・ビットコイン(BTC)は、マイクロンの決算をきっかけにAI投資需要が再燃したことを受け、一時6万ドルを下回った。これと重なる形で、ビットコインETF(上場投資信託)から4億6900万ドルの資金が流出し、暗号資産市場では10億ドル超の清算が発生した。
・Acheron Tradingは、資金がAI、トークン化資産、予測市場へと移りつつあり、主要暗号資産への資金流入が減少していると指摘している。
・米ドル高と、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ観測の高まりが、重要なインフレ指標の発表を前に、BTCへの下落圧力を強めている。
AIがBTCからの資金移動を加速、Acheron Tradingのジョナサン・ヤーク氏が指摘
BTCは6月24日水曜日、心理的節目である6万ドルを一時割り込んだ。マイクロン・テクノロジーの好決算を受け、投資家が人工知能(AI)関連株への資金シフトを加速させたためだ。今回の売りは、6月上旬以来最大となるビットコインETFからの単日資金流出と重なり、デリバティブ市場ではレバレッジをかけた暗号資産ポジションが10億ドル近く清算された。
米国の現物ビットコインETFは水曜日、4億6900万ドルの純流出を記録した。内訳では、ブラックロックのIBITが2億3930万ドル、フィデリティのFBTCが1億2080万ドルの流出となり、足元の機関投資家による売り基調が続いた。資金流出と同じタイミングで、BTCは一時6万ドルを下回り、2024年以降で最も低い水準をつけた。その後は買い手が入り、木曜日の欧州取引時間には6万1500ドル超まで値を戻した。

ETFの売りはデリバティブ市場にも波及した。CoinGlassによると、過去24時間で暗号資産ポジションの清算額は10億ドルを超え、このうちBTCのロングポジションが約3億1900万ドルを占めた。

BTCが6万ドルの支持線を割り込んだことで、レバレッジをかけた強気のポジションは巻き戻しを迫られ、損失の大半はロング勢が被った。
今回の売りは、マイクロン・テクノロジーの四半期決算発表とも重なった。同社は、第3四半期の売上高、粗利益率、利益が過去最高を記録したと発表したほか、16件の長期戦略供給契約を公表した。これにより、AIインフラ投資が複数年にわたって拡大するとの見方がさらに強まった。

マイクロン株はプレマーケット取引で約17%上昇し、AI需要を背景とした年初来の上昇率は250%近くに達した。

Acheron Tradingのトレーディング責任者であるジョナサン・ヤーク氏は、足元の暗号資産市場の弱さについて、投資家の需要が構造的に崩れたというより、資金配分の見直しを反映したものだとみている。
Acheron Tradingは、プリンストン大学出身者によって2018年に設立された企業で、95以上のグローバル取引所で400超の資産発行体に対し、アルゴリズムによる流動性供給、リスク管理、取引所向けアドバイザリーサービスを提供している。
ヤーク氏は、非対称なリターンを追求する投資家にとって、暗号資産以外の選択肢が増えていると指摘した。
「かつて暗号資産に向かっていた資金がAIに流れている」─ヤーク氏
Acheron Tradingによると、AI関連の暗号資産企業は現在、暗号資産分野におけるベンチャーキャピタル調達の約40%を占めており、1年前の約18%から大きく上昇している。より広いテクノロジー領域では、ヤーク氏はベンチャーキャピタル資金の約80%がAIスタートアップに流れていると見積もっている。
ヤーク氏は「大きなリターンを求める投資意欲が消えたわけではない。ただ、向かう先が変わっただけだ。かつて暗号資産に入っていた資金がAIに向かっている」と述べた。
同氏はまた、暗号資産が投資家の関心をめぐって競合している相手は、もはや伝統的な株式だけではなく、トークン化証券や予測市場にも広がっていると指摘した。
ヤーク氏は「取引所は、上場やインセンティブを通じて、トークン化資産や株式関連商品を優先している。現在、Hyperliquidでは、BTCやETHと並んで、S&P500へのエクスポージャー、ナスダック100関連商品、エヌビディア、マイクロン、ブレント原油、WTIを取引できる。暗号資産ネイティブのインフラでさえ、機関投資家の資金を引きつけているAIや伝統資産のテーマへ関心を向けている」と述べた。
米PCEデータを前にドル指数が上昇、BTC予測市場は5万5000ドル割れを意識
BTCの弱含みは、6月15日に発表された米国とイランの停戦を受けた米ドルの急反発とも重なっている。
合意によって地政学リスクが低下した後、主要6通貨に対する米ドルの強さを示す米ドル指数(DXY)は、衝突前の99近辺から上昇し、水曜日には13カ月ぶりの高水準となる101.8をつけた。その後、木曜日のアジア時間にはやや軟化した。
ドル高は、複数の代替資産に同時に圧力をかけた。金は7カ月超ぶりに一時1オンス4000ドルを下回り、BTCも同時に6万ドルを割り込んだ。

歴史的に、BTCはドル高と逆相関の関係にある。ドル高は世界的な金融環境を引き締め、リスク資産への需要を低下させるためだ。現在の市場データでは、BTCとDXYの相関は約マイナス0.63となっており、ドルがさらに上昇すれば、BTC価格の重しになり続ける可能性がある。
先行きを見ると、米国とイランの衝突前にはFRBによる利下げを広く見込んでいたトレーダーが、現在では早ければ10月にも利上げが行われる可能性を織り込み始めている。

Polymarketでは、トレーダーが7月の利上げ確率を約23%、9月を42%、10月を54%と見込んでいる。
利上げ観測は、ドルへの資金回帰という見方をさらに強めている。これにより、ドル指数と逆相関の関係にあるBTCのような資産は、さらなる価格変動リスクにさらされている。

BTCは木曜日に6万1000ドル超まで回復したものの、Polymarketの2026年中の到達価格を対象とする契約では、BTCが5万5000ドルを下回る確率が現在76%と示唆されている。一方、7万5000ドルを回復する確率は55%、8万ドルに到達する確率は39%にとどまっている。
この分布は、市場参加者が6月26日金曜日に発表予定の重要なインフレ指標であるコア個人消費支出(PCE)価格指数を前に、下落リスクに備える姿勢を強めていることを示している。
大口投資家がBTCの短期的な弱さを押し目買いの機会として利用するかは、まだ見通せない。
「4週間にわたる10億ドル超の資金流出は、撤退ではなくポジショニングだ。われわれは基本的に、2月の清算後と同じ水準に戻っている」─ヤーク氏
今週、企業として最大のBTC保有者であるStrategy(旧MicroStrategy)は、積極的な買い増しを続けた。同社は6月15日から6月21日にかけて、1BTCあたり平均6万7068ドルで、約3490万ドル相当の520BTCを追加取得した。



