
金融商品取引法(金商法)の改正法案が成立し、いよいよ本格的なカウントダウンが始まった暗号資産の「分離課税」。
税率一律20%への移行に期待が高まる一方で、国会で法案が可決された際に付された「附帯決議」には、見逃せない一文が刻まれている。
それは、「申告分離課税の対象は、暗号資産取引の一部にとどまる」という法案を可決した衆参両院の委員会からの明確なメッセージだ。
連載「泉税理士が読み解く!暗号資産『分離課税』のリアル」の第4回では、租税法に詳しい泉絢也税理士の解説をもとに、附帯決議が明かした分離課税の対象範囲と、NISA適用の見通し、そして超高所得者が注意すべき「ミニマムタックス」との関係について解説する。
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本記事は、泉税理士のブログ記事「暗号資産の分離課税は『一部にとどまる』―金商法改正に付された衆議院の附帯決議」を元に、編集部で要約・再構成したものです。
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国会も確認した「分離課税は一部だけ」
金商法改正法案の可決に際し、衆議院の財務金融委員会および参議院の財政金融委員会で採択された附帯決議。その第一項では、投資者保護の強化とともに、新税制の対象範囲について次のように述べられている。
【泉税理士の解説:第一項が注目される理由】
「第一項が、今回の申告分離課税が暗号資産取引の『一部』にしか及ばないことを、法案を可決した委員会自身が明示的に確認したものだからです。 令和8年度税制改正で導入予定の申告分離課税は、すべての暗号資産取引に適用されるわけではありません。対象は、暗号資産取引業を行う金融商品取引業者を通じた『特定暗号資産』の取引など、一定の範囲に限られます。そこから外れる取引——たとえば海外取引所やDEX(分散型取引所)、当事者間(P2P)での取引などは、引き続き総合課税(原則として雑所得)の対象となる可能性があります。」
つまり、「暗号資産の利益はすべて一律20%になる」わけではなく、国内の登録業者を通じた特定の取引のみが分離課税となり、それ以外の取引は総合課税として残る(分離課税と総合課税の併存)。この仕組みが、国会の公式な決議としても改めて確認された形だ。
NISA適用や制度見直しのゆくえ
附帯決議では、今回の法改正や分離課税化が「国として暗号資産投資にお墨付きを与える意図ではない」という点も強調されている。
この姿勢は、将来的な「NISA(少額投資非課税制度)への組み込み」などの議論にも影響を与えると泉税理士は指摘する。
【泉税理士の解説:NISA適用の見通し】
「第一項は、申告分離課税の対象化が『国として暗号資産投資にお墨付きを与える意図ではない』と明言し、第二項も、暗号資産の大部分には裏付け資産がないという商品特性や適合性原則に言及しています。国が暗号資産を『資産形成向けの商品』として後押しする姿勢ではないことがうかがえ、仮にETF等が認められても、それが当然にNISA等の優遇制度へ組み込まれるとは限らない―というのが、附帯決議から読み取れる筆者の見立てです。」
さらに、附帯決議の第十二項(参議院版では第十四項)では、技術革新や国際的な制度のスピード感を踏まえ、「施行後5年を待たずに必要に応じて制度の見直しを検討すること」が求められている。
新税制が始まってからも、ルールが機動的に変更される可能性を念頭に置いておく必要がある。
「ミニマムタックス」の対象にも
今回の金商法改正に対する附帯決議とは別に、申告分離課税そのものを創設した「所得税法等改正法」の参議院附帯決議(第四項)にも重要な記述がある。
「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置については、暗号資産の分離課税化等の影響も含め、施行後における所得税負担率の動向等を確実に把握し、税負担の公平性の観点からその効果を見極め、必要に応じて適切な見直しを行うこと。」
超高所得者に対して課される「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置(通称:ミニマムタックス)」については、暗号資産の分離課税化等の影響も含めて、今後も適切な見直しを行うことを要請しているのだ。
暗号資産が分離課税になっても、同措置の対象から外れるわけではないことに注意が必要であると、泉税理士は指摘する。
【泉税理士の解説:ミニマムタックスとの関係】
「暗号資産の利益は、雑所得として総合課税されていた間も、総所得金額の一部として基準所得金額に含まれていました。分離課税に移れば総所得金額からは外れますが、基準所得金額を構成する金額を列挙した規定に、『特定暗号資産に係る譲渡所得等の金額』が独立の項目として掲げられています(措置法41条の19第2項第9号)。つまり、暗号資産の譲渡益に申告分離課税が適用されるようになっても、その所得がミニマムタックスの計算の外に出るわけではありません。多額の利益が生じた年について、分離課税だから一律で終わり、とは限らないということです。」
大きな利益を上げた投資家の場合、分離課税(20%)が適用されたとしても、この適正化措置によって追加の税負担が生じる可能性がある点には留意したい。
まとめ:取引がどこに分類されるか確認を
国会の附帯決議によって、新税制の全体像と政府のスタンスがより鮮明になった。
- 分離課税の対象は「国内の登録業者を通じた取引など一部」に限られる
- 「お墨付き」ではなく、NISA等への組み込みが当然に保証されるわけではない
- 大規模な利益が出た場合、ミニマムタックス等の影響を受ける可能性がある
分離課税の開始に向けて、投資家は「自分の取引のどれが分離課税になり、どれが総合課税として残るのか」を正しく把握し、準備を進めることが大切だ。
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さらに詳しい「衆議院・参議院の附帯決議全文」や「金融商品取引法改正の具体的な審議経過」などについては、泉先生のブログ記事本編にて詳細に解説されています。ぜひ併せてご覧ください。
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「暗号資産の分離課税は『一部にとどまる』―金商法改正に付された衆議院の附帯決議(泉絢也税理士事務所)」
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▼監修者プロフィール
泉 絢也(いずみ じゅんや)

税理士・東洋大学法学部教授、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)税制部会顧問。元国税職員(国税調査官)。博士(会計学・中央大学)。専門は租税法。暗号資産・NFTの税務、AIと税務、税務調査を主な研究テーマとする。著書に『事例でわかる!NFT・暗号資産の税務〔第2版〕』(中央経済社・共著)、『パブリックコメントと租税法』(日本評論社・単著)など。
|編集:栃山直樹
|画像:NADA NEWS制作


