人身売買の問題も指摘されている。偽の求人などで誘い込まれた人々がパスポートを没収され、暴力や脅迫のもとで詐欺行為に従事させられるといった実態が報告されている。施設はカジノやリゾート、オフィスビルなどを改装したもので、資金洗浄の拠点としても機能しているとされる。
コック・アン氏は、こうした施設を所有・運営する企業群を通じてネットワーク全体を支配していたとされる。主力企業であるクラウン・リゾーツやアンコ・ブラザーズなどは、施設の提供や警備人員の配置を行い、詐欺活動を支える基盤を提供していたと指摘されている。カンボジア国内の主要な詐欺拠点の多くがカジノと結びついており、資金洗浄の機能を担っている点も問題視されている。
また、同ネットワークには複数の関係者が関与しており、企業経営者や金融機関も含まれている。特に、カンボジアの銀行や不動産企業などが詐欺資金の移動や管理に関与していたとされ、OFACはこれらの企業も制裁対象に含めた。米国内ではすでに、同ネットワークと連携して資金洗浄に関与した複数の関係者が摘発され、有罪判決を受けている。
今回の制裁措置は、米国の複数機関が連携する「スキャムセンター対策タスクフォース」との協調のもとで実施された。同タスクフォースは司法省、FBI、シークレットサービスなどで構成され、詐欺拠点の摘発や資金追跡、ドメイン差し押さえなどを行っている。今回も、500以上の詐欺関連ウェブサイトの押収や人身売買に関与する通信手段の遮断などが並行して進められた。
米政府によると、2024年には東南アジアを拠点とする詐欺により、米国人の被害額は少なくとも100億ドルに達し、前年比66%増となった。被害の多くは暗号資産投資詐欺によるものであり、個人が全財産を失うケースも報告されている。
米財務長官Scott Bessent(スコット・ベッセント)氏は、「詐欺の撲滅は最優先課題であり、犯罪ネットワークがどこに存在しようと、あらゆる手段で対処する」と述べ、今後も制裁や法執行を通じた対応を強化する方針を示した。
|文・編集:Shoko Galaviz
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