●CryptoQuant最新レポートでは、ビットコインとイーサリアムの両市場で、大口投資家(Smart Money)が価格下落局面でも保有量を増やしていることが確認された。
●ビットコインでは、取引所やマイニングプールを除くクジラの保有残高が増加し、市場で流通する供給量が徐々に減少している。
●イーサリアムでは、1万ETH以上を保有する超大口アドレスが過去最高水準まで買い増す一方、中規模投資家は売却を続けており、「弱い手から強い手への資産移転」が進んでいる。
●BTC・ETHともに実現価格(Realized Price)に近づき、過去の弱気相場終盤で見られたバリュエーション水準へ接近している。ただし、CryptoQuantは「リスク・リワードは改善したものの、底打ちを断定できる段階ではない」と慎重な見方も示している。
暗号資産市場では、価格の下落が続くと悲観論が一気に広がります。ニュースでは「弱気相場」「売り圧力」「市場低迷」といった言葉が並び、多くの投資家は価格チャートだけを見て相場を判断しがちです。
しかし、オンチェーンデータは価格とは異なるメッセージを発しています。CryptoQuantが公表した最新レポートでは、ビットコインとイーサリアムの両市場において、大口投資家が弱気相場でも着実に保有量を積み増している様子が確認されました。
もちろん、「クジラが買っているから必ず相場が反転する」という単純な話ではありません。重要なのは、価格ではなく「誰が買っているのか」「誰が売っているのか」、そして市場全体の供給構造がどのように変化しているのかです。オンチェーン分析は、その資金の流れを可視化できる点に大きな価値があります。
クジラは価格ではなく「市場構造」を見ている
弱気相場では、多くの個人投資家が価格の下落を見て売却します。一方、大口投資家は逆の行動を取ることが少なくありません。
彼らが見ているのは現在の価格ではなく、
・市場全体の供給量
・保有者の平均取得価格
・市場参加者の心理
・流動性の変化
・オンチェーン上の資産移動
といった、市場構造そのものです。価格が急落する局面では、短期投資家の売りが集中します。その売りを長期投資家や機関投資家が吸収する構図は、これまでのサイクルでも何度も確認されてきました。
ビットコイン──クジラが供給を吸収し始めている
レポートによると、取引所やマイニングプールを除くビットコインクジラの保有量は、2025年末のおよそ287万BTCから約306万BTCまで増加しています。
特に注目すべきなのは、2026年6月に価格が6万ドルを下回った局面で保有量が急増している点です。これは市場参加者が恐怖から売却しているタイミングで、大口投資家がその売りを吸収していたことを意味します。
一般的には「価格が下がったから売る」という行動になりがちですが、クジラはその逆で、「市場が売っているから買う」という行動を取っています。
約20万BTCが強い手へ移動したことは、市場に流通する供給量が徐々に減少していることを意味します。もちろん、2025年のピーク保有量にはまだ届いていません。
しかし、供給が短期投資家から長期保有者へ移っているという事実は、市場構造の改善として注目すべきポイントでしょう。価格は短期的に上下しますが、供給構造の変化は長期的な価格形成に大きな影響を与えます。
【図1 ビットコイン:クジラ保有残高と前月比増減率】をみると、価格が調整局面にあったにもかかわらず、クジラの保有残高は2026年に入って再び増加へ転じています。さらに30日間の保有量増減率もプラス圏を維持しており、大口投資家が継続的にビットコインを吸収している様子が確認できます。価格だけを見ていては分からない「供給構造の変化」が、オンチェーンデータには表れています。

価格は短期的に上下しますが、供給構造の変化は長期的な価格形成に大きな影響を与えます。
イーサリアムでは「誰が買っているか」が重要
今回のレポートで、私が最も興味深いと感じたのはイーサリアムです。ビットコイン以上に、大口投資家と中規模投資家の行動がはっきり分かれています。1,000〜1万ETHを保有する中規模投資家は、2026年初めから保有量を減らし続けています。
一方で、
・1万〜10万ETH保有者
・10万ETH以上を保有するメガクジラ
は保有量を過去最高水準まで増加させています。特に10万ETH以上を保有する超大口アドレスは、2025年半ば以降だけでも約180万ETHを追加取得し、保有量は約460万ETHまで増えています。
つまり、中規模投資家が売却し、そのETHを超大口投資家が買っているという構図です。
【図2 イーサリアム:保有規模別アドレス残高の推移】を見ると、この動きはさらに明確です。10万ETH以上を保有する超大口アドレスの残高は2026年を通じて右肩上がりに増加している一方、価格は依然として低迷しています。価格が弱い局面でも大口投資家は着実に保有を積み増しており、短期的な値動きではなく、中長期の価値を見据えてポジションを構築している可能性が示唆されます。

弱気相場では、このような「弱い手から強い手への資産移転」がよく見られます。価格だけでは見えませんが、オンチェーンデータを見ると、市場の所有者が徐々に入れ替わっていることが分かります。
実現価格が示す現在地
今回のレポートでは、実現価格(Realized Price)にも注目しています。実現価格とは、市場参加者全体の平均取得価格を示すオンチェーン指標です。
現在、ビットコインは平均取得価格の少し上、イーサリアムは平均取得価格を下回る水準で推移しています。
過去の相場を見ると、実現価格付近は、長期投資家が徐々に買い始める価格帯となるケースが多くありました。
特にETHはレポートでも「Undervalued(割安圏)」との評価が示されています。もちろん、割安=すぐ反発ではありません。市場は想定以上に悲観へ傾くこともあります。しかし、長期投資家が市場へ戻り始める水準としては十分に意識される価格帯と言えるでしょう。
価格だけでは見えない市場の変化
多くの投資家は価格チャートだけを見ています。しかしオンチェーン分析では、価格は「結果」であり、重要なのは資金の流れです。
誰が売り、誰が買い、供給がどこへ移動しているのか。今回のレポートでは、価格は弱いままですが、その裏側では大口投資家が着実に買い増しています。このギャップこそが、オンチェーン分析の最大の価値です。
ニュースだけでは悲観的に見える市場でも、ブロックチェーン上では次のサイクルへ向けた準備が始まっている可能性があります。
エックスウィンの見解
私は今回のレポートを読んで、「底打ちした」と結論付けるつもりはありません。CryptoQuant自身も、リスク・リワードは改善している一方で、市場が完全に底を打ったとはまだ判断できないとしています。しかし、弱気相場の終盤で繰り返し見られてきた特徴が少しずつ現れ始めていることも事実です。
・クジラによる継続的な買い増し
・市場供給の減少
・ETHメガクジラの過去最高保有
・実現価格への接近
・リスク・リワードの改善
これらは、過去のサイクルでも市場の転換点に近づくにつれて観測されてきた重要なシグナルです。短期的な値動きは今後も不安定な展開が続く可能性があります。
それでも、オンチェーンデータを見る限り、市場の表面で広がる悲観論とは対照的に、「スマートマネー」は次のサイクルを見据え、静かにポジションを積み上げ始めています。相場の転換点は、価格チャートよりも先にオンチェーンデータへ現れることがあります。
だからこそ今は、価格だけを見るのではなく、「誰が保有し、誰が売り、誰が買っているのか」という資金の流れに注目することが、次の大きな相場を見極めるための重要な視点になるのではないでしょうか。
ショート動画
クジラは弱気相場で何を見ているのか? BTC・ETHオンチェーン分析で見えた「次のサイクル」の兆候
https://youtube.com/shorts/pNTrCcIlTY8


