Robinhood、予測市場による収益が暗号資産と株式を上回る──取引所の取得と、連邦・州で割れる規制【MCB FinTechカタログ通信】

2026年7月29日、米国のネット証券Robinhood Marketsが2026年第2四半期の決算を発表しました。取引で得た収益のうち、イベント契約(event contract:予測市場で売買される、将来の出来事の結果に連動するデリバティブ)によるものが1億5,600万ドルに達しました。オプションによる収益である3億4,200万ドルに次ぐ規模で、暗号資産による収益である1億ドル、株式による収益である1億2,900万ドルをいずれも上回っています。

今回は、予測市場による収益が牽引したRobinhoodの決算の詳細と、同社が規制のもとでどのように予測市場サービスを提供しているのか、そして米国の規制を巡る現状と直近の動きについて解説します。

※本記事の内容は、マネックスクリプトバンクが週次で配信している、FinTech・Web3の注目トピックスを解説するニュースレター「MCB FinTechカタログ通信」の抜粋です。マネックスクリプトバンクが運営する資料請求サイト「MCB FinTechカタログ」にて、過去の注目ニュース解説記事を公開していますので、ぜひご覧ください。

Robinhoodの予測市場サービスと、デリバティブとしての提供の仕組み

予測市場とは、選挙や経済指標、スポーツの勝敗といった将来の出来事の結果を「Yes/No」の形で売買し、参加者同士の需給によって価格(確率)が変動する市場です。米国ではこの売買の対象がイベント契約というデリバティブとして扱われ、商品先物取引委員会(CFTC)に登録された取引所(指定契約市場)で取引されています。法的にはギャンブルではなく、金融商品として位置づけられています。

Robinhoodは2025年3月、アプリ内に予測市場ハブを開設しました。ユーザーは金利の見通しやスポーツの勝敗などを対象とする契約を売買でき、1契約は0.01ドル刻みで最大1ドルの値がつき、結果が当たれば1ドルで決済されます。取引の場自体はKalshiなどCFTC登録の取引所が担い、Robinhoodのアプリはその窓口という構図で始まっています。

この市場は成長を続けています。CFTCが2026年6月に公表した資料によれば、2025年の登録予測市場全体の取引高は250億ドルを超え、上場される契約の数も対象となる出来事の幅も近年広がっているとしています。米リサーチ会社Bernsteinからは、予測市場全体の取引高が2026年通年で2,400億ドルに達するとの予測も示されています。

その成長は、Robinhoodのようなネット証券の収益構成を動かすまでになっています。何がどれだけ伸びたのかを、決算の数字で見ていきます。

決算の内訳と、合弁会社Rotheraによる取引所の取得

決算発表によれば、Robinhoodの第2四半期の純収益は前年同期比32%増の13億1,000万ドルでした。このうち取引で得た収益は44%増の7億7,600万ドルです。主な内訳はオプションが29%増の3億4,200万ドル、イベント契約が10倍超の1億5,600万ドル、株式が95%増の1億2,900万ドル、暗号資産が38%減の1億ドルでした。

同じ発表によれば、イベント契約の取引数も10倍超に増えて136億枚となりました。収益を取引数で割ると、1契約あたりおよそ1セントという計算になります。相場の環境に左右されにくい、取引回数に比例した収益源が加わったことになります。

RobinhoodがNFL対象の契約を加え、Coinbaseが参入を発表した2025年12月の時点でも、同社は前述の通り、Kalshiなど他社の取引所に接続する窓口の立場でした。この立場を変えたのが、取引所そのものの買収です。

Robinhoodは2025年11月、米国の大手トレーディング会社Susquehanna International Groupとの合弁会社Rotheraへ出資しています。このRotheraが2026年1月20日、CFTC登録の取引所MIAXdxの株式90%を約7,900万ドルで取得しました。

この買収は、事業そのものよりも取引所としての登録の取得を目的として行われたものと考えられます。四半期報告書によれば、買収額の内訳では無形資産のライセンスに4,700万ドルが割り当てられ、その評価額は、同じ登録を一から取得し直す場合の費用をもとに算定したと説明しています。買収額7,900万ドルの6割近くが、登録の価値だったことになります。

買収後、この取引所はRothera Exchange and Clearing LLCへ改称され、2026年6月に運用が始まりました。決算発表では、それ以来の取引数は累計35億枚を超えたとしています。他社から契約を仕入れる立場から、合弁で取引所を運営する立場に転じた形です。

もっとも、第2四半期には6月に開幕したFIFAワールドカップが含まれます。この水準で定着するのか、大会に伴う一時的な押し上げが大きかったのかは、次の四半期を待つ必要があります。そしてこの需要をどの枠組みで受けるのかは、同じ時期に規制の場で問われていました。

CFTCの規則案と44州の反発、割れる司法判断

米国では、予測市場をデリバティブとして連邦(CFTC)が規制するのか、それとも賭博として州が規制するのかを巡り、対立が続いてきました。2025年12月にはコネチカット州がKalshiやRobinhoodに業務停止命令を出し、Coinbaseが3州を提訴しています。そして2026年6月から7月にかけて、この対立の行方を左右する動きが、規制と司法の両面で相次ぎました。

まずCFTCが2026年6月10日、イベント契約の審査手続を定める規則案を公表しました。取引所が上場した契約の中に、賭博などにあたり公益に反するものが混ざっていないかをCFTCが事後に審査する枠組みで、最大の論点はスポーツ関連の契約の扱いです。業界調査では取引の約9割をスポーツ関連が占めるとされる中で、どこまでを金融商品として認めるかの線引きにあたります。

規則案は、スポーツ契約を一律には扱いませんでした。試合の勝敗や最終スコアのように集計された結果の契約は、認める方向としています。一方で、選手の負傷や審判の判定、特定の1プレーの契約は、選手に危害を加える金銭的な動機を生むことや操作への弱さを理由に、公益に反する類型として挙げました。審判の判定を巡っては、NBAの審判が内部情報を賭博に使って有罪となった過去の事件も根拠にしています。

規則案の枠組みそのものには、事業者側もおおむね賛成しています。意見公募には7月末時点で1,385件の意見が寄せられました。Kalshiは採択を求める意見書を提出し、Polymarketの米国法人であるPolymarket USやRobinhoodのデリバティブ子会社も枠組みを支持しています。

ただし各社は、審査の対象となる「賭博」の範囲をカジノ型の賭けに限るなど狭く定めるよう求めており、スポーツ契約を巡る線をどこに引くかでは、規則案と隔たりもあります。

規則案に強く反発したのが州の側です。オハイオ州司法長官のAndy Wilson氏が主導し、44州の司法長官が連名の意見書を提出しました。スポーツの賭けはデリバティブではなく、州が長く規制してきた賭博であり、CFTCに規制する権限はない、という主張です。規則をやり直し、スポーツの賭けは州法の管轄だと明確にするよう求めています。

司法の場でも判断が出始めています。意見公募が締め切られた7月27日、ミネソタ州の連邦地方裁判所が、予測市場の運営を違法とする、8月1日に施行される予定だった州法の執行を差し止める仮処分を出しました。CFTCとKalshi、Polymarket USの訴えを認め、CFTC登録の取引所に対しては連邦法が州法に優先する可能性が高いと判断しました。

ただし判事は、すべての契約が連邦の管轄に入るとは見ていません。命令は、ワールドカップの優勝国のように経済的な帰結と結びつく出来事の契約はデリバティブに当たるとする一方、恋愛リアリティ番組の優勝カップルを対象とする契約などは当たらない可能性が高いとしています。連邦裁判所の判断は州によって割れており、アリゾナやテネシーでは事業者側、オハイオでは州側に立つ結論が出ています。

考察

Robinhoodの決算で確認されたのは、予測市場への需要が、主要なネット証券の収益構成を組み替えるほどの規模になったという事実です。大会要因を差し引いても、取引所の登録に4,700万ドルの値をつける判断はワールドカップの前になされており、需要が続くという読みがなければ成り立ちにくい取引だと考えられます。

一方で、その需要をどの枠組みで受けるのかは未決着です。ただ、CFTCの規則案もミネソタ州の仮処分命令も、判断の軸は共通しているように見えます。その契約が経済的に意味のある情報や帰結を持つのか、それとも娯楽への賭けにすぎないのかという点です。審判の判定の契約が公益に反する類型として挙げられ、ワールドカップ優勝国の契約はデリバティブに当たるとされたのは、いずれもこの軸に沿った判断でした。

日本では、2026年4月の参議院財政金融委員会で、金融庁が、賭けの対象になるような予測市場については賭博と同じではないかという指摘を踏まえ、極めて慎重に対応する必要があると答えています。同時に、実際の取引に社会的・経済的な有用性が認められるかを論点に挙げており、これは米国で問われている問いと重なります。

Polymarketが2030年までの日本での認可取得を目標に掲げているほか、日本ではスポーツベッティングに関する法整備も議論されています。今後は日本でも、予測市場や周辺領域についての議論が活発になるものと見られます。

認可の可否は、予測市場というプラットフォーム自体が賭博なのか金融商品なのかという単純な二択では決まらないと考えられます。個々のイベント契約の性質に応じて線を引く、現在米国で議論されているような基準に沿った判断になるのかもしれません。

|画像:Adobe Stock

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