Ondo Finance(オンド・ファイナンス)は、米国債や株式、ETFといった伝統的金融資産のトークン化を手がける企業だ。2月19日には、トークン化預金「DCJPY」のプラットフォームを提供するディーカレットDCPと業務提携に関する覚書(MOU)を締結した。
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同社は、米国債や、BlackRock(ブラックロック)、Franklin Templeton(フランクリン・テンプルトン)、Fidelity(フィデリティ)、WisdomTree(ウィズダムツリー)といった世界最大級の資産運用会社によるMMF(マネー・マーケット・ファンド)を裏付け資産として、自社トークン(OUSGやUSDY)を発行し、オンチェーンで流通させる仕組みを構築している。Ondoは、伝統的な金融商品を規制に準拠した安全な方法でオンチェーン化し、それらへのアクセスをより容易にしている。
Ondo Financeで機関投資家向け事業開発責任者(アジア太平洋および中東・北アフリカ地域担当)を務めるKunaal Patel(クナル・パテル)氏に聞いた。
伝統金融とトークン化の橋渡し
──Ondo Financeはどのような事業を行っているのか。
パテル氏:Ondo Financeは、伝統的な資本市場とトークン化のギャップを埋めることを目的としている。特に米国債のような機関投資家向け資産を、規制に準拠した形でトークン化している。我々は、金融市場をオンチェーン化するために、機関投資家レベルのプラットフォーム、資産、そしてインフラを設計している。
機関投資家と個人投資家の両方を対象に、OUSGやUSDYといったトークンを発行しており、これらはファンドの持分を小口化したものだ。投資家は、米国債のような利回り資産について、ブロックチェーンが生み出すプログラマビリティや流動性を活用することができるようになる。また、USDYは世界をリードするパーミッションレス(自由参加型)な利回り付きコイン(yieldcoin)だ。
──Ondo Financeは、トークン化金融商品の発行体なのか、それともインフラなのか。
パテル氏:両方と考えている。我々のミッションは、これまで機関投資家のみに提供されてきた金融商品やサービスを、誰でも利用できるようにすることだ。
確かに、トークンの発行体でもあり、ブラックロック、フランクリン・テンプルトン、フィデリティ、ウィズダムツリーなどの資産運用会社のファンドを裏付け資産としたトークンを発行している。つまり、伝統的資産をオンチェーン化している。
また、我々は発行だけではなく、こうした資産を扱うためのレール(インフラ)も構築している。米国株やETF(上場投資信託)のトークン化プラットフォーム「Ondo Global Markets」を立ち上げており、6カ月で、すでにTVLは7億ドルを超えている。米国債のトークン化と合わせると、全体のTVLは27億ドルを超える。
さらに、独自のブロックチェーン「Ondo Chain」も立ち上げた。我々は伝統的金融資産をオンチェーン化するための金融インフラを構築している。
BlackRockのトークン化MMFとの違い
──ブラックロックもトークン化された米国債関連商品を提供している。違いはどこにあるのか。
パテル氏:ブラックロックのような大手が参入したことは市場にとって非常に良いことだ。Ondo Financeの米国債関連商品であるOUSGは、ブラックロックの「BUIDL」やフランクリン・テンプルトンの「Benji」、フィデリティ、ウィズダムツリーなど、複数のトークン化MMFを裏付け資産として活用している。
違いとしては、Ondoは複数の資産運用会社のファンドを裏付け資産としている点だ。一方、ブラックロックは自社ファンドが中心になる。加えて、Ondoのプロダクトは機関投資家だけでなく個人投資家にも提供されている。全体として、ブラックロックはOndoにとって重要かつ信頼できるパートナーであり、我々は彼らと密接に協力している。
──米国債をオンチェーンで保有するメリットは何か。
パテル氏:メリットは複数ある。主に以下の点だ。
・利回り:現在の金利環境では、良好な利回りを得ることができる。
・24時間365日、発行・償還が可能:従来の商品にはない特徴だ。
・低い最低投資額:より多くの投資家がアクセスできる。
・裏付け資産の信頼性:米国債は高品質で、低リスク。加えて、透明性や規制面での信頼性もある。
・担保としての可能性:これらの資産は、担保として利用可能だ。
日本市場への見方
──日本市場や円についてどのように見ているか。
パテル氏:日本のような低金利環境では、米国債のような利回り資産へのエクスポージャーを検討することが考えられる。商品によっては4〜4.5%程度の利回りを得ることができる。また、OUSGやUSDYのような商品に投資することで、ポートフォリオの分散が可能になる。
日本は、不動産のトークン化(不動産セキュリティ・トークン)において独自の取り組みを進めている。一方で、海外では株式、ETF、米国債のトークン化が進んでいる。
いずれ、日本の取り組みと、グローバルで進むトークン化の動きは、収れんしていくだろう。我々は日本株に対するグローバルな需要を感じており、これらをトークン化してアクセスを容易にすることに大きな機会があると考えている。
オンチェーン金融は脅威ではない

──銀行や証券会社にとってオンチェーン金融は脅威だろうか。
パテル氏:脅威ではなく、受け入れるべきインフラだと考えている。すべてのプレイヤーが協力してエコシステムを構築していく必要がある。
Ondoはその一部としてインフラを提供しており、日本の金融機関とも協力し、資産をオンチェーン化していきたい。
──ディーカレットDCPとDCJPYをどう評価しているか。
パテル氏:ディーカレットDCPはユニークな存在だ。DCJPYのようなトークン化預金は、金融機関が決済ツールとして利用するための優れたステップ(手段)だ。我々は、自社のトークン化商品の支払いに、DCJPYのようなトークン化預金を利用する可能性を検討している。
Ondoが目指す姿
──5年後、どの程度の資産がトークン化されると考えるか。
パテル氏:具体的な数字を示すことは難しいが、将来的には大部分の伝統的資産がトークン化され、オンチェーン化すると考えている。
現在、株式市場は約120兆ドル規模、そのうち、トークン化されているのは約10億〜20億ドルに過ぎない。Ondoはこの分野の主要な推進役となってきた。まだ大きな余地がある。我々は、安全で、規制に準拠した形で伝統的資産のトークン化を進め、「Wall Street 2.0」と呼べるような世界を目指している。
──今後の展開を教えてほしい。
パテル氏:米国株と米国債のトークン化に加え、「Ondo Global Listing」をローンチした。これは、ニューヨーク証券取引所(NYSE)やナスダック(NASDAQ)の上場企業が、自社株をイーサリアム、ソラナ、BNBチェーン上でトークン化するためのターンキー・サービスだ。既存の上場銘柄だけでなく、IPO当日からの対応も可能となっている。トークン化された株式は、Ondoがリードするウォレット、取引所、プロトコルのエコシステムを通じて、世界中の何十億ものオンチェーン投資家がアクセスできるようになる。
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|インタビュー:橋本祐樹
|文:増田隆幸


