●CryptoQuantのKi Young Ju CEOは、今回のビットコインサイクルについて、古参投資家(OGトレーダー)が過去最大級の利益を得たサイクルだったとの見方を示している。
●過去のサイクルとの大きな違いは、古参保有者の利益確定を暗号資産取引所のトレーダーだけではなく、現物ETFやDAT(Digital Asset Treasury)企業という新しい買い手が吸収した点にある。
●その一方で、サイクル中に生まれた大きな含み益が先物市場のレバレッジ拡大につながり、現在はそのポジションを整理する「デレバレッジ局面」にあるとKi氏は分析している。
●Binanceユーザーの実現価格は足元のBTC価格に接近しており、市場参加者の平均取得価格付近まで価格調整が進んでいることが確認できる。
●OKXでは成行買いの強さを示すテイカー売買比率が約1.7まで上昇する場面が確認されている。Ki氏は、一部の古参トレーダーが再び強気方向へ動き始めている可能性を指摘する一方、底打ちを確定するシグナルではないとしている。
今回のサイクルで「売却の受け皿」が変わった
ビットコイン市場では、長期保有者や古参クジラが大きな含み益を抱えた後、利益確定を進めることがサイクル後半の重要な売り圧力となる。CryptoQuantのKi Young Ju CEOは8月13日、今回のサイクルについて、ビットコインの古参トレーダーが過去最大級の利益を得たとの見方を示した。
ただし、今回重要なのは「どれだけ利益を得たか」だけではない。「誰がその売りを買ったのか」である。過去のサイクルでは、古参保有者が利益確定すると、そのBTCを取引所に参加する新しい投資家が買う構造が中心だった。
しかし今回、新たな買い手として大きな役割を果たしたのが現物ETFやDAT企業だ。つまり、古参保有者から市場へ放出されたBTCを、従来の暗号資産市場参加者だけではなく、ETFを通じた機関資金や企業のバランスシートが吸収した。
これは、現物ETF誕生後のビットコイン市場を考えるうえで非常に重要な構造変化といえる。
Binanceユーザーは過去最大級の含み益を抱えた
【チャート① Binanceユーザー入金アドレスのBTC未実現利益比率】

1枚目のチャートは、Binanceユーザーの入金アドレスを対象とした「BTC未実現利益比率」とビットコイン価格の推移を示している。
2021年の強気相場では、未実現利益比率はピーク時におおむね0.5〜0.6程度まで上昇した。ところが今回のサイクルでは、2025年に一時1.5近辺まで上昇している。単純比較すれば、2021年のピーク時を大幅に上回る水準だ。
ETFやDATによる新たな需要が古参投資家の売却を吸収しながら価格上昇が続いたことで、取引所参加者も大きな含み益を抱える環境が形成された可能性がある。
しかし、この巨大な含み益は別の市場を膨らませることになる。
先物市場だ。価格上昇によって増えた利益を担保として利用し、さらにレバレッジポジションを取ることが可能になるためだ。
BTC価格はBinanceユーザーの平均取得価格へ接近
【チャート② Binanceユーザー入金アドレスのBTC実現価格】

2枚目のチャートは、ビットコイン価格とBinanceユーザー入金アドレスの「実現価格」を示している。実現価格は、そのグループが保有するBTCの平均的な取得コストを見るための一つの指標である。
2024年から2025年にかけてBTC価格が大幅に上昇するなか、Binanceユーザーの実現価格も継続的に上昇した。
そして2026年に入ると状況が変わる。BTC価格が高値から調整する一方で、Binanceユーザーの実現価格は6万ドル前後まで上昇し、両者の差が急速に縮小している。
足元では、BTC価格がBinanceユーザーの平均取得価格にかなり近い水準まで戻っていることがチャートから確認できる。Ki氏は、ビットコインが約2年前と近い価格レンジにある背景について、現在が「デレバレッジ期間」であるためとの見方を示している。
サイクル中に積み上がった巨大な含み益が先物市場のレバレッジへ流れ、その後の利益確定によってポジションが解消されているという構図だ。
先物レバレッジはピークから大きく縮小
【チャート③ 全取引所BTC/USDT先物の推定レバレッジ比率】

3枚目は、全取引所におけるBTC/USDT先物のOpen InterestとUSDT準備金の比率を示したチャートだ。言い換えれば、市場に存在するUSDTの厚みに対して、どの程度のBTC先物ポジションが積み上がっているのかを見る指標になる。
2020年から2023年にかけて、この比率はおおむね0.1〜0.25程度で推移していた。ところが2024年後半から急速に上昇し、2025年には一時0.5を超える水準まで達した。
今回のサイクルで、先物市場のレバレッジが過去と比較して非常に大きくなったことが分かる。その後、レバレッジ比率は低下し、現在は約0.3前後まで縮小している。
つまり、デレバレッジはすでにかなり進んでいる。ただし重要なのは、0.3という現在の水準そのものが、現物ETF登場以前と比較すれば依然として高いことだ。Ki氏は、ETFへの資金流入が続くのであれば、こうした高いレバレッジ環境が再び形成される可能性があると指摘している。
これは今後のビットコイン市場を見るうえで重要なポイントになる。ETFによる現物市場への資金流入が強くなれば、その上に先物市場のレバレッジが積み上がる可能性があるからだ。
OKXで再び強い成行買い
【チャート④ OKXのビットコイン・テイカー売買比率】

4枚目は、OKXにおけるビットコインの「テイカー売買比率」を示している。テイカー売買比率は、成行買いと成行売りのどちらが優勢なのかを見る指標だ。
1を上回れば成行買いが優勢、1を下回れば成行売りが優勢となる。このチャートで非常に目立つのが、2023年初頭の大きな上昇だ。ビットコインが1万6,000ドル前後だったサイクル底値圏で、テイカー売買比率が一時6近くまで急上昇している。
Ki氏は当時、古参クジラがこの価格帯で非常に大きなロングポジションを構築していた可能性を指摘していた。つまり、価格が市場全体から悲観されている局面で、一部の経験豊富な大口トレーダーが積極的に市場価格で買っていたことになる。
そして現在、同じ指標に再び変化が表れている。足元ではOKXのテイカー売買比率が約1.7まで上昇する場面が確認された。2023年の極端な水準とは比較できないものの、通常の1前後から明確に上方へ乖離している。
Ki氏は、OKXだけではなく他の取引所でも似た市場買い比率の上昇が確認されているとし、一部の古参トレーダーが再び強気方向へポジションを取り始めている可能性を指摘している。
ただし、Ki氏自身も強調しているように、この指標だけをもって「底打ち」と判断することはできない。あくまで、経験の長い市場参加者が現在の価格帯をどう見ているのかを測るセンチメント指標の一つとして考える必要がある。
エックスウィンの視点──次に見るべきは「現物需要×レバレッジ」
今回の4つのチャートを並べると、現在のビットコイン市場の構造がかなり明確になる。
第一に、今回のサイクルではETFやDATという新しい買い手が登場した。それによって、古参保有者による大規模な利益確定を従来とは異なる資本が吸収した。
第二に、その構造的な買い需要を背景にBinanceなどの取引所参加者が非常に大きな含み益を抱えた。
第三に、その利益の一部が先物市場へ流れ、市場全体のレバレッジが過去と比較して大幅に上昇した。
そして現在、そのレバレッジが整理されている。だからこそ、価格が上昇しないことを単純に「需要がなくなった」と考えるのは早い。現在は、過去に積み上がったポジションを市場が消化している局面と考えることもできる。
一方、その裏側でOKXなどでは古参トレーダーによるものと考えられる積極的な成行買いも観測され始めている。
ここから次の上昇トレンドへ移行するために重要なのは、先物市場だけが再び膨らむことではない。ETFやDATなどの現物需要が強まりながら、レバレッジが再び健全な形で拡大することだ。
現物需要を伴わず先物だけが膨張すれば、価格上昇は不安定になりやすい。
逆に、現物需要の回復、デレバレッジの一巡、そして古参トレーダーの積極的な買いが同時に確認されれば、市場構造は再び上方向へ変化する可能性がある。
今回のデータが示しているのは「底打ち」そのものではない。
古参保有者からETF・DATへとBTCの保有主体が移る一方で、サイクル中に積み上がったレバレッジの整理が進み、その裏側で一部の古参トレーダーが再び動き始めている可能性があるということだ。
今後のビットコイン市場を考えるうえでは、「現物需要」「先物レバレッジ」「古参トレーダーのポジショニング」の3つが同じ方向を向くかどうかが、次の大きなトレンドを判断する重要なポイントになりそうだ。
ショート動画
ビットコイン古参勢が再び動き始めた?──ETF後の市場構造に変化
https://youtube.com/shorts/Q7ttKrZ8zRo?feature=share


