●ビットコイン(BTC)は11月5日、24時間で約5%下落し、7万5800ドル(約1197万6400円)付近となった。選挙後には8万1000ドル(約1279万8000円)を超えていたが、その上げ幅を失った。
●タンカーへの攻撃が報じられ、ホルムズ海峡を通じた供給の混乱に対する懸念が再燃したことで、原油価格が反発した。ブレント原油は97〜98ドル(約1万5326〜1万5484円)近辺まで回復し、WTI原油は90ドル(約1万4220円)を上回った。
●米中間選挙での民主党勝利を受け、AI規制への懸念がハイテク株の重荷となった。暗号資産(仮想通貨)の清算額は11億4000万ドル(約1801億2000万円)を超え、米国のビットコイン現物ETFからは4億3020万ドル(約679億7160万円)が純流出した。
BTCが選挙後の上げ幅を失う──原油価格の変動とAI関連株の売りが重荷
BTCは11月5日(木)に約6%下落し、中央ヨーロッパ時間の午後4時時点で7万5800ドル(約1197万6400円)付近で取引された。約6週間ぶりの安値となった。
前日の11月4日には一時8万1000ドル(約1279万8000円)を超えたが、翌5日の下落で選挙後の上昇分を失った。イーサリアム(ETH)をはじめ、ほかの主要な暗号資産にも再び売り圧力がかかった。
BTCの下落は、米ハイテク株全般の急落と足並みをそろえる動きとなった。Yahoo Finance(ヤフー・ファイナンス)によると、米国の代表的な株価指数であるS&P 500は木曜日に4.36%下落し、前日比334.89ポイント安の7353.73で取引を終えた。1日の下落率としては、関税を巡って株式市場が急落した2025年4月以来の大きさとなった。

投資家は当初、米国とイランの対立を巡る外交交渉の進展を期待し、民主党の勝利を歓迎していた。
しかし、原油価格が反発し、テクノロジー分野への規制懸念が再燃したことで、こうした楽観論は後退した。
市場では、政治情勢の変化がAI投資に与える影響についても見直しが進んだ。
足元では、さらなる下落圧力につながり得る要因として、3つの動きが浮上している。原油供給への懸念の再燃、AI規制を巡る不確実性、そして下落を増幅させる暗号資産デリバティブ市場のポジションの偏りだ。
1.ホルムズ海峡で船舶への攻撃が報じられ、原油は90ドル台(約1万4220円台)を回復
原油価格は、選挙後の水曜日に急落した後、木曜日に反発した。ブレント原油は4%上昇し、1バレル=98ドル(約1万5484円)近辺で取引された。米WTI原油先物の清算値は前日比2.72%高の1バレル=90.52ドル(約1万4302円)だった。
前日の水曜日には、市場が民主党の選挙勝利を外交交渉の進展につながる可能性があると受け止め、両指標とも約8%下落していた。
しかし、海上での事件が再び報じられ、事態が早期に収束するとの期待は揺らいだ。イラン当局は、石油タンカー2隻とタグボート1隻で火災が発生したと発表した。これらの船舶は、ホルムズ海峡で許可されていない航路を利用していたとされる。

Logistics Middle East(ロジスティクス・ミドルイースト)が伝えた英国海運貿易オペレーション(UKMTO)の報告によると、湾岸地域で少なくとも5件の海上の安全に関わる事案が発生した。 11月1日以降、湾岸地域で少なくとも5隻から英国海運貿易オペレーション(UKMTO)に海上保安上の事案が報告された。
米エネルギー情報局(EIA)によると、2025年上半期にホルムズ海峡を通過した石油の量は、世界の石油系液体燃料消費量の約20%に相当した。
報道によると、実際の輸送量は依然として同海峡の推定輸送能力の60%を下回っていた。
米国の在庫統計も、目先の原油供給の引き締まりを示した。米エネルギー情報局(EIA)が水曜日に発表した商業用原油在庫は、87万7000バレルの増加予想に対し、86万5000バレルの減少となった。
2.民主党の新議員がデータセンター拡大を問題視、AI規制への懸念が強まる
BTCの下落は、ハイテク株全般に再び売り圧力がかかるなかで起きた。投資家は、中間選挙での民主党勝利を受けて、AI規制の先行きを見直している。
新たに就任する民主党議員らは、高度なAIの開発に対する安全対策の強化を求めている。ミシガン州の次期上院議員Abdul El-Sayed(アブドゥル・エルサイード)氏は、AI開発の一時停止を訴え、注目を集めている。
エルサイード氏は、11月1日に放送されたCBS News(CBSニュース)の番組『60 Minutes(60ミニッツ)』のインタビューで、「今はAIの開発をいったん止める必要があると思う」と述べた。
「私たちは今、日々耳にする最も重要な問題がAIになるような世界へ、猛烈な勢いで突き進んでいると思う……。今はAIの開発をいったん止める必要があると思う。AIが暴走し、法律に違反したり、ウェブサイトをハッキングしたりするような行動に出ているのを見れば、それは私たち全員にとって重大な警告であるはずだ」──ミシガン州の次期上院議員エルサイード氏。2026年11月1日放送のCBSニュースのインタビューより。
データセンターでは、サーバーや冷却設備の稼働に大量の電力を必要とする。施設の拡大に伴い、電気料金や水の消費量、地域の電力・水道インフラへの負担が懸念されている。
米エネルギー省(DOE)は、2030年までにデータセンターの電力消費が米国全体の約12%を占める可能性があると予測している。
水の消費も課題の一つだ。Forbes(フォーブス)が紹介したローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)の調査によると、米国のデータセンターが2023年に冷却などで直接消費した水は、約174億ガロンと推計される。
このうちAIの処理に伴う消費量は15〜20%、年間約26億〜35億ガロンと推定されている。
データセンターの電力・インフラ懸念が強まり、AI関連株に売り
カリフォルニア州に拠点を置くフィンテック企業Moomoo Technologies Inc.(ムーモー・テクノロジーズ)によると、AI分野を代表する50銘柄で構成される人工知能指数(BK2136)は、木曜日に7.2%下落した。主要AI関連50銘柄の時価総額は取引終了時点で30兆1100億ドル(約4757兆3800億円)となり、7.21%の下落によって、この日の取引で合計2兆3400億ドル(約369兆7200億円)の時価総額が失われた。

構成銘柄を詳しく見ると、値動きには違いがあった。インフラを主力とする企業の株価が大幅に下落する一方、大手クラウド企業やテクノロジープラットフォーム企業の株価は上昇した。
CoreWeave, Inc.(コアウィーブ)の株価は11月4日に9.90%下落して48.42ドル(約7650円)となり、翌5日も9.83%下落して43.66ドル(約6898円)で取引を終えた。
オラクルにも強い売り圧力がかかった。オラクル株は11月5日、前日比6.93%安の115.16ドル(約1万8195円)で取引を終えた。
両社の事業は、AIインフラ投資の動向に大きく左右される。コアウィーブはクラウド上の計算資源を提供し、オラクルはデータセンターとクラウドインフラの事業を拡大してきた。
投資家は、こうした拡大に伴うコストと規制リスクを見直している可能性がある。許認可の厳格化やデータセンター建設への制限は、今後の投資計画を難しくする恐れがある。
一方、ハイパースケーラーと呼ばれる大規模クラウド事業者の株価は逆方向に動いた。アマゾンは11月4日に6.1%上昇し、266.03ドル(約4万2033円)で取引を終えた。
同じ11月4日、マイクロソフトは6.7%高の555.80ドル(約8万7816円)、アルファベットのクラスA株は3.2%高の288.93ドル(約4万5651円)で取引を終えた。翌5日はアマゾンを含む3銘柄とも下落した。
こうした値動きの違いは、投資家がインフラ供給企業と、より幅広いテクノロジー事業を展開する企業を区別していることを示唆する。一部の投資家は、規制当局の監視が強まれば設備投資の拡大ペースが抑えられ、大手クラウド事業者の最近の四半期決算で問題視されてきたキャッシュフローへの懸念が和らぐと期待している。
トランプ大統領が拒否権行使を示唆、AI政策の先行きは不透明
ドナルド・トランプ大統領は、AI・テクノロジー業界を強く支持する姿勢を崩していない。トランプ政権は、過度な制限は中国に対する米国の競争力を損なう恐れがあるとして、複数のAI規制案に反対してきた。
2026年11月の中間選挙では、民主党が上下両院の多数派を奪還した。一方、トランプ大統領は、大統領権限を使って民主党の立法目標の実現を阻む用意があると警告している。
The Hill(ザ・ヒル)によると、トランプ大統領は中間選挙前、New York Post(ニューヨーク・ポスト)に対し、「われわれは大きな成果を上げると思う。だが、もし勝てなければ、あらゆる法案に拒否権を行使する。拒否権を行使して、行使し続ける……」と語ったとされる。
投資家は今、AIの成長見通しと、規制対応やインフラ整備に伴うコストの増加を比較検討する必要に迫られている。
3.暗号資産の清算額が10億ドル(約1580億円)を突破、ETFからの資金流出が再び売り圧力に
ハイテク株の売りと同時に、暗号資産市場ではレバレッジをかけたポジションの解消が急速に進んだ。清算データによると、24時間で11億4000万ドル(約1801億2000万円)を超えるポジションが強制決済された。
BTCの清算額は約2億8576万ドル(約451億5008万円)で、その89.2%をロング(買い)ポジションが占めた。ETHでも1億8996万ドル(約300億1368万円)の清算が発生し、買いポジションが82.7%を占めた。

コイングラスのデータによると、この期間に21万8743人のトレーダーが保有ポジションの強制清算を受けた。市場全体では、清算総額の88.2%を買いポジションが占めた。
ETFからの資金流出も、BTCの下落を増幅させた。米国のビットコイン現物ETFは、11月4日に7460万ドル(約117億8680万円)の純流入を記録したものの、翌5日には再び純流出に転じた。4日の純流入は、その前の3取引日で計11億5740万ドル(約1828億6920万円)に上った純流出の流れに、いったん歯止めをかけるものだった。

しかし、この回復は長続きしなかった。11月5日には、ETF全体で4億3020万ドル(約679億7160万円)の純流出となった。うちフィデリティのFBTCからは1億9990万ドル(約315億8420万円)、ブラックロックのIBITからは1億500万ドル(約165億9000万円)がそれぞれ純流出した。
ETFの資金流出入は、米国の規制下にある商品を通じてビットコインに投資しようとする投資家の意欲を測る、重要な指標である。再び資金が流出したことは、市場全体の下落に伴って機関投資家の需要も弱まった可能性を示している。
BTCは足元で、選挙後の上げ幅を失った。トレーダーの関心は今、7万5000ドル(約1185万円)が有力な下値支持線として機能するかどうかに移っている。同時に、心理的な節目である8万ドル(約1264万円)を上値抵抗線として意識し、市場心理の転換を示す兆候を見極めようとしている。
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